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November
芸大祭 Side 翠葉 11話
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「ごめんね、待たせちゃった……?」
「少し……」
そう言って車を発進させたツカサの横顔は、どこか不機嫌そうだ。
「怒ってる……?」
「別に……」
でも、間違いなく機嫌は悪いと思う。
原因はなんだろう。
今日一日、ツカサの好意に甘えて待たせすぎちゃった? それとも――
「今、秋斗さんたちと一緒にいたから?」
「別に、って言ったんだけど」
「だって、顔が不機嫌そう……」
ツカサはわかりやすく顔を背けた。
その動作に、赤信号で停車したことを知る。
あっ――
「唯兄がね、ご飯食べておいでって。五千円もらっちゃった」
両手で五千円札を持って見せると、ツカサは横目にこちらを見てうんざりした顔をした。
「あっ、ツカサがだめ? ……そうだよね、急じゃ真白さんもご飯作っているだろうし……」
五千円札を引っ込めると、ツカサは小さくため息をついた。
「だめじゃない。家には連絡を入れればいい」
「本当っ?」
「……食べたいものとか行きたいところ、ある?」
「え? あ――」
困った……。「外食」と言われて思い浮かぶところがひとつもない。
家族で外食といったらウィステリアホテルが定番だし、蒼兄と何度か外食したことがあるけれど、すべて車で連れて行ってもらったため、場所がわからないうえにお店の名前もうろ覚えだ。
「つ、ツカサは? どこか行きたいところない?」
「このあたりの店は倉敷コーヒーしか知らない。近くにファミレスがあったけど、入りたいとは思わない」
えぇと……。
「ごめん、私もお店詳しくなくて……」
支倉はとくにわからない。でも、藤倉へ戻ったところで候補が増えるわけでもない。
桃華さんと出かけたときは駅ビルに入っているパスタ屋さんへ行ったけれど、ここからなら支倉の駅ビル……? あ――
「蒼兄っ! 蒼兄に訊いたらどこか教えてもらえるかもっ!?」
「却下。……マンションでいい?」
「え?」
「支倉のマンション。藤倉のマンションと同じでコンシェルジュにオーダーできるから」
「うん!」
支倉のおうちはどんな間取りかな。どんなインテリアだろう。
藤山のおうちみたいに、真白さんの人柄が表れるようなほんわかしたものだろうか。
まだ見ぬ場所へ連れて行ってもらえることが嬉しくて、私は流れる景色を新鮮な気持ちで眺めていた。ゆえに、その隣でツカサが小さくため息をついたことには気づけなかった。
バッグの中でオルゴール音が鳴り出す。
電話……?
ディスプレイには「里見茜」の文字。
「茜先輩からの電話、出てもいい?」
「どうぞ」
「もしもし……?」
『翠葉ちゃんっ、学祭来てたのっ!?』
「えっ? あ……はい。奏楽堂のコンサートを聴きに行きました」
『今どこっ!?』
「あ、えと……帰りの車の中です」
『残念っ。会いたかったなぁ……。さっき、秋斗先生を見かけたからもしかしてって思ったの。忙しくて連絡できなかったんだけど、ちゃんと連絡するんだった。ショックっ』
「すみません、私も連絡すればよかったですよね」
『っていうか、進路っ、うちに決めたのっ!?』
「それはまだ……ただ、候補のひとつではあります」
『そうなのね……。うちに来てくれたら嬉しいな。また協演しよ? 私、翠葉ちゃんのピアノで歌いたいっ』
「いつか機会があったら……」
『絶対よ?』
「はい、楽しみにしています」
『じゃ、また連絡するね』
そう言って通話は切れた。
支倉のウィステリアヴィレッジに着くと、エントランスで食事のオーダーをして部屋へ上がることに。
エレベーターに乗ると、ツカサは胸ポケットから出したカードキーを通す。と、エレベーターが勝手に動き出した。
「カードキーがないと動かないの……?」
「いや、十階だけがカードキーがないと行けないシステム」
「そうなのね……」
なんとなしに階数ボタンを見たら、十階のボタンは存在すらしていなかった。でも、扉の上の階数表示板には「10」という文字がある。
