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超大規模依頼編
第八話 疑心と結果
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「……僕は僕ですよ。それに、さっきの人達なんて知りませんし」
「いくらなんでもしらばっくれるのが下手くそじゃありません? 知らないなら、あんなに君に友好的になるわけないじゃないですか。僕、臆病なので……不安要素は潰しておきたいんです」
ハウンドの疑心に満ちた瞳がアレクを睨んだ。
ハウンドの言い分は最もだ。
もしアレクが彼の立場ならば、同じようなことを思うだろう。
しかしアレクが言ったことは全て真実であり、同時にこれ以上語ることができないのも事実。
エルルとガディは口を出すか決めかねているらしい。
兄姉である彼らがアレクを庇い立てしたところで、疑いが晴れる可能性は低いだろう。
「私もそのちびっ子怪しいと思うのよね」
そこでレンカからの追撃が入った。
「ギルドマスターのお墨付き……それに、バカ双子の弟。それだけのカードが揃ってるとはいえ、子供のあんたがこんな任務を任されるところから何かキモいのよ」
レンカは怠そうに自らの頭を掻くと、ハウンドの後ろに回った。
「例えば幻覚魔法で私達を錯乱させて、こっち側に紛れ込んだ魔物……とかね」
「違う!!」
それを強く否定したのはガディだった。
鋭くレンカを睨み、殺気を滲ませる。
「俺達は小さい頃からずっと……ずっとアレクと一緒だったんだ! お前に何がわかる!」
「だからそれが幻覚じゃないかっつってんの」
はあ、とわざとらしくため息をつくレンカに、ガディが青筋を立てる。
まとめ役であるヨークは黙ったままだ。
とうとう短剣を取り出したガディとエルルに、レンカは愉快げに笑った。
「なに? やろうってわけ?」
「アレクに手を出すっていうなら」
「ああもう、だから嫌だったんですよ……」
「ちょっといいか」
一触即発の雰囲気に、待ったをかけたのはラフテルだった。
「何よ、ラフテル」
「そいつは魔物なんかじゃない。俺が保証しよう」
「はあ? あんたに何がわかるわけ」
「それは本当か? ラフテル」
とうとう口を挟んだヨークに、ラフテルは深く頷いた。
「ああ。アレクは覚えていないが……俺達は昔に会ったことがある」
「えっ」
驚きの声を上げたのはアレクだった。
アレクにラフテルを見た記憶はない。
こんな印象が強そうな人なら忘れなさそうなものだが。
「俺達が会ったのは確か……アレクが九歳の時」
「!」
ちょうどガディとエルルが超大規模依頼で一年屋敷を空けていた期間だ。
ガディとエルルがラフテルを知らないことにも納得がいく。
「あれ……」
そこでアレクは、その空白の一年を覚えていないことに気がついた。
ぽっかりと穴が空いてしまったかのように、そこだけ思い出すことができない。
困惑するアレクの肩をラフテルが叩いた。
「安心しろ。俺はお前を覚えている。お前は俺の恩人だから」
「……ごめんなさい、思い出せなくて」
「まあ気にするな。お前にとって、さして大きなことではなかったのかもな」
ラフテルは腰に刺してある剣を抜き出すと、ヨークの前に掲げてみせた。
「こいつはさっきの奴らと関係はない。俺と、アインバイルの名剣にかけて誓おう」
「わかった」
「ヨーク!」
責めるようにレンカが叫んだ。
ハウンドも不満げに物申す。
「な、何でなんですかヨークさん。たとえ英雄家アインバイルでも、僕達にとってはただの他国の助っ人ですよ」
「大丈夫だ。アインバイル家には、あらゆる精神系の魔法が通じない」
戸惑う彼らにヨークは諭すように説明する。
「アインバイル家は魔法が使えない代わりに、代々家系に伝わる名剣を使って戦う。ラフテルが持っている剣も、そいつの命の何倍もの価値があるものだ。二百年前の天才科学者ガーベラが、かの英雄エルミアと、最高峰の鍛治師、三人で協力して作り出したものだぞ」
「うわ……」
なんてことない剣と思っていた分だけ、レンカ達の反応は渋い。
「まあとにかく、アインバイルは自分達に影響する魔法は効果をなさない。俺達が普通なら持ってる魔力回路ってやつがないからな。炎とか水とか、そういう物理系なら無理だが……そうだな、毒魔法だったり、それこそ精神操作の魔法。己に直接の形で効力を成すものは効かない。ま、治癒魔法も効かないがな」
「なるほど、そんな凄い体質が……」
「俺もアレクの坊が俺達を殺そうなんて、考えちゃいねえと思うぜ」
ヨークの発言に、ハウンドは敵意を収めたらしい。
ハウンドが申し訳なさそうにアレクに頭を下げた。
「すみません……少々冷静さを欠いていたようです。そうですよね。まだ幼いのに、こんな風に疑うなんて」
「あ、ええと、気にしないでください。僕だってそうすると思います」
「じゃあさっきの二人の会話はどう説明するつもりよ」
レンカはまだまだアレクのことが信じられないらしく、わかりやすく牙を剥いた。
ヨークはパン、と手を鳴らし注目を集める。
「そこまで言うなら、そうだな……ここから捜索隊として各自別行動しよう。アレクの坊を庇うガディ、エルルの二人はもちろん別行動だ」
「「はあ!?」」
