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旅立つ者。
ジェンの涙。
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手紙は送ったし、料理の伝授をした。さて、あとは何をするか考えたら今度ルステインに来る役人の宿泊の手配をしていない事に気づいた。
うちのお客様用の常宿を覚えていたので行こうとミザーリとジェンの方を振り返ったらジェンが何故か泣いていた。ミザーリと顔を見合わせる。ミザーリは首を振っているのでミザーリのせいではないだろう。もしかして僕のせいか?
「大丈夫?」
「ふぃーじー」
「んー。もしかして、大丈夫って、意味?」
「はい」
「とりあえず、馬車の中に、入ろう」
「なーやめいがやー」
「んー?わからないよ?」
「わんがたいぬうやーくるさったん!」
「うん」
「わんねーいちちゅるためどれいなたん!」
「んー。ごめん。わからないわ」
「ジェン、しっかりしろ!」
ミザーリは頭を叩く。
「…ごめんなさい」
「とりあえず、宿寄って、戻る。いいね?」
「主よ、宿に何をしに?」
「今度くる、役人の、宿とるの」
「かしこまりました。御者に伝えてきます」
「お願い」
ミザーリが馬車を出て行ったのでジェンに話す。
「話したい、こと聞く。けど、普通に、喋ってもらうと、嬉しい」
「…わかりました」
「ジェンも仲間、だから。忘れないで」
「…はい」
スサン商会の常宿に寄って予約を取る。不審がられたので料理ギルドのSSカードを出した。
「はい。リョウエスト・スサン様で一人部屋三つに、二人部屋三つでお取りします。よろしくお願いします」
「はい。手付け、受け取って」
「ありがとうございます。では当日お待ちしております」
「はい」
馬車に戻ってもジェンは元気がなかった。かと言って喋る様子もない。どうしようかな、と思って商会に戻ってお父さんに相談した。
「お父さん、ジェン、元気ない」
「そうか。お父さんも最近ジェンが元気ないから心配してたんだ」
「一緒に話、聞こう」
「そうだな。夕食の後、呼ぼうか」
「父さん、ジェンの元気ないの、移住組が来てからだと思う」
「ロイック、何か思い当たることがあるのか?」
「ああ。避難してきた日にミザーリとジェンに相手をしてもらったんだ。それがひと段落ついた時『水竜人語』で何か喚いてそれ以降全く喋らなくなったんだよね」
「そうか。あんまり過去のこと話さないからその過去に関係あるかもしれないな」
「ね、お父さん、家族、一緒に、聞こう」
「そうだな、お母さんにも話しておくよ」
僕はミザーリにジェンの過去に何かあったのか聞く。ミザーリは何も知らなかった。
夕食後、マチルダにジェンを呼んでもらった。拒否されたので今度はロイック兄さんとストラ兄さんが呼びにいく。ジェンを二人で抱えて食堂に連れてきた。
「…何で?」
「まあ座りなさい」
「…はい」
「私たちはね、最近ジェンが元気がないことを心配してるんだ」
「…大丈夫です」
「今日もリョウと一緒の時、何かを叫んだと聞いている。ミザーリも心配していた。話したいことがあるんじゃないかってね」
「僕、ジェンの、言葉、わからないの、ごめんね」
「時間はいっぱいあるし、ゆっくり話せばいいよ」
「ロイックとストラの言う通りだ。ジェンもわれわれの大事な商会員だ。苦しい胸の内を吐き出してごらん」
「ね、男がいてしゃべり辛いことなら私たちが聞くわ。無理しないで」
「ここには誰も言いふらす人間はいないわ」
「…ありがとうございます…でも話したらここにいられなくなる…」
「ジェンは僕の命の恩人だ。よほどの事じゃない限り放り出す事はないよ」
「…わかりました…」
ジェンは話し始めた。
