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アルスフォード編
第六十八話 半身と愛
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ポルカに魔石から気配を辿るよう言い渡されたエルルは、顔を顰めたまま魔石を眺める。
「そう言われても、どうすれば……」
「おい、エルル。ちょっといいか」
ガディに声をかけられ、エルルは首を傾げる。
「どうしたの」
「それ、一旦寄越せ」
「いいけど」
魔石を手渡せば、ガディは魔石を至る方向で観察する。
しばらくそれを続けていたが、長い時間そうしていたので、エルルが思わず声をかける。
「……何してるの?」
「気になるところがあるか、と」
「そう」
お互いに沈黙が降りる。
ガディがふと口を開いた。
「これ、似てないか」
「何に」
「なんだったか……師匠に食わされたやつ」
「ああ、ザンニンソウ?」
ザンニンソウとは、生物を食らう肉食の植物だ。
主に熱帯地帯に生えている植物だが、どこから採ってきたのか、修行時代に唐突にクーヴェルがそれをよこした。
もちろん生きたままであったため、危うく食べられるところであった。
「あの日って師匠が面倒臭がったから、アレクが調理してくれたんだよな」
「ザンニンソウの天ぷら……案外美味しかったわよね」
「また食べたいな」
「そうね」
ここにアレクがいれば、「似てるのって色だけだよね?」と的確なツッコミをしてくれただろう。
悲しきかな、この二人はボケである。
ツッコミ不在の中進む会話は、なかなかにカオスであった。
「それで、何かわかった?」
「いや、別に」
「そう」
魔石を返却され、エルルは手詰まりになった状況に困り果てた。
何か打開策はないものなのか。
そこで、ガサリと後ろから物音がした。
「あっ……えっと、お邪魔しました?」
そこに立っていたのはナオだった。
見れば見るほどラフテルにそっくりな姿の彼女に、ガディはふと口にする。
「お前は、俺達みたいだよな」
「うえっ?」
「双子みたいだ、ラフテルと」
「ご主人様と、私が……? そ、そんな! 烏滸がましいです!」
ぶんぶんと勢いよく首を横に振るナオだったが、そこでエルルの手の中にある魔石の存在に気がつく。
「それは?」
「ああ、獲ってこいって言われた魔石よ。ここから魔力の残り香を辿らなきゃいけなくて」
「ははあ、なるほどです……」
ナオは小走りで魔石へと近づくと、魔石を覗き込んだ。
ジロジロと凝視し、時たま「はあ」とか「ほうほう」とか一人でに相槌を打つので、エルルは不気味に思って問いかける。
「何してるの」
「この子と喋ってるんです」
「魔石と?」
「はい。私……ナオはお守り人形です。でも、私の核となる部分は魔石でできているんですよ」
「そうなの」
「はい。アルスフォードの発明品には、魔石を用いたものが非常に多いんですよ。トリティカーナと戦争してないのは、恐らくトリティカーナから魔石を輸入しているからですね」
重要な情報をサラッと漏らすが、双子は特にその情報に興味がない。
「へえ」と適当に返すだけだ。
ナオは顔を上げると、ニコリと微笑んだ。
「この子が造り手のこと、覚えているみたいです。案内しましょうか?」
「ありがたいけど……いいわ。遠慮しておく。自分の力で辿り着くのがポルカに出された指示だもの」
「そうですか。なら、せめてものアドバイスをさせてください」
ナオは人差し指を立てると、エルルの鼻先へと突きつけた。
「お腹空いたら美味しいもの食べたくなりません?」
「そ、そうね」
「んじゃあ、頑張ってください」
「待って。それがアドバイス?」
「はい。私なりの、精一杯のアドバイスですっ」
ナオはそのまま、主人であるラフテルの元へと戻っていった。
ナオに恐らくアドバイスの才能はないのだろう。
呆然としてナオを見送った二人だが、ガディのほうがエルルに提案した。
「とりあえず、腹、空かしてみるか?」
「……そうしましょうか」
腹を空かす。
そうするには、何が手っ取り早いか。
もう暗黙の了解みたいなものだった。
二人は地面に落ちている手頃な木の棒を拾い上げると、それぞれ構える。
「……ふっ!」
どちらとも合図することなく、駆け出す。
二人でよく剣の鍛錬を昔からした。
クーヴェルに出会って以降は短剣を使い続けてきたが、今実際に使用している木の棒は、普通の剣と同じくらいの大きさだ。
打ち合いが続き、長いこと集中する。
「……止まって」
エルルの一言で、ガディが動きを止める。
「癖、出てる」
「あ」
ガディの悪癖。
それは、避けることに集中してしまうこと。
時にそれは武器になりつつ、悪手となる。
「直さないとね、それ」
「すまん。こうなったら教えてくれ」
「言われなくても」
その後、再び打ち合いを再開する。
こうして向かい合っていれば、まるで自分と戦っているような気分となった。
思考パターンや行動が少し違えど、根本にある考えは同じ。
アレクをーー何にも変えがたい愛しい弟を、守りたい。
バキィンッ!
「「わ」」
木の棒が割れて壊れた。
木の破片が二人の足元に溢れる。
「壊れたな」
「……次。魔法の撃ち合いね」
エルルが風の魔法を展開する。
ガディは自分の得意とする水魔法を展開した。
そして、そこでガディはふと思った。
(エルルの強みと弱みってなんだ……?)
