追い出されたら、何かと上手くいきまして

雪塚 ゆず

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超大規模依頼編

第三十ニ話 新たな種族

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「改めまして、皆さまはじめまして。私はアリス・インティベーゼ。魔王の娘です」
「魔王……!?」

聞き慣れない単語に一同が首を捻る。
しかしレンカとラフテルがその名前に反応を示した。
素早い動きでレンカがアリスの首を掴み上げると、そのまま地面に叩きつける。

「レンカさん!?」
「あんたっ……冗談は抜きにしてよ」
「っ、いえ、本当です……私は魔王の娘なのです」
「やめてレンカさん!」

アレクがレンカをどうにか引っ張り、アリスから引き離す。
しかしラフテルの取り乱しようも尋常ではない。
震える手で腰に下げてある名剣を掴み、アリスへ向けようとした。

「ラフテルも! 一体どうしたっていうの!」
「アレク! お前はなぜ知らない!」
「!?」
「英雄家と呼ばれていた者なら、知っていていいはずだ……!」

ラフテルの言動に、ガディとエルルが口を挟んだ。

「おい。どういう意味だ」
「私達は魔王という言葉に聞き覚えはないわよ」
「本気か……!?」
「ええ」
「ラフテル、やめて! アリスが何をしたっていうの!」
「魔族だろう!」
「だからその……魔族って何なの!」
「俺達の敵だ!」

息を荒くして答えるラフテルの気迫は、アレク達を圧倒する。
アリスは涙ぐみながら、ラフテルに向かって頭を下げる。

「ごめんなさい……! 先代や先々代がしたことは聞いております。今更償い切れるものではありません」
「っ、何を当たり前のことを」
「許してくださいとは言いません! しかし、こちらの事情も聞いてはいただけないでしょうか……!?」

あまりの必死さに、ラフテルも剣を収める。
アリスは彼らに向き直ると、静かに説明を始めた。

「皆さんが普段お相手にしている、魔物がいますよね。あれらは私達魔族の眷属なのです」
「その、魔族って」
「歴史から抹消された、神に牙を剥き、世界を滅ぼそうとした種族の名前です。それらを魔族、またの名を悪魔と呼びます。その頂点に立つのが、魔王なのです」

アリスはハラハラと涙を流しながら、詰まりつつも続けていく。

「私達はこことは別世界で暮らしていました。神によって世界を分かたれたからです。この世界に残っているのは、統率者を失った、狩られるのを待つばかりの魔物達なのです」
「じゃあ、あんた達は何でここに」
「世界を繋ぐ者が現れたからです」

アリスは息を大きく吸い込むと、涙を止めてアレクを見つめた。

「お兄さん。お願いしたいの」
「何を……?」
「お兄さんが天使であることを踏まえての取引よ」

その発言に、ガディとエルルの顔に動揺が滲む。
天族を知らないヨーク達は、不思議そうにその会話を見守っていた。

「世界を繋ぐ者を、捕まえてほしい」
「世界を繋ぐ者って、誰のことなの」
「お兄さんはもう会ったはずだよ。もう一人の天使に」

アリスの発言で、アレクは先程遭遇した天族のことを思い出す。

「まさか、あの人が……!?」
「そう。ある日突然、私達の世界に現れて、こっちの通路を開けてしまったーー神の敵。そいつを捕まえてくれたのなら、私はこの世界の悪魔と魔物、全て引き連れて帰還する」
「……捕まえてどうするの?」
「穴を塞がせて、こっちの世界に連れて行くの」
「ちょっと待て」

ここで口を挟んだのはガディであった。
ガディの警戒心は、アリスが天使のことについて言及してから跳ね上がったらしい。
アリスに向ける視線はかなり厳しいものであった。

「お前、どうしてアレクが天族だとわかった……?」
「匂いです。悪魔と天使は昔から対立する関係でした。天敵の匂いは嗅ぎ取ることができるんです」
「もう一人の天使っていったな。アレクに同族の尻拭いでもさせるつもりか」
「違います!!」

アリスは叫び、必死になって何かを伝えようと口を動かす。
しかし感情が一杯一杯で言葉がついていかず、激しい手振りをした後どうにか搾り出した。

「問題は山積みなんです。お兄さんに協力してもらえなきゃ、この世界が滅んじゃう……!」
「おい、どういうことだそれ」
「もう一人の天使の名前はティファン。かつてのエルミアの息子である彼は、エルミアの施した封印を解こうとしているんです!」
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