【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

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7歳の駈歩。

思いつきは温かい記憶から。

 冬の夜は、いつだって誰かを思い出させる。だからこそ、僕は「温かさ」をもっとたくさんの人に届けたくなった。

 工房アトリエの作業場で、僕は椅子に座って頬杖をついていた。ストークが運んできてくれたお茶を飲みながら、僕の頭の中では『ある構想』が形をなしていた。

「魔法瘤の消費を抑えて、長時間動く熱源装置……」

 それは、王都でも寒村でも、子どもやお年寄りが火を焚かなくても温かく過ごせるようにという願いから生まれた発想だった。

 でも実現には問題がある。魔法瘤は便利だけどすぐに力を使い果たしてしまう。今の装置じゃ、毎日交換しなきゃならない。しかも魔法瘤は高価だ。消費を抑え、なおかつ強い熱を生み出す仕組みがいる。

 そんな時だった。ボリビエさんが作業場にふらりと現れた。ボリビエさんにそんな話をすると良い話を教えてくれた。

「ねぇ、統領。火食いトカゲの革って、断熱と保温力すごいのよ。ドワーフの間じゃ、昔っから炭火袋に使ってたくらい」
「炭火袋?」
「うん。革袋に少しだけ炭火を入れて持ち歩くの。小さな魔法瘤でも温度が逃げないって、ヂョウギが言ってたわ」

 ピンと来た。

 熱を保ち、逃がさず、少しの魔力でずっと温かい。そんな素材があるなら……それを『装置』にできる!

 その夜、僕は興奮して眠れなかった。すぐにヂョウギとブルッグを呼び、革の加工技術と、魔法瘤の安定供給について相談を始めた。

「できると思うぜ、統領」

 ブルッグの笑顔は、いつも少し不敵だけど頼りになる。

「革の厚みを均一にすれば、放熱率もコントロールできるはずです」

 ヂョウギの言葉に、僕は大きくうなずいた。

 さらに翌日、小人族の代表クルムさんがやってきた。

「ねぇ、内装の断熱はわたし達に任せてくれる? 断熱性のある革で中敷を作ってあげるわ」
「本当に? すごい……!」

 クルム達の仕事は緻密で、美しく、そしてとても丈夫だ。

 そして執事のストークも、開発の補佐に名乗り出た。

「リョウ様、部材管理と組み立て段階の工程表は私が作成いたします。すでに革の在庫と供給状況は調べてあります」

 まるで僕が何も言わずとも、周囲が動いてくれる…そんな信頼がうれしかった。

 ここからが本番だ。問題は、どうやって魔法瘤の熱を効率よく使い、それを革で包み込む構造に落とし込むか。

「いっそ、魔法瘤の熱を芯にして、その周りを革と魔獣糸で包んだ層にすれば…」

 そう僕がつぶやくと、ヂョウギが腕を組み、うなった。

「…それだと統領の言う通り、たった一個の魔法瘤で十日は保つかもしれないですね」

 僕は口元が緩むのを抑えられなかった。
 初期の設計図が完成したのはそれから三日後のことだった。

 僕は作業机に広げた図面に目を通しながら、革の厚みや魔法瘤の位置、空気の流れなどを指でなぞっていく。魔法石の発する熱を逃さず、なおかつ一定の温度に保つ…このバランスが難しかった。

「リョウエスト様、試作一号機の組み立て、完了しました」

 ストークが恭しく報告する。僕はドワーヴンベースの奥にある作業場へ向かった。

 そこには、手のひら大の丸い装置が置かれていた。外側は火食いトカゲの革で、内部はボリビエさんとクルムさんが仕上げた断熱素材。中央部に魔法瘤のカートリッジをはめ込み、装置のスイッチを入れると…。

「…温かい!」

 手をかざすと、まるで春の日差しのような柔らかな熱が手のひらを包んだ。すぐそばにいたブルッグが、鼻を鳴らす。

「悪くねえ。これでどれだけ持つか、テストが要るな」
「さっき入れた魔法瘤、3日前に採れたばかりです。正確な消費量が測れますぞ」

 ヂョウギの準備の良さに、思わず頬が緩む。

 温度の安定性、持続時間、耐久性。それらを一つ一つ確認していく日々が始まった。

 とくにクルムの断熱素材は驚異的で、革の外側がほんのりと温かい程度で中の熱を閉じ込めることができた。これは大きな成果だった。

 だが、問題はすぐに表面化する。熱の持続はするが、外気温が低すぎると内外の温度差で結露が起き、内部の部材が傷みやすくなるのだ。

「このままじゃ、寒冷地では使えないかもしれない」

 僕が眉をひそめると、ブルッグがポンと胸を叩く。

「なら、空気の流れを工夫しろ。換気口を付けて、一定時間ごとに結露を飛ばすんだ」
「なるほど…タイマー式のモビーを利用した風魔法機構を組み合わせれば…!」

 さっそく僕は部材を取り寄せ、新しい設計に取りかかった。これはスージーに手伝ってもらった。忙しいのにありがとう。

 一週間後。試作二号機は完成しついにフィールドテストに出すことになった。

 テストは、ルステインの中山間地の農村に暮らす老夫婦の家で行った。甜菜農家だ。冷たい石造りの家屋に小さな装置を設置し、魔法瘤一つでどれだけ持つかを試す。

「最初の夜から、違ったよ。冷えが消えて、空気が柔らかい」

 老夫婦は目を細め、そう話してくれた。装置はそのまま十日間稼働し、魔法瘤はわずかに力を残していた。

「成功…ですね」

 ストークの低く落ち着いた声が、静かに響いた。

 けれど、これで終わりではない。量産体制の整備、価格の調整、革の安定供給…やるべきことは山積みだ。


「…ねえ、これで冬が苦手な子も、少しは楽になるかな」

 僕の呟きに、ヂョウギがにやりと笑う。

「なるでしょう。温かいってのは、命を守るってことです。統領は良いことを考えました」

 
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