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超大規模依頼編
第六話 気に入らないわ
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「私が出る」
一歩前に出たレンカが、女のことを鋭く見据えた。
「こいつ……なんか気に食わない」
「やだー! 一対一ってやつ? いいじゃーん!」
「おい、マル。計画はスピーディにやるべきだ。ここは不効率なことをせずに」
男が女に向かって声をかけるも、女はケラケラと笑って聞く耳を持たない。
「ミヤちゃんてばさぁ、見た目に反して細かいよね。そんなゴッツイのに」
「……」
「気にしてた? ごめん」
そんな軽快なやり取りを見せる二人に、レンカが思い切り舌打ちをした。
「ごちゃごちゃうるさいのよっ!」
途端、女の足元に巨大な氷の柱が出現し、女を襲う。
女は大剣を振ると氷を叩き切った。
「うんうん。いいよ。いい感じ」
「……あんた達、手を出すんじゃないわよ」
「レンカ! ここは協力して」
ヨークが口を挟もうとするが、レンカが「うるさい!」と叫ぶ。
埒があかないと悟ったのか、ラフテルは蹲ったままのハウンドの横に座る。
「俺は見学させてもらおう」
「僕も……戦いたくありませんし、レンカさんはお強いですから」
消極的な二人にヨークは頭を抱えた。
あまりに自由が過ぎる。
ヨークは大きくため息を吐くと、男のほうを睨む。
「……じゃあ、俺はこっちを相手する。もう知ったことか」
投げやりになってヨークは拳を構えた。
そもそもヨークは人を纏めることが嫌いだ。
立場上そうせざるを得なかっただけで、本来ならヨークは場を掻き乱す側の人間である。
つまり、ここまでのことでかなり鬱憤が溜まっているわけで。
「サンドバッグにでもなってくれや、兄ちゃん」
「ほう。お前とはいい勝負ができそうだ」
ヨークと男が互いに拳を構え合う。
すぐさま戦闘が開始した。
目の前で行われる乱闘にアレクがオロオロしていると、横にエルルが立った。
「アレク。怪我してない?」
「あ、うん。姉様こそ大丈夫?」
「私は大丈夫」
「手助けとかしなくていいのかな……」
「平気だ」
ここでガディもこちら側へとやってきた。
どこか呆れたような、それでも羨むような目線をガディは彼らに向ける。
「悔しいが、あいつらは俺らより強い。……というか、襲ってきた奴らは何者なんだ。明らかにおかしい強さだぞ」
「誰なんだろう……それに、僕の名前を知ってた」
疑問に思うアレクに、エルルが釘を刺す。
「アレク。カラーリングは絶対解けないようにしておきなさい」
「え?」
当たり前のことを言い出したエルルにポカンとしていると、エルルはアレクに振り返った。
「あいつらは、手を出すつもりはないと言っていた。なのに今、ああやって戦ってる。……あれはアレクにのみ限定された意味であって、あいつらはアレクが天族関係の者であることを知っている可能性が高い」
「!」
「確信を持たせるのも厄介よ」
エルルに忠告されたことで、アレクの中の警戒心が一気に跳ね上がる。
(そうだ、僕の力を狙う人なんていくらでもいるんだ。常に気をつけないと)
アレクが目を向ける先には、戦うレンカ達が映っている。
手を出すなと言われたが、何もしないのは歯痒い。
「でも、本当にいいのかな? 役立たずとか言われちゃうんじゃ」
「そんなことはない。そもそもあいつら共闘が嫌いだしな」
ガディはアレクの言うことを否定すると、力強く言う。
「アレク、よく見ておけ。あれが冒険者の戦い方だ。学園とかでやる、模擬戦とは違う」
レンカが再び氷で猛攻を浴びせると、女は大剣を振り翳してそれらを一掃する。
「こんなんじゃ届かないよっ!」
「……ハッ、油断しすぎなんじゃないの?」
女の高い声にレンカは頬を歪ませると、勢いよく地面を蹴って走り出した。
走りながら氷で武器を精製していき、次々と相手に投げる。
「ーーっ!」
女が少々焦った様子でそれを弾いた。
(こいつ……目を狙ってきてる!)
