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Side View Story 07
05~07 Side 森 01話
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朝食を食べ終えると、秋斗様と唯はすぐに引継ぎ作業を開始した。
俺、今日は休日のはずなんだけど……。
ふたりを横目にそんなことを思う。
ま、家に帰ったところで掃除洗濯片付けて、適当に本を読んだり買出しに出る程度だけだから問題ないといえば問題ないか。
さすがにふたりに仕事をさせておいて自分だけが帰るというわけにはいかない。それが秋斗様の自業自得によるものでも――
……なんだかんだ言っても公私混同の仲になってるよなぁ……。仕方ない、俺も仕事するか。
ダイニングテーブルにノートパソコンを開き、適当に仕事をしつつ資料整理をする。
昼には軽くつまめるものをオーダーし、それを各々のペースで口にしていた。
それにしても、秋斗様の食べる分量は少なすぎる。コーヒーではなくハーブティーといった割にはそれにすら手をつけていない。朝食もいつもの分量よりはるかに少なかった。
まぁ、昨日は飲んでいるし胃もたれしてるのかもしれないが、水分塩分ミネラルは摂ってもらわないと困る。あとでポカリでも買ってくるか。
そんなことを考えているときだった。
秋斗様の携帯が鳴り、それに出ると秋斗様の表情が変わった。相手はどうやら湊様らしい。
昨夜の件だろうか……。
傍目に見ているだけでも秋斗様の絶句が目立つ。
電話を切ったあとは放心状態に近いものがあり、咳き込んだかと思ったら大量の血を吐き出した。
「秋斗様っっっ」
「秋斗さんっっっ」
咄嗟に顔を逸らしてくださったおかげでパソコンは無事だが、当たり前のごとく秋斗様は無事とは言いがたい。吐血した分量もかなりのものだ。
傾いた秋斗さ様の身体を唯が支え、椅子から転倒することは避けられた。
携帯から消防へ連絡を入れているとき、部屋のインターホンが鳴り急いでそれに出ると須藤さんが立っていた。
「少々気になりましたもので、胃薬をお持ちいたしました」
「すみません、ちょっと中に入ってもらってもいいですか?」
有無を言わせず中に引き入れる。そして、目の前に広がる光景に驚いたのか、須藤さんは言葉に詰まる。しかし次の瞬間には唯に指示を出していた。
唯の代わりに秋斗様を支えると、
「若槻、オーナーに連絡を」
あ……静様に連絡を入れることなんて俺はすっかり抜け落ちていた。
「秋斗様の血液がRHマイナスABであることはご存知ですか?」
須藤さんに訊かれて知っている旨を伝えると、秋斗様は二度目の吐血をした。
秋斗様は意識が朦朧としているのか、苦しそうという印象はない。
「この分量を吐血したとなれば、輸血の恐れが出てきます。その際には藤宮病院に搬送されたほうが良いでしょう。それでしたら、オーナーから連絡を入れていただくのが一番かと思います」
須藤さんは血まみれになった秋斗様の顔や胸の当たりを白いナプキンで拭き始めた。
唯の連絡が終わると、間もなくして静様が部屋に入ってきた。
秋斗様を見て携帯を手に取る。
「私だ。――今は手短に済ませる。秋斗が吐血して倒れた。意識はほぼないものと思われる。救急車で搬送の際には藤宮病院を指定する。あとは病院サイドでどうにかしてくれ。吐血の分量はかなり多い。もしかしたら輸血が必要になるかもしれない。楓、あとは任せたからな」
それだけを伝えるとすぐに切った。
少し先のほうで救急車のサイレンが聞こえてきたものの、プツリと消えてなくなる。
「ホテルの裏口に救急車をつけています。誰かに誘導を頼めますか?」
静様に申し出ると、「園田に行かせる」と再度携帯を耳に当てた。
「緊急事態だ。裏口に救急車が着く。それを従業員用のエレベーターから若槻の部屋まで誘導してくれ」
その通達から五分と経たないうちに救急隊が入ってきて、簡単な問診を済ませるとすぐに搬送が始まった。
「付き添われる方は?」
「自分が」
と名乗り出る。
「唯、気になるかもしれないが随時連絡は入れるから。今日一日はここで仕事をしててくれ」
「了解です」
「若槻くん、すぐにクリーンスタッフ呼ぶから、まずい資料だけは片付けてね」
園田さんが若槻に声をかけるのを見て、ホテルのことはホテルの人間に任せればいい。そう思った。
とりあえずは秋斗様だ――
「出ますっ」
救急隊の言葉を受けて部屋を出た。