「私は寒村の出身で…あの方達と…同じように……父と母を盗賊に…よって…亡くしました」
「大変だったわね」
「それで思い出したのね」
「…はい。弟が一人…いるのですが……病気にかかり…医師の世話に……なっていました……お金が払えなくなり…それでもその先生は…私たちの世話を…してくれましたが…先生も貧乏でした……」
「その先生がジェン達を育てたの?」
「…いえ。私は弟を先生に…託して……借金奴隷……なりました……私が8歳、弟が5歳の時です……」
「そうだったのか。辛かっただろう」
「…いえ…弟を治す……ポーションが作れて…良かったです…」
「そう。今あなたが自由なのは借金を払い終わったか、年季が来たからなのね」
「…はい。年季が来たからです……お話があります」
「聞くよ」
「私は……人殺しです…剣闘士として…何度も人を殺しました」
「待ってくれ。君は借金奴隷だったろ?」
「…はい」
「借金奴隷を剣闘士にすることは法によって認められてないんだ」
「え?…私は…斧の才能が……あったので……剣闘士になりましたけど…」
「ジェン、君は賞金を貰ったかね」
「…賞金?」
「やっぱり。君は良いように使われていたんだ。どこの商会かね?」
「…キトレ伯爵領の…御用商会…サウロン商会…です」
「わかった。潰してあげよう。明日商業ギルドに一緒にきなさい」
「…ありがとう、ございます。でも…私の手は…血で…汚れています」
「ジェン、それは過去の話だろう。今のジェンはスサン商会に所属する商会員で僕達の仲間だ」
「…ロイック様…」
「そうだ。その通りだ」
「…ハッセルエン様…」
ジェンは涙を溢している。
「ねえ、弟さんはどうなったの?」
「…はい…故郷で先生に…育てられて……成人して…村を出ていったと…先生に…聞きました」
「良かったわね。あなたはとても頑張ったわ。よく生きてきてくれました」
お母さんはジェンを抱きしめながら言う。
「あんまー」
と言いジェンは泣き出した。僕は言葉はわからないけど、この意味はわかった。「お母さん」て意味だよね。
うちのお客様用の常宿を覚えていたので行こうとミザーリとジェンの方を振り返ったらジェンが何故か泣いていた。ミザーリと顔を見合わせる。ミザーリは首を振っているのでミザーリのせいではないだろう。もしかして僕のせいか?
「大丈夫?」
「ふぃーじー」
「んー。もしかして、大丈夫って、意味?」
「はい」
「とりあえず、馬車の中に、入ろう」
「なーやめいがやー」
「んー?わからないよ?」
「わんがたいぬうやーくるさったん!」
「うん」
「わんねーいちちゅるためどれいなたん!」
「んー。ごめん。わからないわ」
「ジェン、しっかりしろ!」
ミザーリは頭を叩く。
「…ごめんなさい」
「とりあえず、宿寄って、戻る。いいね?」
「主よ、宿に何をしに?」
「今度くる、役人の、宿とるの」
「かしこまりました。御者に伝えてきます」
「お願い」
ミザーリが馬車を出て行ったのでジェンに話す。
「話したい、こと聞く。けど、普通に、喋ってもらうと、嬉しい」
「…わかりました」
「ジェンも仲間、だから。忘れないで」
「…はい」
スサン商会の常宿に寄って予約を取る。不審がられたので料理ギルドのSSカードを出した。
「はい。リョウエスト・スサン様で一人部屋三つに、二人部屋三つでお取りします。よろしくお願いします」
「はい。手付け、受け取って」
「ありがとうございます。では当日お待ちしております」
「はい」
馬車に戻ってもジェンは元気がなかった。かと言って喋る様子もない。どうしようかな、と思って商会に戻ってお父さんに相談した。
「お父さん、ジェン、元気ない」
「そうか。お父さんも最近ジェンが元気ないから心配してたんだ」
「一緒に話、聞こう」
「そうだな。夕食の後、呼ぼうか」