ガディとエルルが声を揃えた叫んだのを横目に、ヨークは次の指示を出す。
「レンカはアレクを見張ってればいい。ハウンドとラフテルも一緒にな。俺はガディ坊主とエルル嬢ちゃんと行動するから」
「いくらなんでもしらばっくれるのが下手くそじゃありません? 知らないなら、あんなに君に友好的になるわけないじゃないですか。僕、臆病なので……不安要素は潰しておきたいんです」
ハウンドの疑心に満ちた瞳がアレクを睨んだ。
ハウンドの言い分は最もだ。
もしアレクが彼の立場ならば、同じようなことを思うだろう。
しかしアレクが言ったことは全て真実であり、同時にこれ以上語ることができないのも事実。
エルルとガディは口を出すか決めかねているらしい。
兄姉である彼らがアレクを庇い立てしたところで、疑いが晴れる可能性は低いだろう。
「私もそのちびっ子怪しいと思うのよね」
そこでレンカからの追撃が入った。
「ギルドマスターのお墨付き……それに、バカ双子の弟。それだけのカードが揃ってるとはいえ、子供のあんたがこんな任務を任されるところから何かキモいのよ」
レンカは怠そうに自らの頭を掻くと、ハウンドの後ろに回った。
「例えば幻覚魔法で私達を錯乱させて、こっち側に紛れ込んだ魔物……とかね」
「違う!!」
それを強く否定したのはガディだった。
鋭くレンカを睨み、殺気を滲ませる。
「俺達は小さい頃からずっと……ずっとアレクと一緒だったんだ! お前に何がわかる!」
「だからそれが幻覚じゃないかっつってんの」
はあ、とわざとらしくため息をつくレンカに、ガディが青筋を立てる。
まとめ役であるヨークは黙ったままだ。
とうとう短剣を取り出したガディとエルルに、レンカは愉快げに笑った。
「なに? やろうってわけ?」
「アレクに手を出すっていうなら」
「ああもう、だから嫌だったんですよ……」
「ちょっといいか」
一触即発の雰囲気に、待ったをかけたのはラフテルだった。
「何よ、ラフテル」
「そいつは魔物なんかじゃない。俺が保証しよう」
「はあ? あんたに何がわかるわけ」
「それは本当か? ラフテル」
とうとう口を挟んだヨークに、ラフテルは深く頷いた。
「ああ。アレクは覚えていないが……俺達は昔に会ったことがある」
「えっ」
驚きの声を上げたのはアレクだった。
アレクにラフテルを見た記憶はない。
こんな印象が強そうな人なら忘れなさそうなものだが。
「俺達が会ったのは確か……アレクが九歳の時」
「!」
ちょうどガディとエルルが超大規模依頼で一年屋敷を空けていた期間だ。
ガディとエルルがラフテルを知らないことにも納得がいく。
「あれ……」
そこでアレクは、その空白の一年を覚えていないことに気がついた。
ぽっかりと穴が空いてしまったかのように、そこだけ思い出すことができない。
困惑するアレクの肩をラフテルが叩いた。
「安心しろ。俺はお前を覚えている。お前は俺の恩人だから」
「……ごめんなさい、思い出せなくて」
「まあ気にするな。お前にとって、さして大きなことではなかったのかもな」
ラフテルは腰に刺してある剣を抜き出すと、ヨークの前に掲げてみせた。
「こいつはさっきの奴らと関係はない。俺と、アインバイルの名剣にかけて誓おう」
「わかった」
「ヨーク!」
責めるようにレンカが叫んだ。
ハウンドも不満げに物申す。
「な、何でなんですかヨークさん。たとえ英雄家アインバイルでも、僕達にとってはただの他国の助っ人ですよ」
「大丈夫だ。アインバイル家には、あらゆる精神系の魔法が通じない」
戸惑う彼らにヨークは諭すように説明する。
「アインバイル家は魔法が使えない代わりに、代々家系に伝わる名剣を使って戦う。ラフテルが持っている剣も、そいつの命の何倍もの価値があるものだ。二百年前の天才科学者ガーベラが、かの英雄エルミアと、最高峰の鍛治師、三人で協力して作り出したものだぞ」
「うわ……」
なんてことない剣と思っていた分だけ、レンカ達の反応は渋い。
「まあとにかく、アインバイルは自分達に影響する魔法は効果をなさない。俺達が普通なら持ってる魔力回路ってやつがないからな。炎とか水とか、そういう物理系なら無理だが……そうだな、毒魔法だったり、それこそ精神操作の魔法。己に直接の形で効力を成すものは効かない。ま、治癒魔法も効かないがな」
「なるほど、そんな凄い体質が……」
「俺もアレクの坊が俺達を殺そうなんて、考えちゃいねえと思うぜ」
ヨークの発言に、ハウンドは敵意を収めたらしい。
ハウンドが申し訳なさそうにアレクに頭を下げた。
「すみません……少々冷静さを欠いていたようです。そうですよね。まだ幼いのに、こんな風に疑うなんて」
「あ、ええと、気にしないでください。僕だってそうすると思います」
「じゃあさっきの二人の会話はどう説明するつもりよ」
レンカはまだまだアレクのことが信じられないらしく、わかりやすく牙を剥いた。
ヨークはパン、と手を鳴らし注目を集める。
「そこまで言うなら、そうだな……ここから捜索隊として各自別行動しよう。アレクの坊を庇うガディ、エルルの二人はもちろん別行動だ」
「「はあ!?」」
ガディとエルルが声を揃えた叫んだのを横目に、ヨークは次の指示を出す。
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