十階に着いてエレベーターを降りると、ホテルのラウンジのような一室に出た。
調度品や絵画、応接セットが品よく配置されているけれど……。
「ここ、何……?」
「ロビーみたいなもの。家に上げたくない人間はここで対応する」
「えっ?」
意味がわからず車椅子を押され、大きな扉の前にたどり着く。
天井近くまである玄関ドアは両開きのもので、まるでレストランの入口のよう。
ツカサは扉の脇にあるセキュリティーボックスにカードを通し、指紋認証と暗証番号を入力してロックを解除した。
右側のドアが開かれ目の前に現れたのは、真っ白でひたすらに長い廊下。
私は絶句する。
突き当たりまで何メートルあるんだろう……。
何より、個人宅にしては廊下の幅が広すぎる。三メートル近くあるのではないだろうか。
そのうえ、等間隔にソファまで置かれているのだ。
「あの、もしかして……十階は丸々ツカサのおうちなの?」
呆然としたままに尋ねると、
「そうだけど?」
平然と答えられて再び絶句。
あぁ、御曹司だ……。間違いなく、ツカサは御曹司だ……。
藤山にある自宅が割と普通のおうちだったから、こんな規格外なものが待ち受けているとは思ってもみなかった。
でも、考えてみれば、初めて湊先生のお宅へお邪魔したときには、ウィステリアヴィレッジの高級マンション感をひしひしと感じたっけ……。
慣れって怖い……。
今はそこに住んでいるからコンシェルジュがいることにも慣れてしまったし、帰ってきて「おかえりなさいませ」と言われることも普通になってしまった。
色んな現実に眩暈を覚える。
「ツカサ、靴は……? 靴は脱がなくてもいいの?」
見たところ、マンションにありがちな玄関スペースが見当たらない。
もっとも、こんな廊下に普通の玄関が存在したら、思い切り浮くのだろうけれど……。
広めの廊下には絵画が飾られており、画廊もしくはホテルの通路のよう。
「ここは土足で。居住区画入口にふたつめの玄関があるからそこで脱いでもらう」
「わかった……」
呆然としながら白い大理石の廊下を進む。
「広いけど、全部の部屋を使っているわけじゃない。一番手前にパーティーホールと調理室。その隣の区画には応接室と会議室があって、次の区画にはゲストルームがある。その次が居住区画。そこから先は、父さんの書斎だったり書庫だったり。あとは母さんと姉さんの衣裳や兄さんの趣味道具を置いたトランクルームみたいなもの」
内訳を聞いて納得できるレベルではなく、ただただ慄いているとツカサに笑われた。
「見て楽しめるものでもないけど、よかったら全部屋見せて回ろうか?」
言いながら、ツカサは応接室からクローゼット使いされている部屋まで案内してくれた。
手前の三分の一くらいはゲストをもてなすための施設が並び、その次に居住区画。その隣に涼先生の書斎があって、その近くの部屋はすべてが書庫。図鑑のような分厚い本がたくさん並ぶ部屋もあれば、並んでいるものがすべてファイルの部屋もあり、かと思えば文庫本や絵本が並ぶ部屋もある。そして、湊先生や楓先生、ツカサが描いた絵が飾られた部屋や家族写真が飾られた部屋もあった。その奥には膨大なドレスやバッグ、桐の箪笥が収納されたお部屋がずらりと並ぶ。
ツカサの言うとおり、居住空間以外はクローゼット使いされたセカンドハウスだった。
「藤倉のマンションとは全然つくりが違うのね?」
「いや、九階までは普通に6LDKのつくり。このフロアだけがイレギュラー」
なるほど……。
車椅子を降りると有無を言わさずツカサに抱えられ、広すぎるリビングへ連れて行かれた。
「ステップフロア……?」
一番高い位置に対面キッチンがあり、広めに作られたカウンターが食卓になっているようだ。そこから三段ほど下がった場所に二十畳ほどのリビングがあり、さらに三段下がったところに六畳ほどの書斎らしき空間があった。
壁がないだけでこんなにも解放感に溢れた空間になるのね……。
否、いやでも開放感を感じるほど広いのだ。
それにしても――
「藤山のおうちとはずいぶん印象が違うのね?」
あそこはあたたかみを感じる空間なのに対し、ここはどちらかというなら無機質で簡素。モダンな印象を受ける。
