探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?

雪塚 ゆず

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番外編 ラティアンカとアルジェルドの日記

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XXX年 1日目

旦那様から日記帳をもらいました。
これから毎日つけようと思います。



XXX年 3日目

今日は庭の花が綺麗でした。
毎日手入れをしているので誇らしくなります。
ちなみに花は食べられるそうです。
お菓子か何かに入れて加工しましょうか。



XXX年 5日目

花を入れたパウンドケーキは非常に好評でした。
遊びに来ていたロールやエリクル様も、非常に嬉しそうでした。
私も美味しくできたと思います。
ちなみに旦那様。
また作るので、保存用とか言うのやめてください。



XXX年 10日目

今日は雨でした。
ひたすらに憂鬱な雨ですが、旦那様が「寒い」と言って、私に甘えてきてくれました。
雨もまあ悪くないですね。
旦那様は、「ラティアンカがいるから、雨も乗り越えられる」とか言って。
どうしたんですか、と笑っちゃいました。



XXX年 21日目

私の未来を見る力は、たびたび無意識的に発動します。
そのなんてことない些細な先は、なんてことないくせに私を苦しめてくるのです。
未来を見れば、酷い頭痛に襲われます。
きっと、人の身には過ぎた能力なのでしょう。
それに旦那様は、私が力を使ったと知るととても悲しみます。
だからこの力は、意識的には使いません。




XXX年 45日目

聖女様って、本当にいたんですね。
お伽話みたいなことが真実になって、今まで信じていたことがひっくり返されていく。
でも、怖くはないんです。
旦那様が近くにいてくれますから。
それだけで、幸せです。


XXX年 136日目

ちょっと伝えるのが怖いですね。
旦那様なら喜んでくれると思うんですけど。
こうして書いている内に、帰ってきたみたいです。
続きはまたーー

◆ ◆ ◆

XXX年 1日目

俺にも、とラティアンカが日記帳をくれた。
嬉しい。凄く嬉しい。
これから毎日書いていく。



XXX年 6日目

久しぶりにラティアンカの両親に会った。
といっても、義両親のほうだ。
2人は明るく、俺がラティアンカと結婚したいと言って受け入れてくれた人達だ。
一時期険悪になった……というか、すれ違いが起きたのだが、そのことについて、義両親は仕方ないな、とばかりに笑っていた。
なんだかくすぐったい。
ちなみに俺の父には本気で魔術の撃ち合いを仕掛けられた。
普通に怖かった。



XXX年 13日目

そういえば、もうそろそろ結界を張り替えなければならない時期が近づいてきた。
面倒くさいしやりたくないが、現状ナジクは俺に頼りっきりだ。
だからやらなきゃならない。
しかし駄々を捏ねていれば、ラティアンカは頬を膨らませて、「ダメですよ」と言ってきた。
可愛い。もうラティアンカだけ見ていたい。
金がいるから仕事はやるが。



XXX年 32日目

ラティアンカに、ちょうどのサイズの指輪を買いに行こうとけしかけた。
しかしラティアンカに拒否された。
「これがいいのだ」と言って笑ってくれた。
その顔は俺だけに見せてほしいな。
そう言えば、ラティアンカは「はい」と言って、俺に抱きついた。
幸せすぎて死なないだろうか。


XXX年 52日目

昔馴染みの人魚の商人と会った。
派手な赤の尾ひれを持つ、金髪の人魚。
彼女は海を渡ってこちらに来ていた。
どうやらここらで取れる海藻や、貝殻を取りに来たらしい。
たまたま海に来ていた俺を見つけると、人魚はこちらにやってきた。
随分と話がしやすくなった、と褒められた。
努力が身を結んでいるのかと思うと嬉しい。
だが、「ちょっと……いや、かなり重そうだから女性的にはムリ」とか言われた。
どういうことだ。解せない。
「捨てられないよう、せいぜい頑張ることね」とか吐き捨てやがった。



XXX年 105日目

嬉しい。嬉しすぎる。
夢じゃないだろうな。試しに頬をつねれば痛かった。
よかった、夢じゃない。
ラティアンカが、妊娠した。
俺達の子供だ。
空が飛べそうなくらい嬉しい。飛べるが。
何をしようか。
子供用のおもちゃとか、服とか、色々揃えて。
ああ、早く会いたいな。
元気に生まれてきてくれ、我が子よ。



XXX年 123日目

ラティアンカのつわりが酷い。
何度も食べてはもどしてしまっている。
どうすればいいんだろう。
慌てる俺は何もできない。
そして混乱のあまり、ジェシーに連絡を取った。
ジェシーは薬剤師でありながら、医者でもある。
きっと色々知っているだろう。
事情を話せば来てくれたが、「よくアンタフッた女を呼び出せるわね」と不機嫌そうに言われた。
空気が読めない男は嫌われるわよ、と釘を刺してきたが、ラティアンカのことを見てくれた。
これから定期的に来てくれるらしい。
安心した。



XXX年 204日目

ラティアンカのつわりが安定してきた。
苦しむ妻の姿を見ずに済むと思うとほっとした。
子供の性別もわかった。
男の子らしい。
名前は何にしようか、と話し合う。
色々考えたが、考え過ぎた故にこんがらがった。
ロールとエリクルに、「ネーミングセンスがゼロ」と貶された。
ひどくないか。

◆ ◆ ◆

「日記帳。書き終わりました?」
「ああ」

あれからしばらくして。
子供は無事に産まれた。
今、ラティアンカが子供を抱いている。
その子は、まあ……俺にそっくりだった。
男ということもあるだろうが、ここまで似るものだろうか。
しかし、ラティアンカの空色の瞳はそっくりそのままその子のものとなっていた。
ふくふくとした頬を指でつつけば、「んぅ」と窮屈そうに身を捩らせる。

「ティアルが嫌がってますよ」
「そんなこと……ないはず。それに最近ラティアンカはティアルに構ってばかりだし」
「嫌なパパですねー。ね? ティアル」
「うっ」
「ほら、あなたも」

促されるまま、ティアルを抱っこする。
俺達の息子はとても純粋な瞳をしていた。

「……真っ直ぐ育ってくれよ」
「私達みたいに拗れないでくださいね」
「おい」
「そうでしょう」
「まあ」

我が子は、腕の中でただ無邪気に笑っていた。





続きます!
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