「アハっ」
確実に急所を潰しに行く動きに、女は愉快げに笑った。
そして女との距離がかなり縮まったことを確信すると、レンカが氷の刃を足に突き刺して固定すべく、四方八方から飛ばす。
女はそれらを軽々しく避けた。
「どこ狙ってるの、当たるわけないじゃん!」
女がレンカのほうへ目を向けた瞬間、唖然とした。
レンカの白い足が、高く太陽へと向けて振り上げられていた。
「はぁっーー!」
掛け声と共に、レンカの踵落としが見事に決まる。
女が地面に倒れ伏したところで、頭を思い切り踏みつけた。
「あんたの脳天、案外隙だらけね」
「っ、この!」
女はすぐさま暴れ出そうとしたが、氷の刃が体を貫きそれを防ぐ。
躊躇、無駄のない攻撃だ。
その分残虐性が高く荒々しい。
「凄い……」
アレクがポツリと呟くと、ガディは納得とばかりに頷く。
「あいつは強い。本当に」
「アレク、ほら」
「あ」
エルルが指差したほうを見れば、とっくに男とヨークの決着がついていた。
男が地面に倒れ伏しボロボロなのに対して、ヨークは平然としている。
「俺達に喧嘩売ろうなんざ、早かったんじゃねえの?」
ヨークはそう言って高らかに笑った。
一歩前に出たレンカが、女のことを鋭く見据えた。
「こいつ……なんか気に食わない」
「やだー! 一対一ってやつ? いいじゃーん!」
「おい、マル。計画はスピーディにやるべきだ。ここは不効率なことをせずに」
男が女に向かって声をかけるも、女はケラケラと笑って聞く耳を持たない。
「ミヤちゃんてばさぁ、見た目に反して細かいよね。そんなゴッツイのに」
「……」
「気にしてた? ごめん」
そんな軽快なやり取りを見せる二人に、レンカが思い切り舌打ちをした。
「ごちゃごちゃうるさいのよっ!」
途端、女の足元に巨大な氷の柱が出現し、女を襲う。
女は大剣を振ると氷を叩き切った。
「うんうん。いいよ。いい感じ」
「……あんた達、手を出すんじゃないわよ」
「レンカ! ここは協力して」
ヨークが口を挟もうとするが、レンカが「うるさい!」と叫ぶ。
埒があかないと悟ったのか、ラフテルは蹲ったままのハウンドの横に座る。
「俺は見学させてもらおう」
「僕も……戦いたくありませんし、レンカさんはお強いですから」
消極的な二人にヨークは頭を抱えた。
あまりに自由が過ぎる。
ヨークは大きくため息を吐くと、男のほうを睨む。
「……じゃあ、俺はこっちを相手する。もう知ったことか」
投げやりになってヨークは拳を構えた。
そもそもヨークは人を纏めることが嫌いだ。
立場上そうせざるを得なかっただけで、本来ならヨークは場を掻き乱す側の人間である。
つまり、ここまでのことでかなり鬱憤が溜まっているわけで。
「サンドバッグにでもなってくれや、兄ちゃん」
「ほう。お前とはいい勝負ができそうだ」
ヨークと男が互いに拳を構え合う。
すぐさま戦闘が開始した。
目の前で行われる乱闘にアレクがオロオロしていると、横にエルルが立った。
「アレク。怪我してない?」
「あ、うん。姉様こそ大丈夫?」
「私は大丈夫」
「手助けとかしなくていいのかな……」
「平気だ」
ここでガディもこちら側へとやってきた。
どこか呆れたような、それでも羨むような目線をガディは彼らに向ける。
「悔しいが、あいつらは俺らより強い。……というか、襲ってきた奴らは何者なんだ。明らかにおかしい強さだぞ」
「誰なんだろう……それに、僕の名前を知ってた」
疑問に思うアレクに、エルルが釘を刺す。
「アレク。カラーリングは絶対解けないようにしておきなさい」
「え?」
当たり前のことを言い出したエルルにポカンとしていると、エルルはアレクに振り返った。
「あいつらは、手を出すつもりはないと言っていた。なのに今、ああやって戦ってる。……あれはアレクにのみ限定された意味であって、あいつらはアレクが天族関係の者であることを知っている可能性が高い」
「!」
「確信を持たせるのも厄介よ」
エルルに忠告されたことで、アレクの中の警戒心が一気に跳ね上がる。
(そうだ、僕の力を狙う人なんていくらでもいるんだ。常に気をつけないと)
アレクが目を向ける先には、戦うレンカ達が映っている。
手を出すなと言われたが、何もしないのは歯痒い。
「でも、本当にいいのかな? 役立たずとか言われちゃうんじゃ」
「そんなことはない。そもそもあいつら共闘が嫌いだしな」
ガディはアレクの言うことを否定すると、力強く言う。
「アレク、よく見ておけ。あれが冒険者の戦い方だ。学園とかでやる、模擬戦とは違う」
レンカが再び氷で猛攻を浴びせると、女は大剣を振り翳してそれらを一掃する。
「こんなんじゃ届かないよっ!」
「……ハッ、油断しすぎなんじゃないの?」
女の高い声にレンカは頬を歪ませると、勢いよく地面を蹴って走り出した。
走りながら氷で武器を精製していき、次々と相手に投げる。
「ーーっ!」
女が少々焦った様子でそれを弾いた。
(こいつ……目を狙ってきてる!)
「アハっ」
確実に急所を潰しに行く動きに、女は愉快げに笑った。
そして女との距離がかなり縮まったことを確信すると、レンカが氷の刃を足に突き刺して固定すべく、四方八方から飛ばす。
女はそれらを軽々しく避けた。
「どこ狙ってるの、当たるわけないじゃん!」
女がレンカのほうへ目を向けた瞬間、唖然とした。
レンカの白い足が、高く太陽へと向けて振り上げられていた。
「はぁっーー!」
掛け声と共に、レンカの踵落としが見事に決まる。
女が地面に倒れ伏したところで、頭を思い切り踏みつけた。
「あんたの脳天、案外隙だらけね」
「っ、この!」
女はすぐさま暴れ出そうとしたが、氷の刃が体を貫きそれを防ぐ。
躊躇、無駄のない攻撃だ。
その分残虐性が高く荒々しい。
「凄い……」
アレクがポツリと呟くと、ガディは納得とばかりに頷く。
「あいつは強い。本当に」
「アレク、ほら」
「あ」
エルルが指差したほうを見れば、とっくに男とヨークの決着がついていた。
男が地面に倒れ伏しボロボロなのに対して、ヨークは平然としている。
「俺達に喧嘩売ろうなんざ、早かったんじゃねえの?」
ヨークはそう言って高らかに笑った。
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