キツネの女王

わんころ餅

文字の大きさ
79 / 108

お風呂の続きをするのじゃ

しおりを挟む
 城の裏庭に到着したふくたちはヴォルフから降りて背伸びする。
 ヴォルフの速さで移動すると空気の音が大きいため、セイラが何事かと出てくる。

「何があったの――ってなんですかこの肉の量は!?」

「何とは……大型魔獣を倒すと大体このぐらい取れるのじゃが」

「さ、さすがふく様とヴォルフ様ですね……。そこのお前たち!保存庫に肉を持っていくのです!……ふく様たちはどちらへ行かれたのですか?」

「ライラとネコちゃんの訓練で外に出たんだよ。中々いい魔法の使い手だぞ?【変圧】ともう一個の正体不明の魔法だ」

 ライラは服のポケットから魔石を取り出し、セイラに渡す。
 透き通るような透明な石を見たセイラは驚く。

「こんなに純度の高い魔石は初めて見ました……!これなら魔道具作りに使えるかもしれません……!」

 魔石の純度の高さに興奮したセイラは魔石を持って城の中へと消えていった。
 ライラとにゃん、そしてヴォルフは三人揃って「ぐぅぅ」と腹の虫を鳴かせる。

「肉……取られちゃった」

「ウチもサラダ食べたかった……」

「お腹……空きましたね……」

「ライラよ、この肉を少し持ち出し、お前の好きな野菜に変えてくると良いのじゃ」

 ふくはどこからともなく肉を取り出し、ライラに渡す。
 
「こ、この肉どこから持ってきたのですか?」

「む?最初から持っておったのじゃ。セイラに取られてしまう前に切り取っておいたのじゃ。じゃから食いっぱぐれる事はないのじゃ!」

「さすがふく様!」

「一生ついてきます……!」

「オイラの大好きなふくだぞ!優しいんだからね!」

「ええいっ!早く準備するのじゃ!」

 ふくは照れている様子を見られたくないため、慕ってくる三人に対してわざと邪険に扱う。
 裏庭で火を起こして肉を焼いていると、ガルドとポチおがニオイに釣られて出てくる。

「いいニオイだぁ……!肉っ!肉だよ!わーい!」

「久しぶりの保存食以外の肉で助かる……!」

「さあ、男どもも食べるのじゃ」

 ジュウジュウと肉汁を焚き火の中に落として更にニオイを強くさせていく。
 串に刺された肉をポチおが一気に頬張る。
 そして、この世界に来て一番美味しいものに出会ったような表情をする。

「美味しいかの?」

「めっちゃ美味いよ!あぁ……この世界に来て良かった……!」

「全くあなたたちは……。目を離すと直ぐに何かをするのですから……!」

 セイラが少し怒ったような表情でやってくる。
 ふくは串肉を一本取り、セイラに差し出すと、それを受け取り、啄んでいく。
 余程美味しかったのか、目尻が下がり、左手で頬を押さえてニコニコとする。
 美味しい料理の虜になると皆笑顔になるのは種族性別関係ないようであった。
 結局全ての肉を食べ終え、小休憩をする。

「ポチおよ。お前はお風呂を作ることができるかの?」

「うーん……材料が揃っていればなんとか作れると思うよ?ここは温泉が出るのかい?」

「出ないのじゃが、湯を貯める方法が知りたくての」

「あぁ!そういうことね!お湯を作ったりするのはどうするの?やっぱり一から温めるなら【火】魔法の魔道具が必要になるだろうね。水は引いてこれるの?」

 ふくは近くを見るが、川が離れたところにあり、おまけに城は川より高い位置に存在していた。
 高台への水の引き方はふくは知らない。
 顎に手を当てて、書庫に行こうか迷うとガルドが手を上げる。

「私の魔法なら水を生成するのは簡単だ。魔道具に封じれば誰でも使えるようになるから手伝おう」

「じゃあ!ウチはお湯を沸かす【火】の魔法を封じればお風呂が作れるね!」

「でしたら素材が足りませんよ?魔石とミスリルが足りないので魔道具が作れないのです」

「それじゃあ、オレとふくが採りに行こう」

「そうじゃの。お前たちはわしらが帰ってくるまでお風呂の枠を作っておいてくれるかの?」

 そう言って二人は立ち上がるとセイラが呼び止める。

「ヴォルフ様、ふく様。ミスリルはここから南に行ったところにあります。薄い水色のような青みがかかった色をしていて、魔力を込めると柔らかくなるので直ぐにわかると思います」

「うむ。探してみるのじゃ。では頼んだのじゃ」

 ヴォルフの上に跨り、駆け出していった。
 あっという間どころか一瞬で姿が無くなり、セイラはため息を吐く。
 ポチおは少し考えてセイラに質問する。

「なあ、鉄の塊ってある?」

「え、ええ……あるのはありますが、何に使うのですか?」

 拳大の鉄鉱石を取り出し、ポチおに渡す。
 それを地面に置き、魔力昂らせる。

「『物と物を繋ぐ力よ、我の魔力と鉄を結びつけ給!』」

 鉄に魔力がドンドンと吸収されていき、赤茶色の錆鉄であった鉄鉱石は綺麗な青色の鉄鉱石へ変わっていく。

「こ、これはミスリル鉱石じゃないですか……!?どうしてそんなことができるのですか!?」

「いや、なんとなくだけど……鉄に魔力が込められたのがミスリルならオイラの【結合】の魔法でそれを再現すれば……と思ったら出来ちゃった」

「出来ちゃったじゃないですよ!ヴォルフ様とふく様行ってしまいましたよ!……もうっ!ポチおさん。あなたは責任をとってお風呂を作り上げなさい!」

 後からミスリル生成できることを伝えてしまった為、お風呂制作はポチおが責任施行することになってしまったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...