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第1章
父の怒りは制される
しおりを挟む父が依然顔色が悪いままのサムエル様に宣言したのち、なぜかニヤニヤとした顔のままロディ様の腕にくっついているロシェンカ嬢に向かって指をさし、慰謝料の請求を行うと宣言する。
お父様がこんなに憤慨なさっているのを見るのは初めてですね。
「まっ、待ってくれ!そんなことされたら我が家は」
「知らん!!こんなに馬鹿にされ、娘まで侮辱され、心配してやる義理はない!そもそも素晴らしい素晴らしい歴史をお持ちのドルマン侯爵家であればたかだか伯爵家であるナシェルカ家に融通してもらわずともなんとでもできるだろう!
支援金に関しては1か月間の猶予をくれてやる。ただし、1日ごとに利子をつけさせてもらう!今まで無利子だったんだからそれくらいはなんの問題もないだろう。大層素晴らしいドルマン家に無利子だなんて、反対に失礼な行為だったのだろう。なんの心配もしてはいませんよ。うちはしがない伯爵家ですのできっちりと清算してもらう!!重ねて申し上げる。猶予は1か月!返済が1日でも遅れれば裁判所に差し押さえ命令を要求する!以上、失礼する!!」
追いすがろうとするドルマン侯爵に対して父は言い放つ。
お父様……きれっきれ……さすがにロディ様の言いように頭に来たのでしょう。あの言いようは私もかなり腹が立つ。そして、ロシェンカ嬢のよいしょにさらに腹が立つ。
ロディ様に対しては、よくやったと褒めたいところだが、赤の他人がそれを褒めるのは容認できるものではない。
大層お怒りのお父様に続き私とお母様も退席する。
通り過ぎる際、婚約者であったロディ様とロシェンカ令嬢が腕を絡めたまま未だニヤニヤといやらしい笑顔を顔に張り付けたままこちらを見ているが、この状況がまだわかっていないのだろうか。なんとも粗末な頭のお持ちの様子。でも残念ながら……いや、有難いことにもう他人様。そのまま素通りするに決まってる。
この後しっかりと自分たちで事の重大さを思い知ればいいのよ。
そうして順に馬車に乗り込み、最後に「ふぅっ、ふぅっ」と鼻息荒くした父が私の対面の席に腰を下ろすと、ゆっくりと馬車が走り出す。
徐々にスピードを上げていく馬車。
窓からはだんだんと小さくなっていくドルマン侯爵邸が見える。その様子にもうここへ来なくていいことを考えると嬉しくなってくる。
苦痛だったお茶会もなくなり、今後はエスコートをしてもらうこともない。
エスコートされるだけの30分もかからない程度のことでもやはり精神的苦痛を感じていたことを今さらながら実感する。
そんな感慨を噛みしめていると隣から少し低めの母の声が聞こえてくる。
「マイケル?怒っていらっしゃいますが、反省なさいまし!あなたが安易に娘の婚約を決めてしまったのが悪いのです!もしこれが結婚後だった場合、どれだけサリーが肩身の狭い思いをした事か!あちらは由緒正しきドルマン侯爵家がどうしてだなんて、我が家の事をばかにしていたのよ!!他人の不幸の心配よりも自分の娘の幸せを優先なさい!!もし今後このような事をされる場合は離縁を覚悟なさってください!!」
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