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第十三章 紅葉祭
05話
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高校校門をくぐると実行委員の人たちに声をかけられた。その中には香乃子ちゃんや空太くんの姿もある。
私に気づいた香乃子ちゃんは遠くからブンブンと手を振ってくれ、私も同じように手を振り返しながら仮設テント付近を通り過ぎた。
桜並木を抜けた先にある一、二年棟の前にはすでにほかのメンバーが揃っていた。
「わっ、遅刻かなっ!?」
慌てて時計を見たけれど、集合時間の二分前だった。
「マンション、もう少し早く出たほうが良かったかな?」
なんとなしに口にすると、
「今日は物珍しいものが入り口で待ち受けてたからじゃん?」
海斗くんに笑われ、つい先ほど通ってきたところを思い出す。
いつもなら何も気にせず通り過ぎる場所をあれこれ観察しながら歩いてくると、思わぬタイムロスが生じるらしい。
明日は気をつけなくちゃ……。
「じゃ、今日の流れをざっと話すよー」
そんなふうに仕切るのは久先輩。
一応なんて言ったら失礼だけど、やっぱり会長なんだな、と思った瞬間。
久先輩と茜先輩は、紅葉祭をもって生徒会を引退する。
久先輩との出逢いは春庭園。スズランを撮っているときに声をかけてくれ、写真部へ誘ってくれた人。
茜先輩は始めて人と音を奏でる楽しさを教えてくれた人。困ったときに声をかけてくれることが多く、心を守ってくれたり、時には背中を押してくれる人だった。
ふたりとも、「生徒会で待ってる」と私をここへ招き入れてくれた人。
その人たちが引退してしまうのは寂しい。
まだ卒業してしまうわけではないのに、妙にしんみりとしてしまう。
生徒会でのミーティングは十五分かからずに終わった。
流れは昨日のうちに確認してあったし、紅葉祭がスタートしていない現時点で何かが起こることはない。
「さすが自慢のメンバー! 問題はなさそうだね」
「こんなところで躓いていたら先が続かない」
久先輩の言葉をばっさりと斬り捨てるのはツカサ。
こんなことにも慣れっこなメンバーはクスクスと笑っている。
その中、桃華さんだけが「この男は」と怪訝そうな表情をしていた。
このメンバーが好きだな、と思うのに、このメンバーで学校行事を運営執行するのはこれで最後なのね。これからお祭りが始まるのに、なんだか寂しい。
そんなことを考えていると、一際明るい声が降ってきた。
「実行委員ご一行のお出ましだ!」
背の高い優太先輩が私の背後を指差す。
桜並木を振り返ると、さっきまで校門で作業していた人たちがこちらへ向かってぞろぞろと歩いてくるところだった。
人が集団で歩くとだらだらしているように見えることが多いけれど、そんな印象はまったく受けない。
私たちの視線に気づくと、実行委員長の号令でみんなが走りだす。
「別に走ってこなくてもよかったのに。柴内ちゃんてば相変わらず人を待たすの苦手だよねー?」
久先輩が三年の実行委員長にウヒヒ、と笑って軽くジャブを入れると、柴内ちゃんと呼ばれた先輩は、
「いやぁ、なんとなく……。生徒会ご一行をお待たせするのは肝が冷えると申しましょうかね」
などと、少しおどけた調子で話す。
そんなふたりはどうあっても組織の長で、言葉少なにも長らしい会話になる。
「守備は?」
「上々。何も問題なく滞りなく進んでる。今日に関しては身内客ばかりだから、とくに問題は起きないと思ってるけど?」
「それもそっか。ま、申し送り関連はきっちりやっていこうね」
「心得てますとも、会長殿」
ふたりの会話が終わると、
「とくに確認事項もないみたいだから、インカムの配布するよー。各学年代表取りにきて」
会長の言葉に朝陽先輩が反応し、用意されていたボックスの蓋を開けた。
私たち生徒会の分はあらかじめ取り分けられていたものをツカサが配り、簡単な説明を口にした。
渡されたのはワイヤレスイヤホンとカラビナがついているリモコン。
どうやら簡単な操作でいくつかのチャンネルを使いわけることができるらしい。
「イヤホンはしっかりと耳にはめておけば基本的には外れない。内臓バッテリーで四十八時間はもつ仕様だから、そのあたりは考えなくていい」
中等部でも使われているものなのか、海斗くんや桃華さん、サザナミくんは慣れた手つきで装着する。
聞くところによると、このインカムは藤宮警備で使っているものと同じもので、リモコンのみを生徒が使いやすいように改良されているという。
「生徒会、実行委員、クラス委員、風紀委員では使うチャンネルが異なる。それぞれのチャンネルが記されたプリントを配布するから、それを参考にするように」
合同ミーティングはミーティングというよりは、インカムの使い方説明会と化していた。
実行委員側の説明を終えた朝陽先輩が海斗くんにひとつのインカムセットを渡す。
「これ、佐野くんに渡して使い方教えてあげて」
「了解っす!」
考えてみたら佐野くんがこの場にいないのは不自然だった。
肩書き的にはいないことが正解だけれど、佐野くんは肩書きとかそういうものは抜きで紅葉祭の中枢にいる人だから。
「海斗くん、佐野くんは?」
海斗くんはにっ、と笑ってグラウンドを指差した。
「えっ……今日も?」
「そっ、佐野が部活休みなのは試験期間と年末年始くらいじゃね?」
唖然とする私に、
