キツネの女王

わんころ餅

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他人の魔法を変える力なのじゃ

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 ライラの火の球がにゃんの【変圧】によって変形され、火の槍となる。
 ライラは形の変わった魔法を見て驚愕する。
 そもそも、他人の魔法の形を変えるのは非常に高度な技術であり、莫大な魔力を必要とする行為であるからだ。
 そして、ヴォルフは珍しくないような評価をしていたが、【変圧】は【加圧】と【減圧】、そして【操作】の三つの複合魔法であり、ライラは詠唱の長さでも驚いていた。

「できました……!これなら、急所に当てられたら倒せると思います……!」

「す、すごい……!この発想はなかったよ……!これで……とおぉぉぉぉりゃあぁぁぁぁぁっ!」

 ライラは大きく振りかぶり、助走をつけ、火の槍を魔獣に向けて投げる。
 ライラの脚力は凄まじいものなのだが、腕力に関してはふくより若干強い程度のため、速度は遅く放物線を描く。
 狙いは正確で槍が頂点を過ぎ、下降した瞬間、槍の柄の部分が「ボンッ」と爆ける。
 ロケットのように推進力を得た火の槍は光の尾を引き、魔獣に突き刺さる。
 貫通する事は無かったが、確実に急所を射抜き魔獣は苦しむ。

「『爆ぜよ!』」

 にゃんは両手を満開の花のようにバッと広げた瞬間、魔獣の身体は爆発四散する。
 ボドボドと弾けた肉が焼けた血肉の臭いを撒き散らしながら地面に落ちていく。
 凍った大地に焼けた血肉が、ジュウウッと音を立てて水蒸気を上げていく。

「……血抜きをせぬと臭いものじゃ」

「食えるとこ無くなったんじゃない?こんだけバラバラに砕いたら」

「す、すみません……!力を入れすぎたせいで、食べられなくして……」

「にゃん!凄いよ!ウチの魔法がこんなに強くなったのビックリだよ!」

 にゃんのおかげで威力が底上げされ、ライラは大興奮であった。

「に、にゃんのこれしき……!」

 にゃんは両手を顔の横に持ってきて招き猫のような仕草をする。
 今まで見たことのないジェスチャーを見てライラは震え、ふくは顎に手を当てて考え、ヴォルフは首を傾げる。

「か……かわいい……!!」

(ふむ、これが最近の可愛いというものなのじゃの?)

「??」

 三人にジッと見つめられ、だんだんと恥ずかしくなり、にゃんは縮こまってしまった。
 あまりよく理解していなかったヴォルフは次の獲物を探索する。
 そのおかげで、にゃんはこれ以上恥ずかしい思いをせずに済んだ。
 耳をピンと立てるとふくはそれに気づく。

「うむ、早速次の魔獣を狩りに行くのじゃ」

 ヴォルフはふくが乗れるようにその場に伏せ、ふくはヴォルフの上に跨る。
 ライラとにゃんは先ほどのヴォルフの速さを思い出し、身震いする。

「大丈夫なのじゃ。直に慣れるじゃろうて」

「そ、そんなものですかね……?」

「が、頑張ります……!」

 ヴォルフは三人が乗ったことを確認すると、立ち上がり、次の魔獣のいる場所へと駆け出すのである。
 勿論、先ほどより若干遅くなり時間はかかったのは言うまでもないだろう。

 城からふくたちが歩けば三日はかかる距離をたったの五分で駆けていくヴォルフ。
 先ほどと同じような大きな体躯をした魔獣を発見する。
 ライラとにゃんは急いで詠唱を開始するも、魔法が発動することがなかった。
 先ほどの魔獣に対し、魔力の大半を使い、ヴォルフに振り落とされないように使っていた魔力で魔法を出すことができる量が残っていなかったようだった。

「どうやら魔力がなくなったようじゃな。にゃんの【変圧】もかなりの魔力を使用するようじゃ。どれ、わしに任せるのじゃ」

 ふくは指で空を切り付けると魔獣の首がズルリと落ちる。
 魔獣が横たわる前に腹部を風の刃で切り開き、内臓を全て切り取る。
 ライラは何かを見つけ、急に飛び出す。

「らいら!?」

 体が汚れることを気にもせず臓物の中を漁り始める。

「あ、あった!」

 ライラは臓物の中からキラリと輝く石を拾い上げ、戻ってくる。
 白い体毛は鮮血に塗れ、血液と老廃物の混ざった酷い臭いを放つライラに顔を顰める。

「な、何を見つけたのじゃ……?」

「魔石だよ!さっきは爆発したからどこに行ったか分からなかったけど、倒して直ぐに魔獣から引きちぎったら何も入ってない魔石が手に入るの!……ってこの前セイラ様が教えてくれたんだ!」

「ふむ……?これが魔石というものか……。何ができるのじゃ?」

「えっとね……魔石は何も入ってない空っぽの石で悪いキモチの入った魔石は魔障石になっていくの」

「あの魔物の石の事じゃな……。良い気持ちを入れたモノならなんというのじゃ?」

「……魔石は魔力を込めれば魔導石になるの。魔法を入れることもできるみたいだけど、誰一人成功したことがない技術だって言ってた……」

 ライラの話を聴き、ふくは魔石の使い方を考えるが、目の前に美味しそうな肉が横たわっている状況で正常な考えはできず、持ち帰ることにした。
 肉を小分けにし、魔力で持ち上げ、再びヴォルフに跨る。

「一応少しだけ凍らせておくよ?」

「うむ。ぼるふが居るおかげで肉が傷まずにすんでよいの」

 ヴォルフは肉を一瞥しただけで凍らせ、三人が背に乗ったことを確認すると凍土を駆けるのであった。
 にゃんは必死にしがみつき一つ疑問が浮かび上がる。

(そういえば……ふくさんとヴォルフ様は呪文を唱えてなかったな……)

 そう思いながら早く到着することを願うのであった。
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