パーティールームやゲストルームにはシックな壁紙が使われていたけれど、居住空間においてはコンクリート打ちっぱなしだし、家具やラグの配色のセンスが湊先生ぽいというか……。
「あぁ、ここは母さんの手が入ってないから」
「え?」
「ここ、姉さんが大学に入るときに建てられて、居住空間に関しては姉さんに一任されてたんだ」
なんだかものすごく納得してしまった。
「ここ、普段は使われてないの?」
「そうだな……。ここには姉さんと栞さん、兄さんが住んだことがあるくらいで、あとは人が住んでいたことはない。ほとんど物置扱い。ほか、父さんが仕事で人を家に呼ばなくちゃ行けないときに使ったり、大学に用があるときに寄ってる程度」
「藤山にはお客様を呼ばないの?」
「セキュリティの関係で難しいのと、煩わしい仕事は家に持ち込まないのが父さんのポリシー」
「なんだか涼先生らしいね」
そんな話をしているとインターホンが鳴った。
「インターホンは普通に鳴るのね?」
「っていうか、普通の家なんだけど……」
「え、これは普通とは言わないと思う。だって、玄関まで何メートルあるの?」
ツカサは少し考え、
「そこの玄関なら五、六メートル。ロビーの玄関は――それでも、じーさんちのほうが玄関まで遠い」
「あそこと比べたらだめだと思う。だって、比較するものがすでに規格外……」
そんな会話をしているともう一度インターホンが鳴った。けれども、さっきとは違う音だ。
不思議に思って首を傾げると、
「さっきのはロビーの玄関で鳴らしたインターホン。今のは居住区画入口にあるインターホン。コンシェルジュはそこまで入ってこられる仕様。出てくるから適当に座ってて」
そう言うとツカサはカウンターの椅子を引いてくれ、足早にリビングを出て行った。
「少し……」
そう言って車を発進させたツカサの横顔は、どこか不機嫌そうだ。
「怒ってる……?」
「別に……」
でも、間違いなく機嫌は悪いと思う。
原因はなんだろう。
今日一日、ツカサの好意に甘えて待たせすぎちゃった? それとも――
「今、秋斗さんたちと一緒にいたから?」
「別に、って言ったんだけど」
「だって、顔が不機嫌そう……」
ツカサはわかりやすく顔を背けた。
その動作に、赤信号で停車したことを知る。
あっ――
「唯兄がね、ご飯食べておいでって。五千円もらっちゃった」
両手で五千円札を持って見せると、ツカサは横目にこちらを見てうんざりした顔をした。
「あっ、ツカサがだめ? ……そうだよね、急じゃ真白さんもご飯作っているだろうし……」
五千円札を引っ込めると、ツカサは小さくため息をついた。
「だめじゃない。家には連絡を入れればいい」
「本当っ?」
「……食べたいものとか行きたいところ、ある?」
「え? あ――」
困った……。「外食」と言われて思い浮かぶところがひとつもない。
家族で外食といったらウィステリアホテルが定番だし、蒼兄と何度か外食したことがあるけれど、すべて車で連れて行ってもらったため、場所がわからないうえにお店の名前もうろ覚えだ。
「つ、ツカサは? どこか行きたいところない?」
「このあたりの店は倉敷コーヒーしか知らない。近くにファミレスがあったけど、入りたいとは思わない」
えぇと……。
「ごめん、私もお店詳しくなくて……」
支倉はとくにわからない。でも、藤倉へ戻ったところで候補が増えるわけでもない。
桃華さんと出かけたときは駅ビルに入っているパスタ屋さんへ行ったけれど、ここからなら支倉の駅ビル……? あ――
「蒼兄っ! 蒼兄に訊いたらどこか教えてもらえるかもっ!?」
「却下。……マンションでいい?」
「え?」
「支倉のマンション。藤倉のマンションと同じでコンシェルジュにオーダーできるから」
「うん!」
支倉のおうちはどんな間取りかな。どんなインテリアだろう。
藤山のおうちみたいに、真白さんの人柄が表れるようなほんわかしたものだろうか。
まだ見ぬ場所へ連れて行ってもらえることが嬉しくて、私は流れる景色を新鮮な気持ちで眺めていた。ゆえに、その隣でツカサが小さくため息をついたことには気づけなかった。
バッグの中でオルゴール音が鳴り出す。
電話……?
