転生少女は元に戻りたい

余暇善伽

文字の大きさ
49 / 56

第48話

しおりを挟む
 目当ての本は見つからず、図書館での用事も終わりお互い寮への帰路に着く。
 ノックをして部屋に入るとベッドで横になったままのクローディアが迎えてくれる。
 「おかえり、あの後何かあった?」
 「ううん、目当ての本は無かったよ」
 そういう事じゃないんだなぁとクローディアがボヤいているが、図書館で他に何があると言うのだろう。
 借りて来た本を机の上に置き、寮内での服装は常識の範囲内で自由らしいので着ていて重苦しい制服から着替える。
 「アスカって持ってる服可愛いよね、生地も良さそうだしもしかして良いとこのお嬢さん?」
 「違う違う、これはお下がりをもらっただけだよ」
 着替え終えたら食事までまだ時間があるので自分のベッドに腰を掛ける。仁の奴に注意されたので脚を開いたりしないよう意識しておこう。
 「まぁ良いや、それで本を持って帰ったみたいだけど何の本を借りてきたの?」
 「あれは魔導教本だよ、僕不器用だからイマイチ魔力の制御できなくてさ。『猿でも分かる魔法』って本があったから読んでみようかと」
 「へぇ~あんたって魔力も持ってるんだ、色々持ってるねぇ」
 「あれ、クローディアも身体能力強化魔法使う魔力持ってるんじゃないの?」
 昨日握手した感じクローディアも前衛職だろうけど、少女で将来前衛職ができるって事は少なくとも身体能力強化魔法が使えるくらいの魔力は持ってるものだと思ってた。
 「いや、ウチは持ってないよ。ただ、ウチはバーク族でさ、男と女で筋力差が無いんだ」
 「バーク族?それって確か東の少数戦闘民族だよね」
 名前だけはボルドーの授業で聞いた事がある。かつて栄華を誇った軍事大国を築いたけど、今じゃほとんどその姿を見なくなったって言ってたはずだ。
 「そうそう、笑っちゃうよね今時戦闘民族なんて。古臭い文化は残ってるし未だにまともに計算もできないバカばっかだしで嫌になって出て来ちゃった」
 「そうかな?かっこいいと思う思うけど」
 特に戦闘民族って響きが良い、こう、男心をくすぐられる。
 「嫌よ、可愛くないし、血生臭いし、汗臭いし、品が無いし、知性が感じられないし――」
 「す、ストップストップ分かった分かったから」
 突然ヒートアップしたクローディアを宥める。これは相当拗らせてるな。
 「でもそれじゃどうして冒険者になろうと思ったの?品や知性はともかく血生臭かったりはすると思うけど」
 「理由は色々あるんだけど、一番は夢のためかな。二番目は『プロテアの学校に受からないと学校には行かせない』って親に言われたから、一番受かりそうだったここを受けただけ」
 せっかく持って生まれた力なら、少しくらい私の人生の役に立って欲しいじゃん?とクローディアが力こぶを見せてくる。
 だが、その腕自体は別に筋骨隆々と言った訳でもなく、普通の腕に見える。
 二人でそんな話をしていると室内に軽いノックの音が響く。
 どうぞ、開いてますよ。と返すと扉が開き、私服に着替えたペロとその相部屋のカンナが廊下に立っている。
 「二人ともそろそろ晩御飯に行かない?みんなを待たせると悪いしさ」
 「あれ、もうそんな時間か。それじゃ僕達も行こうか」
 「そうね、せっかく誘ってくれたんだし」
 支度らしい支度もないのでそのまま二人でペロ達に着いて行くと食堂の入り口は混雑中だったが、常に一方向に人が流れるので意外とスムーズに食事を受け取り席に着く事ができた。
 夕食時と朝食時は各学科の女子全員が集まるため、食堂の中自体はかなり広い。もしかしたらお城の食堂よりも広いかもしれない。
 全員が揃って挨拶するまで食べてはいけないらしいので、他の子が着席するのを待ってる間にペロ達も加えてまた談笑する。
 「朝は説明できなかったけどこの子がカンナ、二人ともよろしくね」
 紹介されたカンナがよろしくと頭を下げると、それにつられてピンクのツインテールが揺れる。正面から見るとペロより背は小さいが、胸元の肉付きも良くかなりアピールしてくる。これも種族の特徴なのだろうか?
 あまりジロジロ見ると失礼だとは思うけれど、頭を下げて来ている以上、下手に目線を逸らすのもおかしいのでとりあえずこちらも頭を下げて対応する。
 「紹介に預かったがワシはカンナ・スミス、気軽にカンナと呼んでくれ」
 「カンナはちょっと変わった話し方するけど、おじいちゃんの話し方がうつっちゃったんだって」
 どうやらカンナのお爺さんの様な話し方は種族特徴とかでは無いみたいだ。
 「そうなんだ、教室でも自己紹介したけどウチはクローディアよ」
 「僕はアスカ、ペロとは日曜学校から一緒なんだ。よろしくね」
 クローディアが自己紹介するのに合わせて僕も済ませる。この辺はクローディアに合わせてれば間違い無いだろう。
 「いや~それにしても都会の女子おなごはみんな可愛いなぁ。一緒にいてワシが恥ずかしくなってくるわい」
 「え~そんな事ないよウチも出身は田舎だし、都会出身はアスカとペロちゃんくらいじゃない?」
 「でも僕達もプロテアじゃなくてバンクシアの出身だからね。もっと言えば僕は元々アザレアって村の出身だし、ほんとの意味で都会出身なのはペロくらいかも」
 ペロに視線が集まると恥ずかしそうに縮こまるが、耳や尻尾にすぐ感情が出るあたりがまた可愛らしい。
 「ぜ、全然そんなこと無いよ。私はアスカみたいに可愛く無いし、クローディアみたいに背も高くないし……」
 「全員注目!」
 顔を赤く染めたペロが両手を振って否定していると、寮長の大きな声が通る。
 「みんな揃ったようだから今から食事を始めます。食事を食べられる事を食材や料理してくれた方、親御さんに感謝して好き嫌いせず食べるように!」
 寮長の音頭でみんな一斉に頂きますをして食事が始まる。食事中の会話自体はルールでもマナー違反でも何でも無いので談笑は続き、四人の食事が終わると部屋に戻ることになる。
 「二人ともお風呂は何時頃入る?」
 別れ際、部屋に入る前にペロがそう聞いてくる。寮も二日に一回夜八時から十時までお風呂が用意され、そうで無い日はあったかいタオルなどで体を拭くようになっている。
 二時間の間に寮に住む女子全員がお風呂に入らないといけないので当然混雑が予想され、個人的にはあまり入りたくないが流石にみんなの手前お風呂に入らないと言う訳にもいかない。
 「僕は何時でもいいよ、クローディア次第」
 「ウチは早く寝たいから早めに入りたいかな」
 じゃあ八時になったら用意して誘いに行くから準備して待っててねと言ってペロ達が部屋に帰っていくのを見送ってから、僕達も自分達の部屋で入浴の準備を始める。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...