裏口までの誘導は静様が直々に申し出てくれ、従業員用のエレベーターで地下まで降りた。
そのまま救急車に乗り病院に着くと、救急車の乗り付け口には楓様ともうひとりの医師、それから数人の看護師が待機していた。
秋斗様が処置室に運び込まれたあと、俺は廊下の長椅子に座りこんだ。
「胃潰瘍か十二指腸潰瘍か?」
吐血を見て素人が考えられるのはそのふたつくらいなものだ。しかし、秋斗様はそんなにも繊細な人だっただろうか……。
どれくらいしたころか、処置室から楓様が出ていらした。
「秋斗様は……」
「典型的な胃潰瘍だと思われます。出血はどのくらいでしたか?」
「吐血は三回。そこら中が血だらけでした」
「そうですか。手術は明朝に決まりました。このあとは十階の病室へ移動して輸血パックが届きしだい輸血を開始します。なので、私たちは先に病室へ移動しましょう」
楓様が先に立ち、厳重なセキュリティが敷かれた十階へと向かった。
十階はそれまでの病院の様相とは異なっていた。
どこかホテルのような趣がある。
「ところで、ここのところ秋斗の体調に変化はありましたか?」
尋ねられて考える。
「いえ……。私が知る限りでは昨日までは変わりなくお過ごしでした。ただ、普段からコーヒーを飲みすぎな感は否めませんし、アルコールもお飲みになられます。あとは……翠葉お嬢様のことを気にされていたようです。正直、昨夜楓様からご連絡があったあとは、真っ青でいらっしゃいました」
「……それが原因か。ま、自業自得なんですがね」
楓様はため息をつく。
「普段はなんでもそつなくこなすくせに、こんな局面で身体に響かせるなんて、社会人失格です」
楓様は容赦のないお言葉を口にされる。
俺、もしかして秋斗様に甘くなってきているのだろうか……。
「しばらく、仕事面でも私生活でもお世話になると思います。すみませんが、どうぞよろしくお願いいたします」
「いえ、私の仕事は秋斗様に関する全般と社長に申し付かっておりますので……」
「さすが斎さん……。人選において何もかもが適切だ」
顔を微妙に逸らしつつ、そんなことを口にした。
「じきに運ばれてきます。あ、そうだ……念のために蔵元さんの携帯の番号をうかがってもよろしいですか?」
「はい、かまいません」
胸元から名刺を取り出し、それを差し出した。
「では、またあとで顔を出します。何かあればナースコールを押してください」
楓様が出ていかれて数分すると、看護師二名に付き添われた意識不明の秋斗様が運び込まれてきた。
俺、今日は休日のはずなんだけど……。
ふたりを横目にそんなことを思う。
ま、家に帰ったところで掃除洗濯片付けて、適当に本を読んだり買出しに出る程度だけだから問題ないといえば問題ないか。
さすがにふたりに仕事をさせておいて自分だけが帰るというわけにはいかない。それが秋斗様の自業自得によるものでも――
……なんだかんだ言っても公私混同の仲になってるよなぁ……。仕方ない、俺も仕事するか。
ダイニングテーブルにノートパソコンを開き、適当に仕事をしつつ資料整理をする。
昼には軽くつまめるものをオーダーし、それを各々のペースで口にしていた。
それにしても、秋斗様の食べる分量は少なすぎる。コーヒーではなくハーブティーといった割にはそれにすら手をつけていない。朝食もいつもの分量よりはるかに少なかった。
まぁ、昨日は飲んでいるし胃もたれしてるのかもしれないが、水分塩分ミネラルは摂ってもらわないと困る。あとでポカリでも買ってくるか。
そんなことを考えているときだった。
秋斗様の携帯が鳴り、それに出ると秋斗様の表情が変わった。相手はどうやら湊様らしい。
昨夜の件だろうか……。
傍目に見ているだけでも秋斗様の絶句が目立つ。
電話を切ったあとは放心状態に近いものがあり、咳き込んだかと思ったら大量の血を吐き出した。
「秋斗様っっっ」
「秋斗さんっっっ」
咄嗟に顔を逸らしてくださったおかげでパソコンは無事だが、当たり前のごとく秋斗様は無事とは言いがたい。吐血した分量もかなりのものだ。
傾いた秋斗さ様の身体を唯が支え、椅子から転倒することは避けられた。
携帯から消防へ連絡を入れているとき、部屋のインターホンが鳴り急いでそれに出ると須藤さんが立っていた。
「少々気になりましたもので、胃薬をお持ちいたしました」
「すみません、ちょっと中に入ってもらってもいいですか?」
有無を言わせず中に引き入れる。そして、目の前に広がる光景に驚いたのか、須藤さんは言葉に詰まる。しかし次の瞬間には唯に指示を出していた。
