追い出されたら、何かと上手くいきまして

雪塚 ゆず

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アルスフォード編

第四十九話 兄の訃報

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その後アレク達は、ギルドにガディとエルルが帰還しているかもしれないという淡い期待を抱いて、ギルドへと戻った。
しかしギルドを訪れてはみたものの、受付員は首を横に振る。

「すみません、お二人はもう別の任務に向かわれまして……」
「別の任務って」
「ここ最近、思い詰めているようで。任務を詰め込んでらっしゃるんです」

アレクは自身の兄と姉の心中を思い、思わず涙する。
受付員も浮かない表情だ。

「今回のミル島の事件、お二人は島民の方達の避難をさせた後、ガディ様が水魔法で魔物を一網打尽にしたとか」

やはり、あれはガディの魔法だったらしい。
ガディがやるにしては乱暴な魔法だった。

「被害者はいなかったんですか?」
「多少はいらっしゃったんですけど、大事には至らず。お二人は、知らない間に誰かサポートしてくれていた、とおっしゃってました」

恐らく、島民が島に残っていないことは、エルルの〔追跡〕のスキルで確認したんだろう。
しかしその場合、アレクとラフテルの存在に気がつかないのは異常だ。
もしくは気づいていて、アレク達並みの強さの者なら大丈夫だろうと、思ったのかもしれない。
あれこれ考えを巡らせるも、ふとアレクはこう思った。

「兄様と姉様、僕に会いたくないのかな……」
「………」

ラフテルから見て、その可能性は十分にありえた。
情けない姿を、弟に見せたくないのかもしれない。
だとしてもあれはあまりに酷い仕打ちだ。

「どうやら本当に、お前の兄と姉には余裕がないらしい」
「う……」
「どうする。追いかけるか」
「流石にもういいよ。これ以上追いかけてもね……」

アレクがそう言ったので、「そうか」とラフテルは残念そうな表情となった。

「そうだ……受付員。レオ兄様がどこにいるか知らないか?」
「レオ兄様……?」
「レオ・アインバイルだ。ここのギルドに所属していたろう」

ラフテルの言葉に、受付員が急に泣き出した。
その反応に、ラフテルの焦りが募る。

「おい……兄様は。無事だろ? あれだけ強かったんだ。今も、どこ、ほっつき歩いてるか」
「すみません……」
「おい……おい!」

ラフテルが受付員に、掴みかからんばかりの勢いで詰め寄る。
受付員の口から放たれた結果は、非情なものであった。

「レオ・アインバイル様は……超大規模依頼で、お亡くなりになりました」

◆ ◆ ◆

「ラフテルッ、ラフテルッ!」
「ご主人様?」

先に風魔に帰還していたナオが、帰ってきたラフテルの様子に首を傾げる。
ラフテルは黙ったまま、自分の部屋へと引っ込んで行ってしまった。

「アレク様、これはどういう状況で……」
「ラフテルの……お兄さんが、亡くなったって」

アレクがそう言うと、ナオが大きく目を見開いた。

「嘘です…‥だって、レオ様は、あんなに強くて」
「天気の魔物に、やられたそうです」
「レオ様っ……」

ナオは自身の顔を覆い、崩れ落ちるようにして座り込んだ。
どう声をかけていいかもわからず、アレクは押し黙る。
しばらくこの状況が続いた。
涙を拭い、ナオはアレクのほうを向く。

「取り乱してごめんなさい。レオ様は、亡くなってしまったのですね」
「はい……」
「ご遺体はどこに?」
「遺族に返した、と」
「……ご当主様は、黙っていらしたんですね。ラフテル様の様子を見るに、当然の判断でしょう」

二人でラフテルの入っていった部屋のドアを眺める。
一向に出てくる様子のない彼に、どうやって声をかけたらいいのだろうか。

「しばらくそっとしておきましょうか」
「そうですね……」

それが最もベストな選択といい、アレクの心は晴れない。
ただ心配げにドアの先にいるラフテルを思った。

◆ ◆ ◆

時計の針がかなり進み、五時へと進む頃。
ラフテルが部屋から出てきた。

「ご主人様、大丈夫ですか?」
「………」
「ご主人様? ……どこに行くんですか!」

ラフテルがナオを振り切り、外へと走っていく。
それに気づいたアレクが、ラフテルを引き留めた。

「待って! どこに行くの?」
「……レオ兄様を殺した魔物を、殺しに行く」
「ラフテル! 天気の魔物はもう討伐済みなんだよ!?」
「でもっ……じゃあ、どうしたらいいんだ! レオ兄様がいなくなって、俺は……どうしたら」

まるで迷子の子供のような顔をする。
つい力を緩めたアレクに、ラフテルはそのまま走っていってしまった。

「ラフテル……」

雨はまだ、降り続けている。
ナオが追いついてきて、傘をアレクに差した。

「ご主人様、大丈夫でしょうか」
「……ラフテルが行ったところ、マズいかもしれない」
「え?」

アレクの目線の先には、一つの山があった。
都市部と離れた草原に、ムーンオルトの屋敷は切り離されたように建っている。
町へと続く道とは逆のほうに山が見えた。

「あそこ、兄様と姉様と、よく魔物を狩りに行ってた場所なんだ。魔物自体はそこまで強くないんだけど、この雨だから、土砂崩れが起きるかも」
「っ、追いかけましょう!」


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