ディスプレイには「里見茜」の文字。
「茜先輩からの電話、出てもいい?」
「どうぞ」
「もしもし……?」
『翠葉ちゃんっ、学祭来てたのっ!?』
「えっ? あ……はい。奏楽堂のコンサートを聴きに行きました」
『今どこっ!?』
「あ、えと……帰りの車の中です」
『残念っ。会いたかったなぁ……。さっき、秋斗先生を見かけたからもしかしてって思ったの。忙しくて連絡できなかったんだけど、ちゃんと連絡するんだった。ショックっ』
「すみません、私も連絡すればよかったですよね」
『っていうか、進路っ、うちに決めたのっ!?』
「それはまだ……ただ、候補のひとつではあります」
『そうなのね……。うちに来てくれたら嬉しいな。また協演しよ? 私、翠葉ちゃんのピアノで歌いたいっ』
「いつか機会があったら……」
『絶対よ?』
「はい、楽しみにしています」
『じゃ、また連絡するね』
そう言って通話は切れた。
支倉のウィステリアヴィレッジに着くと、エントランスで食事のオーダーをして部屋へ上がることに。
エレベーターに乗ると、ツカサは胸ポケットから出したカードキーを通す。と、エレベーターが勝手に動き出した。
「カードキーがないと動かないの……?」
「いや、十階だけがカードキーがないと行けないシステム」
「そうなのね……」
なんとなしに階数ボタンを見たら、十階のボタンは存在すらしていなかった。でも、扉の上の階数表示板には「10」という文字がある。
十階に着いてエレベーターを降りると、ホテルのラウンジのような一室に出た。
調度品や絵画、応接セットが品よく配置されているけれど……。
「ここ、何……?」
「ロビーみたいなもの。家に上げたくない人間はここで対応する」
「えっ?」
意味がわからず車椅子を押され、大きな扉の前にたどり着く。
天井近くまである玄関ドアは両開きのもので、まるでレストランの入口のよう。
ツカサは扉の脇にあるセキュリティーボックスにカードを通し、指紋認証と暗証番号を入力してロックを解除した。
右側のドアが開かれ目の前に現れたのは、真っ白でひたすらに長い廊下。
私は絶句する。
突き当たりまで何メートルあるんだろう……。
何より、個人宅にしては廊下の幅が広すぎる。三メートル近くあるのではないだろうか。
そのうえ、等間隔にソファまで置かれているのだ。
「あの、もしかして……十階は丸々ツカサのおうちなの?」
呆然としたままに尋ねると、
「そうだけど?」
平然と答えられて再び絶句。
あぁ、御曹司だ……。間違いなく、ツカサは御曹司だ……。
藤山にある自宅が割と普通のおうちだったから、こんな規格外なものが待ち受けているとは思ってもみなかった。
でも、考えてみれば、初めて湊先生のお宅へお邪魔したときには、ウィステリアヴィレッジの高級マンション感をひしひしと感じたっけ……。
慣れって怖い……。
今はそこに住んでいるからコンシェルジュがいることにも慣れてしまったし、帰ってきて「おかえりなさいませ」と言われることも普通になってしまった。
色んな現実に眩暈を覚える。
「ツカサ、靴は……? 靴は脱がなくてもいいの?」
見たところ、マンションにありがちな玄関スペースが見当たらない。
もっとも、こんな廊下に普通の玄関が存在したら、思い切り浮くのだろうけれど……。
広めの廊下には絵画が飾られており、画廊もしくはホテルの通路のよう。
「ここは土足で。居住区画入口にふたつめの玄関があるからそこで脱いでもらう」
「わかった……」
呆然としながら白い大理石の廊下を進む。
「広いけど、全部の部屋を使っているわけじゃない。一番手前にパーティーホールと調理室。その隣の区画には応接室と会議室があって、次の区画にはゲストルームがある。その次が居住区画。そこから先は、父さんの書斎だったり書庫だったり。あとは母さんと姉さんの衣裳や兄さんの趣味道具を置いたトランクルームみたいなもの」