唯の代わりに秋斗様を支えると、
「若槻、オーナーに連絡を」
あ……静様に連絡を入れることなんて俺はすっかり抜け落ちていた。
「秋斗様の血液がRHマイナスABであることはご存知ですか?」
須藤さんに訊かれて知っている旨を伝えると、秋斗様は二度目の吐血をした。
秋斗様は意識が朦朧としているのか、苦しそうという印象はない。
「この分量を吐血したとなれば、輸血の恐れが出てきます。その際には藤宮病院に搬送されたほうが良いでしょう。それでしたら、オーナーから連絡を入れていただくのが一番かと思います」
須藤さんは血まみれになった秋斗様の顔や胸の当たりを白いナプキンで拭き始めた。
唯の連絡が終わると、間もなくして静様が部屋に入ってきた。
秋斗様を見て携帯を手に取る。
「私だ。――今は手短に済ませる。秋斗が吐血して倒れた。意識はほぼないものと思われる。救急車で搬送の際には藤宮病院を指定する。あとは病院サイドでどうにかしてくれ。吐血の分量はかなり多い。もしかしたら輸血が必要になるかもしれない。楓、あとは任せたからな」
それだけを伝えるとすぐに切った。
少し先のほうで救急車のサイレンが聞こえてきたものの、プツリと消えてなくなる。
「ホテルの裏口に救急車をつけています。誰かに誘導を頼めますか?」
静様に申し出ると、「園田に行かせる」と再度携帯を耳に当てた。
「緊急事態だ。裏口に救急車が着く。それを従業員用のエレベーターから若槻の部屋まで誘導してくれ」
その通達から五分と経たないうちに救急隊が入ってきて、簡単な問診を済ませるとすぐに搬送が始まった。
「付き添われる方は?」
「自分が」
と名乗り出る。
「唯、気になるかもしれないが随時連絡は入れるから。今日一日はここで仕事をしててくれ」
「了解です」
「若槻くん、すぐにクリーンスタッフ呼ぶから、まずい資料だけは片付けてね」
園田さんが若槻に声をかけるのを見て、ホテルのことはホテルの人間に任せればいい。そう思った。
とりあえずは秋斗様だ――
「出ますっ」
救急隊の言葉を受けて部屋を出た。
裏口までの誘導は静様が直々に申し出てくれ、従業員用のエレベーターで地下まで降りた。
そのまま救急車に乗り病院に着くと、救急車の乗り付け口には楓様ともうひとりの医師、それから数人の看護師が待機していた。
秋斗様が処置室に運び込まれたあと、俺は廊下の長椅子に座りこんだ。
「胃潰瘍か十二指腸潰瘍か?」
吐血を見て素人が考えられるのはそのふたつくらいなものだ。しかし、秋斗様はそんなにも繊細な人だっただろうか……。
どれくらいしたころか、処置室から楓様が出ていらした。
「秋斗様は……」
「典型的な胃潰瘍だと思われます。出血はどのくらいでしたか?」
「吐血は三回。そこら中が血だらけでした」
「そうですか。手術は明朝に決まりました。このあとは十階の病室へ移動して輸血パックが届きしだい輸血を開始します。なので、私たちは先に病室へ移動しましょう」
楓様が先に立ち、厳重なセキュリティが敷かれた十階へと向かった。
十階はそれまでの病院の様相とは異なっていた。
どこかホテルのような趣がある。
「ところで、ここのところ秋斗の体調に変化はありましたか?」
尋ねられて考える。
「いえ……。私が知る限りでは昨日までは変わりなくお過ごしでした。ただ、普段からコーヒーを飲みすぎな感は否めませんし、アルコールもお飲みになられます。あとは……翠葉お嬢様のことを気にされていたようです。正直、昨夜楓様からご連絡があったあとは、真っ青でいらっしゃいました」
「……それが原因か。ま、自業自得なんですがね」
楓様はため息をつく。
「普段はなんでもそつなくこなすくせに、こんな局面で身体に響かせるなんて、社会人失格です」
楓様は容赦のないお言葉を口にされる。
俺、もしかして秋斗様に甘くなってきているのだろうか……。
「しばらく、仕事面でも私生活でもお世話になると思います。すみませんが、どうぞよろしくお願いいたします」
「いえ、私の仕事は秋斗様に関する全般と社長に申し付かっておりますので……」
「さすが斎さん……。人選において何もかもが適切だ」
顔を微妙に逸らしつつ、そんなことを口にした。
「じきに運ばれてきます。あ、そうだ……念のために蔵元さんの携帯の番号をうかがってもよろしいですか?」
「はい、かまいません」
胸元から名刺を取り出し、それを差し出した。
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