僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

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7歳の駈歩。

閑話・手紙。

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拝啓、ルステインにおわすリョウエスト殿

 季節の移ろいも知らぬ遠国の風を思いながら、筆を取る非礼をどうかお許しくださいませ。私は、ミッソリーナ王国摂政、ヤワラン・ミッソリーナです。

 あなたが私たちの国から受けた数々の無礼、危害、裏切りに対し、国家の名をもって深く謝罪いたします。特に、アランザ家の所業――あなたの誘拐を企て、幼き者たちを傷つけたあの暴挙は、もはや言葉では贖いきれぬ罪でありましょう。

 私はその責を取り、アランザ家を取り潰しました。また、その背後にいた王を罷免し、新たに幼き王子を戴き、国を再び正義と誠実の道に導こうとしております。私自身が摂政となり、政治の根本から変えねばならぬことを痛感しております。

 しかし、このような状況を生み出したのは、私を含めた上層の慢心であり、あなたにすべての負担と痛みを押しつけてしまったことを、どうか赦していただきたいのです。

 ルステインにてあなたが、異種族と手を取り合い、子供たちとともに歩む日常を築いておられると聞きます。あなたのその姿が、私の心に真の指標を示してくれました。

 いつの日か、もしご縁がありましたならば……
 この手紙を手始めとして、あなたと再び言葉を交わす機会を得られましたら、これに勝る喜びはございません。

 末筆ながら、貴地の平穏とあなたのご健勝を心よりお祈り申し上げます。

敬具
ヤワラン・ミッソリーナ




ヤワラン・ミッソリーナ様

 お手紙、確かに拝読いたしました。

 まず、遠く離れた国から届いた謝罪の言葉に、私は深い驚きと、そして静かな感動を覚えました。私が受けた仕打ちの数々……それは事実として胸に刻まれたものですが、過去は変えられぬとしても、未来を変える意志を持つ人がいる限り、私はそれに耳を傾けるつもりです。

 あなたが下した決断は並のものではないと察します。国家の中枢にいた家を処断し、王さえも退けるその道は、いかに重く、痛みを伴う選択であったか。あなたのその覚悟に敬意を表します。

 私の名がミッソリーナで語られる時、それが怨嗟や恐れではなく、新たな関係の始まりとして語られる未来を望みます。異種族の手を取り、子供たちの笑顔に囲まれた日々は、確かに幸せですが、それは私一人で築けたものではありません。多くの人の支えと、共に歩む意思があってこそです。

 ヤワラン様、もしあなたが本当にミッソリーナ王国を変えようとしておられるのなら……私は、いつかその地を訪れましょう。そして、自らの目であなたの歩みを見たいと願っております。

 ですが今はまだ、その時ではありません。今しばらく、私はルステインでの務めを果たさねばなりません。子供たちと、民と、職人と……ともに作る未来の礎を、より確かなものにしてから。

 それまで、どうかあなたがその手を止めぬことを願います。

リョウエスト・スサンより



 リョウエストがヤワランの手紙を読み終えた日、ルステインは大いに賑わっていた。公会堂では異種族の議員たちが笑いながら議論を交わし、蒸留所からは香り高い新酒の匂いが流れてくる。料理店では異種族が協働し、街の中心では子供たちがドワーフや獣人とともに走り回り、彼が目指した『共に生きる世界』はゆっくりと、だが確実に根を張っていた。

 メイドのキーカとサッチは、その日の夕方も工房の掃除に励み、ストークはルステイン自治評議会の書類を抱えて走っていた。そんな日常の中で、リョウエストは自室で一枚の地図を開いた。ミッソリーナ王国への道筋。その国が、もう一度『人のために』存在する国に変わるなら、自らの目で見届けに行くべきだと考えていた。

「いつ頃になりそう?」

と尋ねたのは、傍らにいたエメイラだ。エルフの彼女は、いつも鋭い感覚で僕の心を読み取る。

「まだ少し、やるべきことがある。でも……その時が来たら、ちゃんと伝えるよ」
「ちゃんと伝えて。私も行くから」
「ついてくるの?」
「ついていくわよ。あなたを一人にはさせないわ」
「ありがと。エメイラ」
「お礼を言うには早いわ。まだ行ってないもの。それにね、あなたと色々旅をするのも良いな、と思い始めているの」
「ルステインっていう故郷があるでしょ?」
「ええ。ここは私の故郷。戻ってくる場所だわ。でもね、時々私も出かけたくなるのよ」
「そうなんだね」
「あなたと一緒なら楽しそうと思うの」
「わかった。エメイラと一緒にミッソリーナ王国へ行くよ」


 そして、再びヤワランに手紙を書いた。文の最後にはこう添えられていた。

「その時が来たなら、ミッソリーナの青空の下で、あなたと笑って会いましょう」

 それは、かつて傷ついた僕が、自らの手で未来を選ぶという意思表示でもあった。
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