内訳を聞いて納得できるレベルではなく、ただただ慄いているとツカサに笑われた。
「見て楽しめるものでもないけど、よかったら全部屋見せて回ろうか?」
言いながら、ツカサは応接室からクローゼット使いされている部屋まで案内してくれた。
手前の三分の一くらいはゲストをもてなすための施設が並び、その次に居住区画。その隣に涼先生の書斎があって、その近くの部屋はすべてが書庫。図鑑のような分厚い本がたくさん並ぶ部屋もあれば、並んでいるものがすべてファイルの部屋もあり、かと思えば文庫本や絵本が並ぶ部屋もある。そして、湊先生や楓先生、ツカサが描いた絵が飾られた部屋や家族写真が飾られた部屋もあった。その奥には膨大なドレスやバッグ、桐の箪笥が収納されたお部屋がずらりと並ぶ。
ツカサの言うとおり、居住空間以外はクローゼット使いされたセカンドハウスだった。
「藤倉のマンションとは全然つくりが違うのね?」
「いや、九階までは普通に6LDKのつくり。このフロアだけがイレギュラー」
なるほど……。
車椅子を降りると有無を言わさずツカサに抱えられ、広すぎるリビングへ連れて行かれた。
「ステップフロア……?」
一番高い位置に対面キッチンがあり、広めに作られたカウンターが食卓になっているようだ。そこから三段ほど下がった場所に二十畳ほどのリビングがあり、さらに三段下がったところに六畳ほどの書斎らしき空間があった。
壁がないだけでこんなにも解放感に溢れた空間になるのね……。
否、いやでも開放感を感じるほど広いのだ。
それにしても――
「藤山のおうちとはずいぶん印象が違うのね?」
あそこはあたたかみを感じる空間なのに対し、ここはどちらかというなら無機質で簡素。モダンな印象を受ける。
パーティールームやゲストルームにはシックな壁紙が使われていたけれど、居住空間においてはコンクリート打ちっぱなしだし、家具やラグの配色のセンスが湊先生ぽいというか……。
「あぁ、ここは母さんの手が入ってないから」
「え?」
「ここ、姉さんが大学に入るときに建てられて、居住空間に関しては姉さんに一任されてたんだ」
なんだかものすごく納得してしまった。
「ここ、普段は使われてないの?」
「そうだな……。ここには姉さんと栞さん、兄さんが住んだことがあるくらいで、あとは人が住んでいたことはない。ほとんど物置扱い。ほか、父さんが仕事で人を家に呼ばなくちゃ行けないときに使ったり、大学に用があるときに寄ってる程度」
「藤山にはお客様を呼ばないの?」
「セキュリティの関係で難しいのと、煩わしい仕事は家に持ち込まないのが父さんのポリシー」
「なんだか涼先生らしいね」
そんな話をしているとインターホンが鳴った。
「インターホンは普通に鳴るのね?」
「っていうか、普通の家なんだけど……」
「え、これは普通とは言わないと思う。だって、玄関まで何メートルあるの?」
ツカサは少し考え、
「そこの玄関なら五、六メートル。ロビーの玄関は――それでも、じーさんちのほうが玄関まで遠い」
「あそこと比べたらだめだと思う。だって、比較するものがすでに規格外……」
そんな会話をしているともう一度インターホンが鳴った。けれども、さっきとは違う音だ。
不思議に思って首を傾げると、
「さっきのはロビーの玄関で鳴らしたインターホン。今のは居住区画入口にあるインターホン。コンシェルジュはそこまで入ってこられる仕様。出てくるから適当に座ってて」
そう言うとツカサはカウンターの椅子を引いてくれ、足早にリビングを出て行った。
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