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おまけ
【短編】グランフォード家の新年会11
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イザベラの澄んだ声が、その場に落ちた。
「それで、予定日はいつなの?」
一瞬で空気が凍りつく。
「お、お姉様ったら……! なにを……!」
エマの頬は一瞬で真っ赤に染まり、セイルは目を見開いたまま固まった。
お腹を押さえながらおろおろとイザベラを見つめるエマの姿に、場の空気はさらにざわめいた。
「まぁ!」
マリアベルが手を打ち鳴らした。
「やっぱり! エマが一段と輝いて見えると思ったのよ! なんだそうだったの! おめでとうエマ!」
「お姉様……っ!」
エマが声をあげるも、マリアベルは完全に耳に入っていない。喜びのあまり隣のイザベラと手を取り合ってくるくる回っている。
エドワードが王子様のような煌めく笑顔で、エマの手を取る。
「そうだったのかエマ、どうか身体を大事にして……こんなところに立ったままではいけない、座ってエマ」
流れるような所作で椅子を引く兄に、エマは言葉を失った。
その横で雪は額に手を当て、小さくため息をついた。
「……あぁ、とうとうバレちゃったか……」
「ねぇママ」
無邪気な声が割って入る。ユーリがきょとんとした目で母を見上げていた。
「予定日って、なに?」
「~~っ!!」
エマは顔を覆って俯いてしまった。
マリアベルとイザベラはきらきらと輝く笑みを浮かべて、声を揃えた。
「「家族が増えるのよ」」
その時、エマは気がついた。セイルが何も言わない。
視線を向ければ、夫は呆然と立ち尽くし、まるで時が止まったように動かない。
「……セイル様?」
エマの呼びかけに、全員の視線が伯爵へ集まった。
人形のように佇み、誰よりも放心している。
「え。まさか知らなかったの?」
「そんなはずないでしょ、父親なのに」
「どうかしましたか、伯爵?」
問いが重なる。
その刹那。
突如、セイルの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。
突然のことに誰もがぎょっとする。
ひとしずくを皮切りに、涙は堰を切ったようにはらはらと頬を伝い落ちていった。
「……エマ、本当に?」
「ごめんなさい、じきにお話しようと──」
「……子どもが……」
震える声。エマは駆け寄り、夫の頬をハンカチでそっと拭う。セイルはその手をとらえ、言葉を絞り出した。
「……エマ、ありがとう……こんな幸せがまた訪れるなんて……」
セイルの震える声に、エマも目頭が熱くなる。
そのとき。
「はっはっは! 皆集まってるな! さぁお父様も混ぜてくれ!」
豪快に杯を掲げながら、何も知らないグランフォード公爵が大声で現れた。
酒の匂いを振り撒き、完全に出来上がっている様子。
そんな公爵の手を、セイルががっしりと握りしめた。
「……セ、セイル?」
「公爵、エマに会わせてくださってありがとうございます……本当に、心から」
「お、おう……どうした?」
「貴方は私の恩人です……」
公爵の手を握って離さないセイルに、公爵は困惑する。
普段、何事にも冷静で滅多に感情を見せない男が、涙をこぼして感謝を告げている。
その姿に公爵の胸も思わず熱くなった。
「なんだか分からんが、今日は良い日だ! 皆で飲むぞ!」
豪快な音頭に、会場は一気に賑やかさを取り戻した。
杯が掲げられ、笑い声と音楽が弾ける。
「それにしても、まぁ……」
雪がエマの隣に寄り添い、唇に笑みを浮かべる。
「バレちゃったけど、これはこれで良かったんじゃない?」
「……もう雪ちゃんたら……」
エマは顔を真っ赤にして、うつむいた。
「エマ、大事な時期だわ。無理をせず、幸せだけを抱いて過ごすのよ」
イザベラが優しく囁く。
マリアベルも隣で頷いた。
「そうよ、何かあれば遠慮せずにお姉様を頼りなさい。何もかも粛清してあげるわ」
「……物騒ですね」
姉と兄が悪戯っぽく笑い合う。
イザベラはちらりとセイルに目をやった。
「……あら。伯爵様なんて、まだ泣いてるわ」
エマが慌てて振り向くと、こっそり目頭を押さえているセイルの姿があった。
人知れず、滲む涙をどうにも隠しきれない夫。
「セイル様……」
囁くように呼んだエマに、彼はほんの少し気まずそうに微笑んだ。
「……どうしても……抑えきれなくて」
イザベラとマリアベルは視線を交わし、ふっと柔らかく笑った。
「こんな伯爵を誰か見たことがあるかしら」
「子煩悩になるわね」
くすくすと笑い合う声に包まれながら、エマは胸いっぱいの幸福を噛みしめた。
幸せな家族の物語が、これからまた始まろうとしていた。
Fin.
