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旅立つ者。
初めての商業登録。
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商業ギルドに着いた僕はストークに言われて商業ギルドカードと料理ギルドカードを受付に渡す。受付の職員はちらっと僕を一瞥するとしばらく書類を調べた。
「リョウエスト・スサン様、ランク上げの手続きをしますので帰りに受付に寄っていただけませんか?」
「んー?商業ギルドの、カード、今日はじめて使う」
「本部より商業関連の手続きが何か出たらランクを上げる、との指示が出ております。よろしくお願い致します」
「わかった」
「今マレイローを呼びますので会議室でお待ちになってお願いします」
「はい」
会議室に向かうとマレイローさんが走ってきた。
「お待ちしておりました。リョウ様、早速手続きをいたしましょう。会議室の中にどうぞ」
「はいー」
「ハッセルエンさんは今日は後見ですか?」
「そうだ」
「なんと。五歳で商業登録とは。末恐ろしい方だ。お座りになってください。どこでも構いません」
「はい」
僕とお父さんは椅子に座った。ストークは後ろに控えている。
「表にある馬車、素晴らしい出来ですね。あの馬車がリョウ様の専用馬車ですね。実に良い」
「ありがと」
「スサン兄弟は3人揃って凄いですね。ロイックさんは今度大きな商談をまとめるとかおっしゃっていて、ストラさんはウルリッヒ殿下とお会いしにいく。そしてリョウ様はまた新しい料理を考えたと。ハッセルエンさん、どうやったら息子さんがそのような素晴らしい功績をあげられるのか教えていただきたいですよ」
「うちは勝手に育ちましたよ」
「実にうらやましい。私の息子もそうなって欲しいです」
「案外子供というのは親の背中を見てるものだと、最近私も気づきましてね、襟を正しているところです」
「なるほど。参考になります」
職員さんがお茶を持ってくる。
「ささ。お茶をどうぞ」
「マレイローさん、今回は料理ギルドも関係する大がかりな商業登録になりそうです。守秘義務の徹底をお願いします」
「かしこまりました。私の胸の内にしまっておきます。料理ギルドが良ければ大々的にやらせてください」
「ええ。その節はよろしくお願いします。じゃあ、リョウ、始めてくれ」
「はい。この道具、使って、甘い物を作るの。全く違う味になるから、商業登録、します」
「その魔法道具を見せてもらって良いですか?」
僕は遠心分離機を取り出す。
「何に使うものなんですか?」
「はい、実演する。この出口にボウルを置く。上の容器に牛乳を入れるの」
「はい。それがどうなるのです?」
「そして、この魔法道具を、動かす」
モビーの回転数が少しずつ上がっていき、牛乳が脱脂粉乳と生クリームに分かれる。
「はい。この片方が、油がぬけた、牛乳。こっちが、油多めの、牛乳になるの」
「そんな分かれ方をするのですね。なんの為にやるのですか?」
「良い質問。レシピ登録前。しー出来る?」
「もちろんです」
「これ使うの」
ハンドミキサーを取り出す。
「これ、先日登録していただいたミキサーですね」
「そう。これでひたすら、混ぜるの。この液に砂糖を入れる」
「はい」
「そしてこのスサン、ハンドミキサーで混ぜるの」
「ほほう」
「いくね」
「どうぞ」
ハンドミキサーで生クリームを立てる。生クリームは角が立つほどの硬さになる。収納からスプーンを取り出すとマレイローさんに渡した。
「マレイローさん、味わってみてー」
「はい」
マレイローさんはひと匙すくうと口にいれる。おーっという表情になって二口、三口と口に入れる。
「おおー。なんですか、これ。全く聞いたことも見たこともないものが出来ましたね。リョウ様、なんでこれを思いついたのですか?」
「んー。なんとなくー」
「これは天才の所業ですね。これの発展形の商業登録と料理レシピ登録が恐ろしい程出そうです。ハッセルエンさん、これも巨額が動きそうですね」
「そうなんですよ。これは流石に秘匿したらまずいと思いまして。マレイローさんなら良いように計らってくれるとすぐに思い、お忙しいとは思いますがすぐ登録させてもらおうとなったのです」
「いえ。これはハッセルエンさんの判断が正しいです。すぐに商業ギルド本部に掛け合わなければならない案件だと確信しています。リョウ様、このマレイローにお任せさせていただきますか?」
「はい」
「従者の方。こちらの書類を作成お願いします」
「かしこまりました」
「しかし驚きました。話を最初聞いた時はピンと来なかったのですが、ここまで凄いとは。こちらは外交に使える武器となりますね。『王国の料理番』の名前は伊達ではないですね。ちなみにこれを使う予定はありますか?」
「ミシェ姉さんの結婚と、ルディス様の婚約祝いに、するの」
「なるほど。それまで秘匿登録しましょう。国家案件ですから」
「良いんですか?」
「ハッセルエンさん。私も一王国の民です。国を思う心を持っております。商業ギルド上層部も同じ志を持っていると信じてます。今回の件は秘匿にすべき案件ですから、お披露目まで裏で動きます」
「秘匿案件にするとマレイローさんの査定がつかないとお聞きしましたが、良いのですか?」
「良いんです。私はスサン商会様の担当になれて十分幸せですから。一件や二件こういうことがあっても私の立場は揺らぎません。ご安心を」