「特待生って大変だよね」
と、苦笑して見せたのは朝陽先輩だった。
私に気づいた香乃子ちゃんは遠くからブンブンと手を振ってくれ、私も同じように手を振り返しながら仮設テント付近を通り過ぎた。
桜並木を抜けた先にある一、二年棟の前にはすでにほかのメンバーが揃っていた。
「わっ、遅刻かなっ!?」
慌てて時計を見たけれど、集合時間の二分前だった。
「マンション、もう少し早く出たほうが良かったかな?」
なんとなしに口にすると、
「今日は物珍しいものが入り口で待ち受けてたからじゃん?」
海斗くんに笑われ、つい先ほど通ってきたところを思い出す。
いつもなら何も気にせず通り過ぎる場所をあれこれ観察しながら歩いてくると、思わぬタイムロスが生じるらしい。
明日は気をつけなくちゃ……。
「じゃ、今日の流れをざっと話すよー」
そんなふうに仕切るのは久先輩。
一応なんて言ったら失礼だけど、やっぱり会長なんだな、と思った瞬間。
久先輩と茜先輩は、紅葉祭をもって生徒会を引退する。
久先輩との出逢いは春庭園。スズランを撮っているときに声をかけてくれ、写真部へ誘ってくれた人。
茜先輩は始めて人と音を奏でる楽しさを教えてくれた人。困ったときに声をかけてくれることが多く、心を守ってくれたり、時には背中を押してくれる人だった。
ふたりとも、「生徒会で待ってる」と私をここへ招き入れてくれた人。
その人たちが引退してしまうのは寂しい。
まだ卒業してしまうわけではないのに、妙にしんみりとしてしまう。
生徒会でのミーティングは十五分かからずに終わった。
流れは昨日のうちに確認してあったし、紅葉祭がスタートしていない現時点で何かが起こることはない。
「さすが自慢のメンバー! 問題はなさそうだね」
「こんなところで躓いていたら先が続かない」
久先輩の言葉をばっさりと斬り捨てるのはツカサ。
こんなことにも慣れっこなメンバーはクスクスと笑っている。
その中、桃華さんだけが「この男は」と怪訝そうな表情をしていた。
このメンバーが好きだな、と思うのに、このメンバーで学校行事を運営執行するのはこれで最後なのね。これからお祭りが始まるのに、なんだか寂しい。
そんなことを考えていると、一際明るい声が降ってきた。
「実行委員ご一行のお出ましだ!」
背の高い優太先輩が私の背後を指差す。
桜並木を振り返ると、さっきまで校門で作業していた人たちがこちらへ向かってぞろぞろと歩いてくるところだった。
人が集団で歩くとだらだらしているように見えることが多いけれど、そんな印象はまったく受けない。
私たちの視線に気づくと、実行委員長の号令でみんなが走りだす。
「別に走ってこなくてもよかったのに。柴内ちゃんてば相変わらず人を待たすの苦手だよねー?」
久先輩が三年の実行委員長にウヒヒ、と笑って軽くジャブを入れると、柴内ちゃんと呼ばれた先輩は、
「いやぁ、なんとなく……。生徒会ご一行をお待たせするのは肝が冷えると申しましょうかね」
などと、少しおどけた調子で話す。
そんなふたりはどうあっても組織の長で、言葉少なにも長らしい会話になる。
「守備は?」
「上々。何も問題なく滞りなく進んでる。今日に関しては身内客ばかりだから、とくに問題は起きないと思ってるけど?」
「それもそっか。ま、申し送り関連はきっちりやっていこうね」
「心得てますとも、会長殿」
ふたりの会話が終わると、
「とくに確認事項もないみたいだから、インカムの配布するよー。各学年代表取りにきて」
会長の言葉に朝陽先輩が反応し、用意されていたボックスの蓋を開けた。
私たち生徒会の分はあらかじめ取り分けられていたものをツカサが配り、簡単な説明を口にした。
渡されたのはワイヤレスイヤホンとカラビナがついているリモコン。
どうやら簡単な操作でいくつかのチャンネルを使いわけることができるらしい。
「イヤホンはしっかりと耳にはめておけば基本的には外れない。内臓バッテリーで四十八時間はもつ仕様だから、そのあたりは考えなくていい」
中等部でも使われているものなのか、海斗くんや桃華さん、サザナミくんは慣れた手つきで装着する。
聞くところによると、このインカムは藤宮警備で使っているものと同じもので、リモコンのみを生徒が使いやすいように改良されているという。
「生徒会、実行委員、クラス委員、風紀委員では使うチャンネルが異なる。それぞれのチャンネルが記されたプリントを配布するから、それを参考にするように」
合同ミーティングはミーティングというよりは、インカムの使い方説明会と化していた。
実行委員側の説明を終えた朝陽先輩が海斗くんにひとつのインカムセットを渡す。
「これ、佐野くんに渡して使い方教えてあげて」
「了解っす!」
考えてみたら佐野くんがこの場にいないのは不自然だった。
肩書き的にはいないことが正解だけれど、佐野くんは肩書きとかそういうものは抜きで紅葉祭の中枢にいる人だから。
「海斗くん、佐野くんは?」
海斗くんはにっ、と笑ってグラウンドを指差した。
「えっ……今日も?」
「そっ、佐野が部活休みなのは試験期間と年末年始くらいじゃね?」
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「特待生って大変だよね」
と、苦笑して見せたのは朝陽先輩だった。
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