「それで、予定日はいつなの?」
一瞬で空気が凍りつく。
「お、お姉様ったら……! なにを……!」
エマの頬は一瞬で真っ赤に染まり、セイルは目を見開いたまま固まった。
お腹を押さえながらおろおろとイザベラを見つめるエマの姿に、場の空気はさらにざわめいた。
「まぁ!」
マリアベルが手を打ち鳴らした。
「やっぱり! エマが一段と輝いて見えると思ったのよ! なんだそうだったの! おめでとうエマ!」
「お姉様……っ!」
エマが声をあげるも、マリアベルは完全に耳に入っていない。喜びのあまり隣のイザベラと手を取り合ってくるくる回っている。
エドワードが王子様のような煌めく笑顔で、エマの手を取る。
「そうだったのかエマ、どうか身体を大事にして……こんなところに立ったままではいけない、座ってエマ」
流れるような所作で椅子を引く兄に、エマは言葉を失った。
その横で雪は額に手を当て、小さくため息をついた。
「……あぁ、とうとうバレちゃったか……」
「ねぇママ」
無邪気な声が割って入る。ユーリがきょとんとした目で母を見上げていた。
「予定日って、なに?」
「~~っ!!」
エマは顔を覆って俯いてしまった。
マリアベルとイザベラはきらきらと輝く笑みを浮かべて、声を揃えた。
「「家族が増えるのよ」」
その時、エマは気がついた。セイルが何も言わない。
視線を向ければ、夫は呆然と立ち尽くし、まるで時が止まったように動かない。
「……セイル様?」
エマの呼びかけに、全員の視線が伯爵へ集まった。
人形のように佇み、誰よりも放心している。
「え。まさか知らなかったの?」
「そんなはずないでしょ、父親なのに」
「どうかしましたか、伯爵?」
問いが重なる。
その刹那。
突如、セイルの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。
突然のことに誰もがぎょっとする。
ひとしずくを皮切りに、涙は堰を切ったようにはらはらと頬を伝い落ちていった。
「……エマ、本当に?」
「ごめんなさい、じきにお話しようと──」
「……子どもが……」
震える声。エマは駆け寄り、夫の頬をハンカチでそっと拭う。セイルはその手をとらえ、言葉を絞り出した。
「……エマ、ありがとう……こんな幸せがまた訪れるなんて……」
セイルの震える声に、エマも目頭が熱くなる。
そのとき。
「はっはっは! 皆集まってるな! さぁお父様も混ぜてくれ!」
豪快に杯を掲げながら、何も知らないグランフォード公爵が大声で現れた。
酒の匂いを振り撒き、完全に出来上がっている様子。
そんな公爵の手を、セイルががっしりと握りしめた。
「……セ、セイル?」
「公爵、エマに会わせてくださってありがとうございます……本当に、心から」
「お、おう……どうした?」
「貴方は私の恩人です……」
公爵の手を握って離さないセイルに、公爵は困惑する。
普段、何事にも冷静で滅多に感情を見せない男が、涙をこぼして感謝を告げている。
その姿に公爵の胸も思わず熱くなった。
「なんだか分からんが、今日は良い日だ! 皆で飲むぞ!」
豪快な音頭に、会場は一気に賑やかさを取り戻した。
杯が掲げられ、笑い声と音楽が弾ける。
「それにしても、まぁ……」
雪がエマの隣に寄り添い、唇に笑みを浮かべる。
「バレちゃったけど、これはこれで良かったんじゃない?」
「……もう雪ちゃんたら……」
エマは顔を真っ赤にして、うつむいた。
「エマ、大事な時期だわ。無理をせず、幸せだけを抱いて過ごすのよ」
イザベラが優しく囁く。
マリアベルも隣で頷いた。
「そうよ、何かあれば遠慮せずにお姉様を頼りなさい。何もかも粛清してあげるわ」
「……物騒ですね」
姉と兄が悪戯っぽく笑い合う。
イザベラはちらりとセイルに目をやった。
「……あら。伯爵様なんて、まだ泣いてるわ」
エマが慌てて振り向くと、こっそり目頭を押さえているセイルの姿があった。
人知れず、滲む涙をどうにも隠しきれない夫。
「セイル様……」
囁くように呼んだエマに、彼はほんの少し気まずそうに微笑んだ。
「……どうしても……抑えきれなくて」
イザベラとマリアベルは視線を交わし、ふっと柔らかく笑った。
「こんな伯爵を誰か見たことがあるかしら」
「子煩悩になるわね」
くすくすと笑い合う声に包まれながら、エマは胸いっぱいの幸福を噛みしめた。
幸せな家族の物語が、これからまた始まろうとしていた。
Fin.
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