「お待たせいたしました。書類の確認をお願い致します」
「はい。大丈夫です。あとは任せてください。私が全てやっておきます。利益の方も期待しておいて下さい。国家事業になればギルドの上も納得するでしょう」
「リョウエスト・スサン様、ランク上げの手続きをしますので帰りに受付に寄っていただけませんか?」
「んー?商業ギルドの、カード、今日はじめて使う」
「本部より商業関連の手続きが何か出たらランクを上げる、との指示が出ております。よろしくお願い致します」
「わかった」
「今マレイローを呼びますので会議室でお待ちになってお願いします」
「はい」
会議室に向かうとマレイローさんが走ってきた。
「お待ちしておりました。リョウ様、早速手続きをいたしましょう。会議室の中にどうぞ」
「はいー」
「ハッセルエンさんは今日は後見ですか?」
「そうだ」
「なんと。五歳で商業登録とは。末恐ろしい方だ。お座りになってください。どこでも構いません」
「はい」
僕とお父さんは椅子に座った。ストークは後ろに控えている。
「表にある馬車、素晴らしい出来ですね。あの馬車がリョウ様の専用馬車ですね。実に良い」
「ありがと」
「スサン兄弟は3人揃って凄いですね。ロイックさんは今度大きな商談をまとめるとかおっしゃっていて、ストラさんはウルリッヒ殿下とお会いしにいく。そしてリョウ様はまた新しい料理を考えたと。ハッセルエンさん、どうやったら息子さんがそのような素晴らしい功績をあげられるのか教えていただきたいですよ」
「うちは勝手に育ちましたよ」
「実にうらやましい。私の息子もそうなって欲しいです」
「案外子供というのは親の背中を見てるものだと、最近私も気づきましてね、襟を正しているところです」
「なるほど。参考になります」
職員さんがお茶を持ってくる。
「ささ。お茶をどうぞ」
「マレイローさん、今回は料理ギルドも関係する大がかりな商業登録になりそうです。守秘義務の徹底をお願いします」
「かしこまりました。私の胸の内にしまっておきます。料理ギルドが良ければ大々的にやらせてください」
「ええ。その節はよろしくお願いします。じゃあ、リョウ、始めてくれ」
「はい。この道具、使って、甘い物を作るの。全く違う味になるから、商業登録、します」
「その魔法道具を見せてもらって良いですか?」
僕は遠心分離機を取り出す。
「何に使うものなんですか?」
「はい、実演する。この出口にボウルを置く。上の容器に牛乳を入れるの」
「はい。それがどうなるのです?」
「そして、この魔法道具を、動かす」
モビーの回転数が少しずつ上がっていき、牛乳が脱脂粉乳と生クリームに分かれる。
「はい。この片方が、油がぬけた、牛乳。こっちが、油多めの、牛乳になるの」
「そんな分かれ方をするのですね。なんの為にやるのですか?」
「良い質問。レシピ登録前。しー出来る?」
「もちろんです」
「これ使うの」
ハンドミキサーを取り出す。
「これ、先日登録していただいたミキサーですね」
「そう。これでひたすら、混ぜるの。この液に砂糖を入れる」
「はい」
「そしてこのスサン、ハンドミキサーで混ぜるの」
「ほほう」
「いくね」
「どうぞ」
ハンドミキサーで生クリームを立てる。生クリームは角が立つほどの硬さになる。収納からスプーンを取り出すとマレイローさんに渡した。
「マレイローさん、味わってみてー」
「はい」
マレイローさんはひと匙すくうと口にいれる。おーっという表情になって二口、三口と口に入れる。
「おおー。なんですか、これ。全く聞いたことも見たこともないものが出来ましたね。リョウ様、なんでこれを思いついたのですか?」
「んー。なんとなくー」
「これは天才の所業ですね。これの発展形の商業登録と料理レシピ登録が恐ろしい程出そうです。ハッセルエンさん、これも巨額が動きそうですね」
「そうなんですよ。これは流石に秘匿したらまずいと思いまして。マレイローさんなら良いように計らってくれるとすぐに思い、お忙しいとは思いますがすぐ登録させてもらおうとなったのです」
「いえ。これはハッセルエンさんの判断が正しいです。すぐに商業ギルド本部に掛け合わなければならない案件だと確信しています。リョウ様、このマレイローにお任せさせていただきますか?」
「はい」
「従者の方。こちらの書類を作成お願いします」
「かしこまりました」
「しかし驚きました。話を最初聞いた時はピンと来なかったのですが、ここまで凄いとは。こちらは外交に使える武器となりますね。『王国の料理番』の名前は伊達ではないですね。ちなみにこれを使う予定はありますか?」
「ミシェ姉さんの結婚と、ルディス様の婚約祝いに、するの」
「なるほど。それまで秘匿登録しましょう。国家案件ですから」
「良いんですか?」
「ハッセルエンさん。私も一王国の民です。国を思う心を持っております。商業ギルド上層部も同じ志を持っていると信じてます。今回の件は秘匿にすべき案件ですから、お披露目まで裏で動きます」
「秘匿案件にするとマレイローさんの査定がつかないとお聞きしましたが、良いのですか?」
「良いんです。私はスサン商会様の担当になれて十分幸せですから。一件や二件こういうことがあっても私の立場は揺らぎません。ご安心を」
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