キツネの女王

わんころ餅

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同族嫌悪というのかの?

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 ふくは目に魔力を込め景色を見る。
 すると糸のような魔力の筋が現れ、それを追いかけていく。
 そのようなものが見えないヴォルフはふくの後ろをついていく。
 すると複数の糸が絡まったような場所を見つけ、手に魔力を集中させる。
 目と手の二箇所に集中させるのはかなりの難易度であり、上手くいかない。
 ヴォルフはふくがしようとしていることを理解し、声をかける。

「どこに魔力をぶつけたら良い?」

「すまぬ。ここじゃ」

 ふくが指を指した先には何も見えないが、サッカーボール大の大きさの魔力を近くに置き、爆散させる。
 ふくの目ではヴォルフの魔力の塊は非常に輝いて見え、余程押し固めていたものだと理解した。
 そして、ふくも吹き飛ばされ、後ろにゴロゴロと転がっていく。

「あ……。ふくっ!大丈夫!?」

「痛いのじゃ……。もう少し加減できなかったのか?」

「ごめん……強い魔法だと思ったから……つい」

「まあよい……お前がやってくれたおかげでようやく集落へ向かう事ができるみたいじゃ」

 ふくの目には魔力の糸は無くなっており、ただの竹林に戻っていた。
 二人は捕虜を連れ集落の門へ辿り着いた。
 大きな木製の門はかなり堅牢なもので、物がぶつかったくらいでは壊れるような作りではなさそうだった。
 ヴォルフは捕虜を投げ飛ばし、地面に転げさせる。

「い、いてぇ……何で投げるんだよ!?」

「喰われたくなければ早く門を開けるんだな」

「誰が喰われるか――ご、ごめんなさい……」

 ヴォルフの凶悪とも言える睨みはキツネの女に恐怖心を与えており、素直に門を開ける。
 門の中はヒトの営みが出来ており、今までの中で一番人間らしい集落であった。
 木や竹を使った柱や梁で外壁は土壁、土地柄地面が柔らかいため沈まないように束石の上に家を建てていた。
 集落の至る所に家は建てておらず、外観にこだわりがあるのか家は全て並んで建てられていた。
 それを見たふくは自分のいた世界『日本』を思い出し、懐かしい気分になる。

「凄いのじゃ……!まるでわしのおった世界にそっくりなのじゃ……!」

「ふくはここのような所から来たの?」

「そうじゃの。細かいところは違うのじゃが、大まかにはこんな感じじゃ」

「アンタはこの村出身じゃないのかよ……」

 キツネの女はふくが村出身でない事を知り、悪態をつく。
 未だに敵対心を込めた目で見てくる女にため息を吐き訊ねる。
 
「なぜ、わしをそこまで恨むのじゃ?」

「この村は野狐族の村だ。抜けた奴は敵とみなす掟だ。知らないのかよ……」

「残念じゃがわしは純粋な野狐族ではない。上の世界から堕ちたニンゲンじゃ」

 意外な回答が返ってきて女は口をパクパクさせる。
 ふくは不思議そうに見ていると一人の男が現れる。

「首領……申し訳ございません……ちか――」

 女は首領と呼ばれる男に吹き飛ばされ、気絶させられる。
 ふくはその光景を見て男に近づく。

「何故話を聞いてやらぬのじゃ」

「聞くまでもない、実力が無い者は粛清する。それだけだ」

「ほう、ではわしがお前を粛清しても良いと?」

「……誰に向かって盾突く?」

「誰も彼もないの。わしはぼるふの使い、ふくと言う」

「邪神の使い?笑わせるな。あんな者に仕えるなど屑でしかない」

 ヴォルフはふくの悪口を言われ牙を剥くが、ふくはそれを止めさせる。
 首を横に振って、鼻の頭を撫でると男の方へ向き直す。
 その一瞬だけ見えた横顔は非常に怒っていた。

「それならば、わしと力比べでもするかの?」

「ふん、野蛮なことしかできない女か。我が何故そのようなことをしなければならないのだ?」

「ほぉぅ……お前、わしに勝てんから逃げておるのじゃな?軟弱者じゃのう」

 ふくは挑発するように首を横にふり、手をやれやれと振りながら態と大きな声で周りに聞こえるように言う。
 村中の視線を集め、男は立場を証明するため詠唱を始める。

「『うなる風よ……我力に答――』」

「『大気の塊』」

 男が詠唱を完成させる前にふくは詠唱を終え、キツネの女と同じように吹き飛ばす。
 ヴォルフはふくが怒っている事にあわあわと焦っていると、男は飛び起き、鋭い爪でふくを攻撃しようと間合いを詰める。

「『我を守れ』」

 【守護】の魔法が男の攻撃から身を守り、掌を男に向けニコリと笑う。
 水塊が男を包み込み、ふくはそのまま魔法を解除しようとせず、閉じ込めていた。
 ヴォルフはふくが怒りに囚われ男を殺してしまおうとしている事に気がつき、ふくの手を掴んで魔法を解除させる。

「ふく……!それ以上は死んでしまう……!」

「……っ!ぼるふ……」

 そのままふくはヴォルフの胸に顔を埋める。
 ふくの心情がよく分からず、そのまま抱きしめる事にした。

「どうしたの……?君らしくない……」

「……すまぬ。わしはこの村におらぬ方が良いかもしれぬ」

「……?」

「何故か分からぬが、あの男を好いてしまいそうなのじゃ……。お前以外の男を求めようとしている自分が……嫌なのじゃ……。」

「!!??!?!?」

 状況が全く読めず、ヴォルフの頭の中が混乱してしまう。

(こう言う時は状況の整理をして……最初はキツネ女が過剰に罰を受けていたのを咎める。次に、キツネ男に勝負を仕掛ける。で、乗り気じゃない男を煽る。んで、挑発に乗った男をコテンパンにする。何故か好きになりかけている……!!??!?)

 やはりヴォルフがいくら状況整理したところでわかるはずがなかった。
 やっていることと、思っていることの辻褄が合わないからだ。
 ヴォルフは考えても埒があかないと考え、男の前に出る。

「取り敢えずまた明日話し合いをしよう。今日はふくの機嫌が悪いから宿屋に泊まる。お互い頭を冷やして話し合う……それでいいか?」

 目の前に現れたヴォルフにギョッとした男だが、ヴォルフからのまともな提案が出され、無碍にする理由がなかった。
 男は頷くと村の奥へ消えていった。
 周りを見ると腕を組んで険しい顔をしているふくと、男に吹き飛ばされた女をギャラリーが見ていたので、二人とも抱き抱え、宿屋を目指して歩く。

「宿屋ってどこ?」

 ふと疑問に思ったヴォルフ。
 そう、宿屋が分からなかった。
 周囲の人に聞き込みをして無事に辿り着くのだが、邪神が徘徊していると噂をされ、村人たちは戦々恐々とするのであった。
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