「父さん、ジェンの元気ないの、移住組が来てからだと思う」
「ロイック、何か思い当たることがあるのか?」
「ああ。避難してきた日にミザーリとジェンに相手をしてもらったんだ。それがひと段落ついた時『水竜人語』で何か喚いてそれ以降全く喋らなくなったんだよね」
「そうか。あんまり過去のこと話さないからその過去に関係あるかもしれないな」
「ね、お父さん、家族、一緒に、聞こう」
「そうだな、お母さんにも話しておくよ」
僕はミザーリにジェンの過去に何かあったのか聞く。ミザーリは何も知らなかった。
夕食後、マチルダにジェンを呼んでもらった。拒否されたので今度はロイック兄さんとストラ兄さんが呼びにいく。ジェンを二人で抱えて食堂に連れてきた。
「…何で?」
「まあ座りなさい」
「…はい」
「私たちはね、最近ジェンが元気がないことを心配してるんだ」
「…大丈夫です」
「今日もリョウと一緒の時、何かを叫んだと聞いている。ミザーリも心配していた。話したいことがあるんじゃないかってね」
「僕、ジェンの、言葉、わからないの、ごめんね」
「時間はいっぱいあるし、ゆっくり話せばいいよ」
「ロイックとストラの言う通りだ。ジェンもわれわれの大事な商会員だ。苦しい胸の内を吐き出してごらん」
「ね、男がいてしゃべり辛いことなら私たちが聞くわ。無理しないで」
「ここには誰も言いふらす人間はいないわ」
「…ありがとうございます…でも話したらここにいられなくなる…」
「ジェンは僕の命の恩人だ。よほどの事じゃない限り放り出す事はないよ」
「…わかりました…」
ジェンは話し始めた。
「私は寒村の出身で…あの方達と…同じように……父と母を盗賊に…よって…亡くしました」
「大変だったわね」
「それで思い出したのね」
「…はい。弟が一人…いるのですが……病気にかかり…医師の世話に……なっていました……お金が払えなくなり…それでもその先生は…私たちの世話を…してくれましたが…先生も貧乏でした……」
「その先生がジェン達を育てたの?」
「…いえ。私は弟を先生に…託して……借金奴隷……なりました……私が8歳、弟が5歳の時です……」
「そうだったのか。辛かっただろう」
「…いえ…弟を治す……ポーションが作れて…良かったです…」
「そう。今あなたが自由なのは借金を払い終わったか、年季が来たからなのね」
「…はい。年季が来たからです……お話があります」
「聞くよ」
「私は……人殺しです…剣闘士として…何度も人を殺しました」
「待ってくれ。君は借金奴隷だったろ?」
「…はい」
「借金奴隷を剣闘士にすることは法によって認められてないんだ」
「え?…私は…斧の才能が……あったので……剣闘士になりましたけど…」
「ジェン、君は賞金を貰ったかね」
「…賞金?」
「やっぱり。君は良いように使われていたんだ。どこの商会かね?」
「…キトレ伯爵領の…御用商会…サウロン商会…です」
「わかった。潰してあげよう。明日商業ギルドに一緒にきなさい」
「…ありがとう、ございます。でも…私の手は…血で…汚れています」
「ジェン、それは過去の話だろう。今のジェンはスサン商会に所属する商会員で僕達の仲間だ」
「…ロイック様…」
「そうだ。その通りだ」
「…ハッセルエン様…」
ジェンは涙を溢している。
「ねえ、弟さんはどうなったの?」
「…はい…故郷で先生に…育てられて……成人して…村を出ていったと…先生に…聞きました」
「良かったわね。あなたはとても頑張ったわ。よく生きてきてくれました」
お母さんはジェンを抱きしめながら言う。
「あんまー」
と言いジェンは泣き出した。僕は言葉はわからないけど、この意味はわかった。「お母さん」て意味だよね。
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