光のもとで1

葉野りるは

文字の大きさ
578 / 1,060
Side View Story 11

22 Side 美乃里 02話

しおりを挟む
 部室棟を出ると、次は桜林館のテラスへ移動する。
「それいつの話?」
「確か球技大会明けの月曜日よ」
「和総の話だと、球技大会の日から今日まで何回も呼び出し食らってるみたいなんだよね」
 情報ソースが翠葉ちゃんじゃなくて和総な時点で色々と謎……。
「翠葉ちゃんってそういうこと言わないの?」
「桃や飛鳥には言ってるのかと思ってたんだけど、訊いたら知らないって言ってた。桃は生徒会経由で知ってはいるみたいだけど、回数までは把握してなかったなぁ……」
 それはそれは……間違いなく、桃華は今ごろヤキモキしていることだろう。飛鳥ならば、呼び出した女子たちにはらわた煮えくり返っているに違いない。
 でも、いつも近くにいる桃華たちが気づかないくらい巧妙に呼び出されているわけで、それでも風紀委員がリークできる程度ならまだ大丈夫かしら、とも思う。
「何? うちのクラスの姫の話?」
 そう言って階段を上がってきたのは和総だった。
 同じくB組の圭太、洋介も一緒。さらには千里も。
「呼び出しのカウントは?」
 訊けば三十日現在で十一回十四人らしい。
「ちょっとそれ……かなり頻度高くない?」
 テラスの椅子に座り、
「う~ん……頻度は高め。でも、人数はひとりかふたりって感じかな」
 うちの学校は呼び出しなどをする際にも団体行動というものにはあまり縁がない。前に聞いた話だと、多くても四、五人というところらしい。
「なんで単独で行くんだろ?」
 理美が不思議そうに口にすると、圭太が答えた。
「目立つからじゃん?」
 率直な感想だったと思う。
「確かに目立つよな。翠葉っちかわいいし、歩いているだけでも人目引くし」
 洋介も便乗する。
「たぶん、それが理由だよ」
 と言ったのは和総。
「あの子囲んでたら呼び出し以外の何にも見えないじゃん」
 確かにねぇ……。
「で? 風紀委員は何やってるわけ?」
 千里が突っ込んだ。
 いつもおちゃらけている癖に、珍しく真面目な顔つきだ。
「遊んでるわけじゃないよ。ちゃんとマークはしてるし、危ないと思えば止めにも入る」
 和総は答えつつもすっきりしない表情でテーブルに突っ伏した。
「たださぁ……俺らが動くの、御園生ちゃんが嫌がんだよねぇ……」
 みんながみんな、その言葉の真意を知りたがっている今、突っ伏しているなんて許されない。
 ベリ、とテーブルから引き剥がし、
「どういうことっ!?」
「はいはい、話すから……。俺たちは『呼び出し』っていったら結構きついことを言われて泣いちゃうとか、それが怖くて学校に来れなくなっちゃうとか、そっちを考えるわけだよ。そうじゃなければ売られたケンカをすべてお買い上げしちゃう勝気な問題児」
 和総は具体的に話し始める。
「でもさ、御園生ちゃんはそのどっちでもないんだよね。まず、呼び出しくらっても『なんでしょう?』って感じで普通についていっちゃうし、大声出されてびくっとはするけど、それで泣いたりもしない。かといって、言われていることに食って掛かるわけでもなく、最近だと藤宮先輩との架け橋になろうとしている気すらする」
「……ねぇ、質問」
 洋介が手を上げた。
「どうぞ」
「翠葉っちってさ、藤宮先輩が自分のことを好きってわかってないの?」
 いや、誰もが訊きたいことだと思うわ。
「大っ変残念ながら、今のところは気づいてない模様」
 苦笑交じりに和総が答える。と、千里が大口を開けて笑い出した。
「くくくっっっ――いい気味っ! あんだけ行動に移していて気づいてないって、最高っ! いやぁ、生徒会で見ててもそんな気はしてたんだよねぇ~」
 上機嫌で、「御園生さん最高っ!」といえば理美が一言。
「自分なんてクラスと部活しか覚えてもらえなかったくせに」
 面白くなさそうに、ぷい、と千里とは反対側に顔を向けた。こんなことは日常茶飯事。
 みんな理美が千里のことを好きなのは知っているし、千里がそれを取り合わないのも知っている。それでも理美は千里が好きなのだ。
 もう今となってはそれを突っ込む人間など周りにはいない。そのくらい周知されているわけで……。
「翠葉ちゃんってさ、誰か好きな人いないのかね?」
 圭太が口を開く。
「もしさ、もし自分が藤宮先輩を好きになったら両思いだけど、架け橋はできなくなるじゃん?」
「圭太、それ、御園生ちゃんには高度すぎる問題……」
 和総は再びテーブルに突っ伏した。
「あの子さ、やっぱ変だと思うんだよ。訊かれたことや言われたことに対してなんだけど、何に対しても事実しか話さないんだ」
 またしても端的な言い方するわね……。
 私の視線が痛かったのか、
「美乃里さん怖いっす……」
「じゃ、その先が気になる物言い改めなさいよ」
「スンマセン……。いやさ、呼び出されて自分の噂の話をされれば言われたことに対しての否定はするわけ。そこまで話のきっかけができればほかの噂の否定だってできそうなものだけど、言わないんだ。藤宮先輩のことを言われればそのことだけを答える。なんかよくわかんない子なんだよね。今、言われてる噂なんて全部嘘で全否定したいはずなのにさ」
「「「わかんねぇな」」」
「わかんない」
「わからないわね」
 私たちの反応に、「だろ?」とでも言うように和総は続きを話し始める。
「でさ、訊いてみたわけですよ。お嬢ちゃんどうしてだい? と。そしたら、『噂には尾ひれがつくから訊かれたことには答えるけれど、それ以上を口にする必要はない。自分から話を大きくする必要はないでしょ?』だって」
 はぁ、なんていうか、何も考えていないようで、一応は彼女なりに考えているらしい。
 どうもすっきり、という具合には納得ができない。でも、彼女の中に何かしらの芯があるのはわかる。
「本当に不思議な子よね」
 なんとなく私が口にした言葉に、その場の面々が頷いた。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

