【完結】前代未聞の婚約破棄~なぜあなたが言うの?~【長編】

暖夢 由

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第1章

フレッド様

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自分のオレンジのドレスを眺めながら次回のドレスには花のレースを被せてもらうようにお願いしようかななんて思っていると執事のトムが応接間に呼びに来てくれた。
お迎えが来たのだろう。そう言えば、名前は内緒ねとデイヴに言われ、明かされていない。でもデイヴとアイシャも知っている人ということで、悪い人は紹介されないだろうとそのまま了承したのだ。
門の前まで向かうと馬車の前に男性が立っており、私に気づくと足を進めてくれる。


「はじめまして。サリー・ナシェルカ伯爵令嬢。この度はパーティーでエスコートする許可を下さり、ありがとうございます。私フレッドと申します。正式な自己紹介はパーティー会場にてさせて頂きますので、それまでの時間、ただのフレッドとしてお話させて頂くことを許可頂けませんか?」


名前も明かせない人なのか、私が信用に足りないと思われているのかと、そう思ったけれど、今日のエスコート役だけの人。だから彼の提案を素直に受け入れる。
もしかしたら今まで女性関係で問題があったのかもしれない。


だって驚くほど綺麗な人。
私は婚約者とうまくいっていなかったこともあり、特産品の売り込みがなければ今まであまり積極的に社交の場には出ていかなかった。だから顔を知らない方も多い。特に高位貴族の男性の方はなかなかお話する機会がない。
だからかもしれないけど、それでもこんなに綺麗な顔の人は知らない。ちょっと赤みがかった茶色の髪に緑の瞳、見上げるほどの身長に、細いのに鍛えているのがわかるその身体……
今日のまぶしいほどの太陽にあたり、髪の毛はキラキラと輝いている。その様子からよく手入れされているのがわかる。


どうしよう。道端で見かければ追いかけて行ってしまいたくなるほど綺麗な男性だわ。


「はじめまして。サリー・ナシェルカと申します。フレッド様、本日はどうぞよろしくお願いいたします。」


私が挨拶をするとそれに応え、そのまま私をエスコートして馬車に乗り込む。すぐに馬車が王宮へ向かって走り出した。王宮までは半刻くらい。ロディ様のように無言だろうかと不安に思っていたけれど、色々と話しを振ってくれて、初めてとは思えないほど会話が弾んだ。長いと思っていた時間はあっという間に過ぎていった。
特に今日のドレスのことを質問されると話し過ぎてしまったと、恥ずかしくなるほど盛り上がってしまった。


「ナシェルカ領の最近の特産は織物だと伺っています。サリー嬢のドレスもナシェルカ領のものなのですか」


「はい、ナシェルカ領で作ったドレスです。特殊な糸を使って織りあげているのですが、色の部分は野菜で糸を染め、その糸で織っているのです。」


「糸を野菜で染める?ですか?」


「はい。例えばこのドレスならオニオンの皮で染めております。我が領では野菜の収穫も多いのですが、野菜は捨てる部分も多く、その処分にも頭を悩ませていました。その時に野菜から色が出ると知り、試してみたところ、とても綺麗な色が出たので、ドレスを作ることにしたのです。」


こんな話を力説してしまってから男性がドレスの話なんか興味があるのだろうかと不安になった。特に野菜なんて…貧乏くさいと思われただろうかと、急に恥ずかしくなってしまい「なんだか申し訳ございません」と謝ると、「謝る必要はありません。自分が知らない知識をとても興味深く聞かせて頂いております」と言って頂ける。
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