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第1章
デイヴィッド・ベルジャン公爵令息
しおりを挟む「キャロル様、ごきげんよう。お心配り頂きありがとうございます。
本当に、家柄が素晴らしい方は人格者であるべきなのに、そうでない方もいらっしゃるのだと実感いたしますわ……」
「なっ!」
私の言葉にキャロル様が顔を真っ赤にして言葉に詰まっている。今日は皆さま顔を赤くされる日なのかしらね。
それにしても私はロディ様のことを言ったつもりなのに誰かお心当たりでもあるのかしら。
「そんな可愛げのないことを言っているから婚約破棄などされてしまうのです!」
婚約破棄は女性にとって不名誉なこと。どんな事情であれ婚約破棄された女性は傷物と評され、次の婚約は格下の方や問題ありの方を勧められることが多くなる。
それでも私にとっては婚約継続のほうが不名誉なことだった。だから婚約破棄などされてしまったわけではない。
「そうですね。婚約破棄して頂けて、大変光栄に思っておりますわ。
家柄がいい方にはこちらからはなかなか申し立て出来ませんので、その貴重な機会を与えて頂いたと本当に有難く思っておりますの」
「なっ!」
そう!私からの婚約破棄は立場的にも難しかった。
あの夜母は婚約破棄すると言ってくれていたけど、強引に事を進めていたら周りからはあまりいい顔はされなかったと思う。
ただでさえ爵位に合わないほどの財を有していると、こんな風に目をつけられているのに。
だから本当にいい機会をもらったと思っている。
だから素直にそう言うとキャロル様は一瞬驚いた顔をした後、まるで憎いものを見るかのように私を睨みつけてくる。どうして伯爵家の私ごときの婚約に、こんなに敏感に公爵令嬢が反応するのか理解ができない。
「サリー嬢、アイシャ嬢、ごきげんよう」
もうそろそろキャロル様との会話を切り上げてご飯を食べに行きたいと考えていたら、デイヴィッド・ベルジャン公爵令息が目の前から現れた。
次から次にどうしてこう集まるのかしら……
廊下の、しかもこの時間の学食に向かう道。どんどんギャラリーが増えてしまっている…
私たちとは少し離れていても、わざと大きな声で話すキャロル様の言葉が聞こえてしまうくらいの位置に多くの学生たちがこちらを見て立ち止まっている。そしてそんな様子を見て、今通りかかった他の学生たちも足を止めてしまう。だから私たちがここから去らなければどんどんギャラリーが多くなってしまうのに……
そんなギャラリーは気にもならないのかデイヴィッド様の姿を認めて、キャロル様の取巻きさんたちは「キャー」と小さな声を漏らし、頬を赤く染めている。そうしていればとても可愛らしい女性たちなのに……
残念ね……
切り上げたいとは思っても声をかけられたら返すのが人の性。スカートの裾をつまみ、控えめに挨拶をする。
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