僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

文字の大きさ
169 / 595
旅立つ者。

閑話・歌が連れてきた者達。

しおりを挟む
 スサン商会には毎日のように客が訪れる。その多くは買い物客のようだが時々違う目的の客が来るようで…。

 金髪で隻眼の男が尋ねてきたのはスサン商会が閉まる直前だった。男は段平ブロードソードを腰に差し革鎧に旅装のマントを身につけていた。男は店先で土下座すると口上を話し始めた。

「店先を借りて申し訳ない。手前コリント王国のキトレ伯爵領の小さな村で生まれ、キトレの街にて男を磨いてきたアガックと申す半端者でございます。こちらにいらっしゃるロイックエン様を御尊父とし、修行をさせてもらいたく恥ずかしながら参上つかまつりました。よろしければロイックエン様のご尊顔を拝見したく、伏してお願い申し上げます」

 店先でいきなりそんなことをされ、商会員達は慌てる。

「しょ、少々お待ちください。ただいま聞いて参ります」
「よろしくお願い致します」

 ロイックエンは事情を聞き嫌々ながら店先に行く。

「ロイックエンだけど何でしょうか?」
「はっ。ロイックエン様、はじめまして。手前はアガックという半端者でございます。避難民を受け入れ、その道筋を導かれたロイックエン様を漢の中の漢と見込み、漢として惚れました。どうぞ手前を店先の端にでも置いておいてくださり漢としての修行をさせて頂けますよう。伏してお願い申し上げます」
「あの、僕はただの商人なんですけど。そういう世界の事は全くわからないんだけど…」
「ただの商人?いやとんでもない。手前はロイックエン様の行動すべてが全て漢だと思っております。伏してお願い致します。御尊父として手前を導いて下さいませ」

 ロイックエンは一旦断ったが5日間毎日通ってきたアガックを結局は受け入れた。アガックはロイックエンの言うことをよく聞き、スサン商会の用心棒となった。






「こちらにロイックエン様と言う方がいらっしゃるとお聞きしたのだけど、いらっしゃるかしら?」 

 と言って店を訪れたのは妙齢の美女だった。女は歳の頃なら二十代後半だろうか。黄色の髪に翠の瞳で女の色香を漂わせている。商会員はドギマギしながら用件を聞く。

「私はガラス細工師にして木工師のキサラというの。ロイックエン様の仕事をやりたくてこの地にやってきて工房を開いたわ。よければお会いさせていただきたいの」
「わ、わかりました。少々お待ちください。都合を聞いて参ります」

 商会員はロイックエンに事情を聞いてなんだろうと思いながら店先に出る。

「僕がロイックエンだが何でしょうか?」
「私はキサラ。ガラス細工ギルドランクA。木工師ギルドランクAの資格をもっている工芸師よ。あなたの話を聞いてあなたの仕事をやってみたくてこのルステインに工房を開いたの」
「僕の話を?」
「そうなの。あなたは自分が思ってるより知られているわ。避難民を自分の商会で受け入れているのが真実だと知って私は感動したわ。そんなあなたの仕事を受けたいの。良かったら使ってくれない?」
「木工師とガラス細工師はうちの弱い分野だから助かるけど…」
「決まりね。何が欲しいか言ってくれる?それで私の腕を判断してもらえるかしら」

 



「ロイックエン様はいらっしゃるか?私は調査商会を営むヤートと言うものです。よければ会わせていただきますか」

 男は40前後で苦み走った笑顔が似合う渋い男だった。特徴的なハットとポンチョがとても似合っている。

「はい。ロイックエンですが?」
「初めまして私はヤート。ヤート調査商会を営んでいる者だ。あなたの事を調査させていただき、あなたにとって魅力的な提案をさせてもらおうと思ってきた」
「こちらへどうぞ」

 ロイックエンは応接室にヤートを案内する。ヤートは出されたお茶を一口呑むとロイックエンに向き直った。

「さて、今回調査したのは依頼されたものではない。私個人の興味で調べさせてもらった。私は君が歌の通りに義侠心にあふれ…」
「ちょっと待って下さい。歌ってなんですか?」
「ああ。君は知らないのかい?『義侠のロイックエン』という歌がはやっているのだ。君が村一つを襲っていた盗賊を殲滅し、その村の避難民を受け入れ商会員とする内容なんだが。その顔を見ると知らなかったようだね」
「また歌かぁ…」
「それに興味を持ったヤート調査商会の面々は君について調べた。避難民を受け入れて商会員にした事を聞いた我々は喜んだものさ」
「はあ」
「それで君の事を調べていくうちに君がこれから全国的に仕事をしていく事を知った。君の挑戦に私達ヤート商会は手伝いたいと思うようになった」
「はい」
「そこで提案なんだが、君、私達を買わないか?スサン商会がヤート調査商会を吸収する形でいい。私達は君と仕事がしたいんだ。自慢じゃないがヤート調査商会は国内でも三本の指に入る調査能力を有している。その調査能力は君の力になるはずだ」
「なるほど。ちなみにいくらで買えますか?」
「そうだな。金貨1枚で良いと言いたいが諸費用がかかる。金貨100枚でどうかね?」
「安いですね。何か裏がありそうな」
「はっはっは。わかってしまうか。もう我々は貴族の権力闘争に飽き飽きしてるんだ。金は儲かったからあとは志を持ったものの仕事がしたくなったんだよ」
「ヤート調査商会のお話を聞かせてください。話はそれからです」
「そもそも我々は……」



しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

Gランク冒険者のレベル無双〜好き勝手に生きていたら各方面から敵認定されました〜

2nd kanta
ファンタジー
 愛する可愛い奥様達の為、俺は理不尽と戦います。  人違いで刺された俺は死ぬ間際に、得体の知れない何者かに異世界に飛ばされた。 そこは、テンプレの勇者召喚の場だった。 しかし召喚された俺の腹にはドスが刺さったままだった。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...