取り巻き令嬢Fの婚活

キマイラ

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 夏休みに入ってフランシスさんのご実家を訪ねたのですが、緊張しすぎて記憶がない。確か普通に優しい良い人たちだったと思う。でも記憶がない……! 正直情けなさに涙が出そうである。だって交際相手のご両親なんて前世も含めて初めて会ったんですもの……!

「どうした、百面相なんかして」

「え、そんな変な顔してました?」

「変な顔はしていなかったから安心してくれ」

 ただ今私の実家に向かうべく乗り合い馬車の中である。これからいくつもの馬車を乗り継いでフォーテスキュー領へと向かうのだ。街道は整備されてるとはいえ時間がかかるので私としては早く鉄道が発明されてほしい。

 この国には『二度目の人生は南部で送れ』という言葉がある。隠居後のセカンドライフは気候の良い南部で、という意味もあるがそれだけじゃないと私は踏んでいる。だって、南部料理って和食も中華もその他エスニックもなんでもありなんだもの。たぶんだけど私以外にも転生者がいる。というか確実に二人はいる。中華料理の祖ミリーと醤油と味噌を発明したサマンサ、この二人は確実にそうだろう。おかげで私は満たされた食生活を送れていた。たまにね、無性に白米と味噌汁が食べたくなるの。これは前世が日本人だから仕方ないと思う。そしてその衝動が満たせるのだ。ありがたい。他の転生者も食べ物を優先したんだと思う。本当に南部料理ってなんでもありだから。でも一人くらい食文化以外の文明の発展に寄与する人が居たっていいと思うの。そう思うけど私だって蒸気機関というものがあったことは知っているけど構造なんてなに一つ知らないから仕方がないとも思う。本当に誰か鉄道作ってくれないかな……。他の転生者に期待しよう。

 なんて考えているうちに昼休憩だ。三十分後には出発だからのんびりとご飯を食べる時間はない。屋台でさっと済ませようとフランシスさんと話し合って決めた。この街はまだ北部だからウインナーやハムといった加工肉を使ったものが多いようだ。カリーヴルストとか絶対美味しい……。あ、この世界カレーもあります。さすがにカレールウは無いけどカレー粉があるのでそれで作るの。インドカレーやタイカレーも南部に行けば食べれるよ。

「あ、私あれにします。買ってきますね」

「俺も同じものにしよう」

「じゃあ二つ買ってきます」

 ウインナーをパンに挟んだものに決めた! 名前、なんだろう……。ホットドッグだけどなんかきっと北部風の名前が付けられているはずだ。

「買ってきました。はいどうぞ」

「これも食べてみないか?」

 そう言ってフランシスさんが差し出したのはカリーヴルスト。私が買い物している間に買いに行っていたようだ。

「では一ついただきます」

 ウインナーと謎のソース(ケチャップベースかな?)とカレー粉、これでまずいわけがない! と思っていたんだけど想像を超えてきた。まずウインナー自体が美味しい……。やっぱり北部のウインナーは別物だわ……。

「美味しいです」

 他に言うべきことなどあるだろうか、否、ない。美味しいから早く食べてみてほしい。

 これで午後からも馬車に揺られるのを頑張れる気がする。

 三十分はあっという間で、また馬車に揺られること五時間。ようやく今日の目的地にたどり着いた。今日はこの街で一泊する。もちろん別々の部屋だ。明日も朝早いから同じ部屋に泊まって起こしてもらいたい気持ちもなくはないけど結婚前の男女で婚約者ですらないのでグラント王国の一般常識的にさすがにまずい。ぶっちゃけ南部人的には全然オッケーなんだけど南部だけちょっと常識が違う自覚があるので慎みがないと思われたくない私としてはそうせざるを得なかった。既成事実を作っていかないかと言った時点で慎み深いとは到底言えないけれどそれでもさすがにね。あんまり非常識だと思われるのも嫌だし……。
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