キツネの女王

わんころ餅

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ぼるふはお金を持っておらんのじゃ

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「お金ってなに?」

「いえ……お金とは物や事を提供してもらう代わりに支払うものでして……」

「じゃあ、オレは君たちに命を入れたからもらえる?」

 ヴォルフの提供に宿屋の受付のキツネは困ってしまう。
 確かに獣人を作ったのはヴォルフであることは間違いがないのだが、いくら何でも創造神だからお金頂戴と言われても、はいどうぞとはいかない。
 おんぶされ、ふさぎ込んでいるふくに助けを求めるも、まったくと言っていいほど返事もなく、ヴォルフは八方塞がりとなる。
 すると、村の外で出会った女が目覚め、睨み合う。

「何だよ」

「まさかお金ないのか?」

「だって今まで要らなかったし」

「神はいいよな。何でも貰えるから」

「お金ない時どうしたらいいんだ?」

 女は口に手を当ててヴォルフとふくを交互に見る。
 そしてため息をつき、面倒くさそうに告げる。

「アタシの家来いよ。狭いけど……」

 二人は女の家に行くことにした。
 大通りを歩くだけで、ひそひそと噂をされる。
 ヴォルフが宿屋の聞き込みをした影響かと思いきや、女の方の噂で持ちきりであった。
 要は任務失敗に加え、侵入者の手助けをしているということで、だ。

「なんか言いたい放題だな」

「気にすんな、狐の連中は噂話が好きなだけだ。ヒソヒソして気色悪い」

「お前もキツネじゃないか?」

「あんなのと一緒にすんなし!アタシはコソコソしてじめじめした奴が嫌いなんだよ!」

「えぇ……なんで怒られんの……」

 なぜかぷんぷん怒っている女にヴォルフは戸惑うのである。
 宿屋から通りが変わって、路地へ入っていくと一軒だけ雰囲気の違う家が現れる。
 他の家屋と違い、上に長い家であり、高さだけなら他の家の二倍ほどのものだった。

「ここがアタシの家。一階が客室になっているから好きに使いな」

「助かるよ。ご飯とお風呂は?」

「ねえよ。自分で用意しな!……あと、ねえと思うけど、交尾すんなよ。やかましいから」
 
 それだけ告げて、女は上に上がっていった。
 板間と囲炉裏が用意されているこの部屋で寝泊まりすることになる。
 ふくはいつの間にか眠りに就いていたようでそのまま寝かせることにした。

「ふく……好きなヒトできちゃったか……」

 ヴォルフは耳を垂らし、気分が落ち込んだまま眠りに就いたのだった。

 §
 
 ——ゴドンッ!
 
 夜が更け、大きな音でふくは目を覚ます。
 ヴォルフの上で眠っていたようで、いつ眠りに就いたのかわからず困惑した。
 そして何かの気配を感じ、魔力を目に込めて暗闇を見る。
 門の外で出会ったキツネの女だった。
 もちろんふくはこの女の家に泊まっていることなど知らないため、戦闘態勢になる。

「アンタも音に気が付いて起きたのか……?」

「お前はわしの敵ではないのか……?」

「そこの邪神がお金持っていねえから助けてやったんだ。それより、外に何がいるかわかるか……?」

 ふくは女が外をしきりに気にしており、話し合うのはこの後でもいいと思い、外を【視た】。
 複数のヒトならざる者の形をした生き物が村中を徘徊していた。
 急いでヴォルフを叩き起こし、状況を説明する。

「ぼるふ、ネズミと犬の集落で出たような奴がいっぱいおるのじゃ!」

「なんだって!?」

 ヴォルフは寝起きで状況が飲み込めず、大きな声で反応すると家の壁と柱がバキバキと音を立てて壊れる。
 間一髪家から飛び出し、崩れる家の下敷きにならずに済んだ。

「あ、あ、あ、あ、アタシの家が……借金してまで買ったのに……!」

「……ぼるふ、恐れておったことが起こっておるようじゃ」

 ヴォルフはふくが何を恐れているかわからず、首を傾げる。

「わしらは一体でも手を焼くやつじゃ。複数現れたとなると対処謎出来ぬ。避難をしなければならぬがここの民はそれを聞いてくれるものか?」

「いや……アンタらじゃ誰も言うことは聞かないだろうよ」

「お前よ、今日のクソギツネのところへ案内するのじゃ」

「ど、どうするのさ!?」

「どうにでもするのじゃ。それだけこの怪物は不味いのじゃ」

 ふくの顔を見て嘘ではないと気が付き、諦めたように走っていく。
 ふくはヴォルフの背にのり、女を追いかけるのであった。
【それ】は蟻とカブトムシが混ざったような見た目と部分部分で人間の肌が見える。
 蟻の特性のせいか、群れを成しているのが非常に厄介に感じる。

「首領の家はそこよ!」

「うむ。お主、名は何という」

「イナホだけど……」

「稲穂か……良い名じゃ。わしはふく。獣の国の王となる女じゃ。生き残ればネズミ族の集落に来てみるのじゃ!」

 そう言うとふくとヴォルフは去っていき、イナホは取り残される。
 周囲を見ると幸い【それ】の追跡がなく、逃げるのは容易であった。

「逃げるわけには……でも、首領には見放されてるだろうし、そもそもアイツのこと好かないしな……逃げちゃえ!」

 イナホはふくの助言通り、走り出していった。
 【それ】に見つからないようにこっそりとだが足早に村の敷地を表す塀を目指し走る。
 そして、塀の前で一瞬立ち止まる。
 なんだかんだ言って愛着のある故郷である。
 そして、部外者だが二人の強い獣人が【それ】の対処に当たっている。
 ギリィっと歯を鳴らすが、村を背にし、塀を飛び越える。
 その行動が吉となることを誰も知らずにいたのだった。
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