主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい

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8話

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もしかして、かなりのお人好しなんじゃ……と認識を改めざるを得なかった有明会長と語り合う昼休みを何度か経て、今日。いつもと違ったのは、あの会長が起きて僕を待ってたことでした……。
正直、かえって怖いものがある。
あともう一つ。語り合うはさすがに語弊があるかも。主張によると寝てるらしい相手に僕が一方的に話しかけて、それにいい加減な相槌を返してくるのが会長の役目。基本ダルそうにあしらわれてたものの、邪険に追い払われるなんてことは一度もなかった。だからこそよぎったお人好し説。
そんな会長が、今日はいつもの定位置に起きて座ってた。しかも僕を見ておざなりにでも片手を上げるとか……。
どうした、なにがあった……なんですけど。近づく前にすでにパニックです。
「…………なんかありました?」
一歩一歩を恐る恐る踏み出し、辿り着いた頃には冷や汗が滲んでた。
「なんかってなんだ」
「いえ。あの……今まで寝てるところにお邪魔してましたし」
「なるほど。常々邪魔だと思ってたのは伝わってたんだな」
「……あと、なんか機嫌がいい気がする」
あー……。とかその人に似合わない自嘲的な一声を落とし、苦笑いみたいな笑みを浮かべる。
「多分、可愛い可愛い恋人ができたからだろうな」
「え。会長、もう一度……。恋人?!できたんですか?!」
聞き間違い?!とかグルグルしながら突然声を張り上げた僕を見て、今度こそ心底愉快そうに笑った会長が柔らかく目を眇めてみせた。
「なんだよ、その反応。おかしいか?」
「香純くん?」
若干食い気味に尋ねる。
ここにきてまさかの??もしそうだったら、裏でどんな展開が繰り広げられてたんだよって話でしょ。言ってよ。経過を逐一詳しく報告してくれよ。ほんとに!!
会長が着てるブレザーの襟を掴まんばかりに押し迫った僕の勢いになのか、ケラケラ腹を抱えて笑い出したその人が。刹那、長く息を吐き……
「残念ながら違う」
普段、勝気に吊り上がってるその眉が一瞬だけハの字になった。
「じゃあ……、だって……香純くんは」
「フラれた」
「え゛。なんで、いきなり。全然、そんな感じなかったのに」
「昨日な。お前が毎日あんまりしつこく言ってくるから、じゃあもう直接聞くかと思ってな」
「は??僕、なんか言いました?」
「なんで言った本人が自覚ナシなんだよ。聞いてもねぇのに、あんだけ香純と陽加の仲の良さアピールしてきやがったくせに」
「あー……。そ、それは……すみません。……余計なことを……。かなり気を使ってたつもりだったんですけど」
「まあいい。怒ってねぇよ。そろそろハッキリさせときたかったってのも本当だしな。タイミング的にちょうど良かった」
「……あの。言い訳がましいんですが、別に……。まったく会長を応援してなかったわけじゃなくて……。いや、香純くんの幸せがやっぱり一番最優先なんですけど……その」
「怒ってないとは言ったけど、今さら言い訳されると逆に腹立つな」
「それもそうですねー」
「おい。お前、さっきからふざけてんのか?」
怒ったような口調で言いはするものの声が笑ってる。
「ふざけてはないですけど、ほんとにちょっと残念には思ってるっていうか……。香純くんにだけ超過保護な会長を見るの好きだったんで。もうちょっと見たかった」
「相手は違うが、過保護なオレが見たいんだったらいつでも見に来りゃいいだろ」
「付き合って1日で、もうそこまで言い切れるくらい好きなんですか??もしかして、会長の方から??」
「オレをなんだと思ってんだ。向こうからだよ。香純にフラれたあとに告られて、悪い気がしなかったからオーケーした。それだけ」
「うわぁ……。フラれてすぐ次に行くとか、最低すぎません?」
「だからお前に言われる筋合いはねぇよ。ほんと一言多いな、お前」
「まあ、会長が幸せなら。全然いいです」
幸せ。っていうより、カスミンに余計な気を使わせないためとかいう可能性も捨てきれず、内心複雑だけど。
「……時々不意打ちでデレるよな。一瞬可愛く見えるのがなによりムカつく」
「僕、見た目だけはとっても可愛いんで」
「そうだな。それは認めてやる」
「……なんか。認められた。……そういう会長も、いきなりデレるタイプですよね」
「オレに対してデレって形容使うんじゃねぇ。聞かされてる自分が気持ち悪ぃ」
「それも含めてツンデレってヤツなんじゃ」
「ツンデレっつったら、愁だろ」
核心には触れないように、ダラダラ実のない会話を続けていたら……。
今まで一度も呼ばれたことのない僕の名前がその人の声で紡がれたため、緊張で刹那身体が強張った。
「…………名前、知ってたんだ」
意外。ずっと、お前呼ばわりされてたから今さら知る気もないんだと思ってたのに。
「うちの生徒だ。そりゃ知ってる」
テレくさそうにそっぽを向いて呟いた会長の頬がかすかに赤く染まってるように見えて、ちょっと笑ってしまう。
……やっぱ、ツンデレ。だし、なんか可愛い……。
稀に見るその反応がおかしくて、クスクスしつこく笑っているとかなり手荒く頭を叩かれた。