「そう言われても、どうすれば……」
「おい、エルル。ちょっといいか」
ガディに声をかけられ、エルルは首を傾げる。
「どうしたの」
「それ、一旦寄越せ」
「いいけど」
魔石を手渡せば、ガディは魔石を至る方向で観察する。
しばらくそれを続けていたが、長い時間そうしていたので、エルルが思わず声をかける。
「……何してるの?」
「気になるところがあるか、と」
「そう」
お互いに沈黙が降りる。
ガディがふと口を開いた。
「これ、似てないか」
「何に」
「なんだったか……師匠に食わされたやつ」
「ああ、ザンニンソウ?」
ザンニンソウとは、生物を食らう肉食の植物だ。
主に熱帯地帯に生えている植物だが、どこから採ってきたのか、修行時代に唐突にクーヴェルがそれをよこした。
もちろん生きたままであったため、危うく食べられるところであった。
「あの日って師匠が面倒臭がったから、アレクが調理してくれたんだよな」
「ザンニンソウの天ぷら……案外美味しかったわよね」
「また食べたいな」
「そうね」
ここにアレクがいれば、「似てるのって色だけだよね?」と的確なツッコミをしてくれただろう。
悲しきかな、この二人はボケである。
ツッコミ不在の中進む会話は、なかなかにカオスであった。
「それで、何かわかった?」
「いや、別に」
「そう」
魔石を返却され、エルルは手詰まりになった状況に困り果てた。
何か打開策はないものなのか。
そこで、ガサリと後ろから物音がした。
「あっ……えっと、お邪魔しました?」
そこに立っていたのはナオだった。
見れば見るほどラフテルにそっくりな姿の彼女に、ガディはふと口にする。
「お前は、俺達みたいだよな」
「うえっ?」
「双子みたいだ、ラフテルと」
「ご主人様と、私が……? そ、そんな! 烏滸がましいです!」
ぶんぶんと勢いよく首を横に振るナオだったが、そこでエルルの手の中にある魔石の存在に気がつく。
「それは?」
「ああ、獲ってこいって言われた魔石よ。ここから魔力の残り香を辿らなきゃいけなくて」
「ははあ、なるほどです……」
ナオは小走りで魔石へと近づくと、魔石を覗き込んだ。
ジロジロと凝視し、時たま「はあ」とか「ほうほう」とか一人でに相槌を打つので、エルルは不気味に思って問いかける。
「何してるの」
「この子と喋ってるんです」
「魔石と?」
「はい。私……ナオはお守り人形です。でも、私の核となる部分は魔石でできているんですよ」
「そうなの」
「はい。アルスフォードの発明品には、魔石を用いたものが非常に多いんですよ。トリティカーナと戦争してないのは、恐らくトリティカーナから魔石を輸入しているからですね」
重要な情報をサラッと漏らすが、双子は特にその情報に興味がない。
「へえ」と適当に返すだけだ。
ナオは顔を上げると、ニコリと微笑んだ。
「この子が造り手のこと、覚えているみたいです。案内しましょうか?」
「ありがたいけど……いいわ。遠慮しておく。自分の力で辿り着くのがポルカに出された指示だもの」
「そうですか。なら、せめてものアドバイスをさせてください」
ナオは人差し指を立てると、エルルの鼻先へと突きつけた。
「お腹空いたら美味しいもの食べたくなりません?」
「そ、そうね」
「んじゃあ、頑張ってください」
「待って。それがアドバイス?」
「はい。私なりの、精一杯のアドバイスですっ」
ナオはそのまま、主人であるラフテルの元へと戻っていった。
ナオに恐らくアドバイスの才能はないのだろう。
呆然としてナオを見送った二人だが、ガディのほうがエルルに提案した。
「とりあえず、腹、空かしてみるか?」
「……そうしましょうか」
腹を空かす。
そうするには、何が手っ取り早いか。
もう暗黙の了解みたいなものだった。
二人は地面に落ちている手頃な木の棒を拾い上げると、それぞれ構える。
「……ふっ!」
どちらとも合図することなく、駆け出す。
二人でよく剣の鍛錬を昔からした。
クーヴェルに出会って以降は短剣を使い続けてきたが、今実際に使用している木の棒は、普通の剣と同じくらいの大きさだ。
打ち合いが続き、長いこと集中する。
「……止まって」
エルルの一言で、ガディが動きを止める。
「癖、出てる」
「あ」
ガディの悪癖。
それは、避けることに集中してしまうこと。
時にそれは武器になりつつ、悪手となる。
「直さないとね、それ」
「すまん。こうなったら教えてくれ」
「言われなくても」
その後、再び打ち合いを再開する。
こうして向かい合っていれば、まるで自分と戦っているような気分となった。
思考パターンや行動が少し違えど、根本にある考えは同じ。
アレクをーー何にも変えがたい愛しい弟を、守りたい。
バキィンッ!
「「わ」」
木の棒が割れて壊れた。
木の破片が二人の足元に溢れる。
「壊れたな」
「……次。魔法の撃ち合いね」
エルルが風の魔法を展開する。
ガディは自分の得意とする水魔法を展開した。
そして、そこでガディはふと思った。
(エルルの強みと弱みってなんだ……?)
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