光のもとで2

葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、 新たな気持ちで新学期を迎える。 好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。 少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。 それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。 この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。 何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい―― (10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん
青春
「ほんと胸がニセモノで良かったな。貧乳バンザイ!」 「離して洋子! じゃなきゃあのバカの頭をかち割れないっ!」 「お、落ちついてメイちゃんっ!? そんなバットで殴ったら死んじゃう!? オオカミくんが死んじゃうよ!?」 県立森実高校には2人の美の「女神」がいる。 頭脳明晰、容姿端麗、誰に対しても優しい聖女のような性格に、誰もが憧れる生徒会長と、天は二物を与えずという言葉に真正面から喧嘩を売って完膚なきまでに完勝している完全無敵の双子姉妹。 その名も『古羊姉妹』 本来であれば彼女の視界にすら入らないはずの少年Bである大神士狼のようなロマンティックゲス野郎とは、縁もゆかりもない女の子のはずだった。 ――士狼が彼女たちを不審者から助ける、その日までは。 そして『その日』は突然やってきた。 ある日、夜遊びで帰りが遅くなった士狼が急いで家へ帰ろうとすると、古羊姉妹がナイフを持った不審者に襲われている場面に遭遇したのだ。 助け出そうと駆け出すも、古羊姉妹の妹君である『古羊洋子』は助けることに成功したが、姉君であり『古羊芽衣』は不審者に胸元をザックリ斬りつけられてしまう。 何とか不審者を撃退し、急いで応急処置をしようと士狼は芽衣の身体を抱き上げた……その時だった! ――彼女の胸元から冗談みたいにバカデカい胸パッドが転げ落ちたのは。 そう、彼女は嘘で塗り固められた虚乳(きょにゅう)の持ち主だったのだ! 意識を取り戻した芽衣(Aカップ)は【乙女の秘密】を知られたことに発狂し、士狼を亡き者にするべく、その場で士狼に襲い掛かる。 士狼は洋子の協力もあり、何とか逃げることには成功するが翌日、芽衣の策略にハマり生徒会に強制入部させられる事に。 こうして古羊芽衣の無理難題を解決する大神士狼の受難の日々が始まった。 が、この時の古羊姉妹はまだ知らなかったのだ。 彼の蜂蜜のように甘い優しさが自分たち姉妹をどんどん狂わせていくことに。 ※【カクヨム】にて編掲載中。【ネオページ】にて序盤のみお試し掲載中。【Nolaノベル】【Tales】にて完全版を公開中。 イラスト担当:さんさん

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...