 ♢    ♢    ♢    ♢    ♢


カスミンと過ごす放課後の夢のような時間は続いてるし、特定の彼氏持ちになった分回数は減ったけど、会長の昼寝場所に通う日課も変わらない。
まあ、あまりに頻繁に通いすぎて「……お前、今度から金取るからな」って言われた時は、さすがに冗談だろうとは思いつつも一先ず真面目に「……じゃあ、会長の言うことなんでも一つ聞いてあげます」とか返してた僕がいた。
それに寄越されたセリフは心底めんどくさそうな「……あ~??」で。
どうでもよさそうに手招きされて、「それなら、今日の対価は膝枕だな。そこに座れ」って命令された時点で丁重に辞退させていただくことにした。
だって、まず……会長、彼氏いるじゃん!!でしかないし。誤解されて修羅場に巻き込まれるとか、冗談じゃないって話で。まだ遠目でしか見たことないけど、僕に負けず劣らずちょっと気の強そうなタイプっぽかった……。程度によっては、見苦しいまでのキャットファイトとかが巻き起こりそうな気がする。
この人は絶対、面白がって止めないだろうし。
最近気づいたんだけど、僕が困った顔するとものすごく楽しそうな笑顔を浮かべてますよね……有明会長。
属性が、やたら面倒見のいいドSかなんかなんだと思う。

そんな平穏な日々を送りながらも、まわりの空気とたまに耳にする聞き覚えのあるセリフから、今現在どのルートを進んでいるのかとか、多少は把握できなくもなかったりする。……かなり不確かだけど。
僕が規定通りの行動をとってないせいもあるのか、知ってるストーリーと微妙なズレがあるというか……。所々に軽いバグがあるというか……。
ゲームでは見ることのできなかった裏側。隅々詳細を窺うことができる分、印象が違うだけっていう可能性もなくはないけど。……なんか違うんだよ。

ただ、不確かだとはいえ日付的にみても、おそらく今日あたりがハルカ先輩ルートのイベント発生日だと思われるため、僕はスマホ片手に人気のない校舎裏を突き進んでいた。
ウキウキしすぎてどうにも足裏が地面についてないような浮き立つ感覚があるけど、こればっかりはしょうがない。
だって、このイベントには特別な思い入れがあって……。
……あの、あのね!?なんといってもスチル作画が最高なんですよ!!角度良し、表情良し、雰囲気良し、ラブ度高しでほんとに!!何百回何千回見ても見飽きない。おかげでハルカ先輩ルートは数えきれないほどやり込んだ。
もう、待ち受けにして一生肌身離さず持ち歩いて好きな時に眺めてたいレベル……。
それくらい、僕の中で激推しのイベントだった。
最初は、あのシーンを実写で回収できたらいいなぁ~……程度の願望だったはずが、実際その時が迫ると『なにがなんでも見たいし保存したい』なんて息巻いてる僕がいて、それにつられて歩く速度も上がってく。
ここのところずっとそんなふうに意気込んでた僕は、あの美麗な光景を目撃するのが自分だけとかあまりにもったいない!!なんて感じて、カスミンにフラれたあと、さっさと新しい恋人を作った有明会長をその場に誘ってたりした。
誘った……っていうか。コレコレこういうことがありますから、ここまで来てください。とかバカ正直にぶちまけられるはずもない。
だから、『相談したいことがあるので、北校舎脇の倉庫前で待ってます』なんてメッセージを送ってはみたものの、……むしろ警戒されそうだな。って今気づいた。
ほぼ、告白とかの呼び出しテンプレートだったかも……。
それにプラスして、その時のカスミンの姿を見て会長のカスミン愛が再燃しないとも言い切れなかったが……ほんととにかく誰かと感動を共有したかったんだってば。あの光景を直視したあと、一人で正気を保ってられる気がしないし。
だからこそ、大抵のことを『お前、ほんっっとどうしようもねぇなぁー……』的な顔で見逃し聞き流してくれる会長がいてくれるとありがたいというか。まあ、私欲で巻き込んでる自覚はものすごくある。
イベントが発生する一角が近づくにつれ小走りになってた僕はわずかに乱れた息を整え、近くの茂みに身を隠して周囲を伺った。
ハルカ先輩ルートにある、このイベントに登場するのは3人。カスミンとハルカ先輩はもちろん、そこにちょっと厄介なモブ生徒が一人加わる。そいつが引き起こす一波乱なわけだけど、その時助けに入ったハルカ先輩のかっこよさがほんとヤバかった。軽率にヤバいって言葉が口からこぼれるほどヤバかった。
イベントが起きる時間の詳細はなくて、授業が終わった放課後。少し日が傾き始めてからってことくらいしかわからない。それで念のため早めにきてみたものの、まだ誰の姿もない。
「……あー、でも……」
ハルカ先輩がちゃんと助けてくれるってわかってても、推しが誰かに襲われてる光景って……あんまり進んで見たいものでもないんだよな。画面の外から見てる時でさえ、一周目は思いっきり叫んで隣の部屋の人から怒りの壁ドンされたもん……。
過去に思いを馳せて空笑いをこぼしながら、こっそり偵察にきてた僕の後ろで突然。……耳慣れた声が言った。
「こんなとこでなにしてんだ?」
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