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第1章
殿下の謝罪
しおりを挟むなんだろう、誰か訪問する予定でもあったのかしらとふとのぞき込むと赤みがかった茶色の髪の毛に高身長の男性の姿が目に入る。
私が慌てて玄関ホールに向かうと、ちょうど父とフレッド様が話はじめるところだった。
「ナシェルカ伯爵、先ぶれも出さず突然の訪問となったこと謝罪させて頂きます。」
第2王子であるフレッド様がそのようにおっしゃっている。
昨日エスコートして頂いたのがフレッド様であったことは簡単にパーティー会場で両親に報告した。ホールでダンスを踊っていたのを見ていたようであまり驚きはなかった。なぜ”簡単”にかというのは私自身がなぜエスコート頂いたのかわかっていないため、フレッド様やデイヴから聞いた話しかわからず、その内容のみを伝えたから。そして、本日父よりフレッド様への御礼状を用意する予定だった。エスコートを受けたのは私だが、さすがに未婚女性からフレッド様へ直接文を出すとなるとどんな勘ぐりがあるかわからないので父から出す予定だったのだ。
それなのに文を出すよりも前にフレッド様が家に来られた。昨日先に帰ったことが悪かっただろうか……そんな一抹の不安が心を過る。
「いえ、殿下。わざわざこのような場所に足を運んで頂き、身に余る光栄です。また、昨夜は我が娘のエスコートをして頂き、重ねて御礼申し上げます。」
私も父の後ろに立ち、父に倣い腰を落とし、感謝の意を表す。
「いや、あれはこちらの我儘に付き合わせてしまっただけのこと。それなのに一人で帰してしまった。ナシェルカ伯爵、サリー嬢、申し訳ありません」
そう言ってフレッド様が頭を下げられた。
王族が家臣に頭を下げるなどそうそうない。いや、ほとんどありえない。
その光景に私も父も驚いてしまう。
「殿下、おやめください!」
「殿下、昨日先に帰ったのは私の意志であり、殿下が謝罪される必要などございません。私こそ勝手なことをしてしまい大変申し訳ございません」
昨日エスコート無しに一人で帰ってしまったのは、私の勝手な判断でしかない。
他の令嬢の機会を潰してしまってはいけない。殿下もきっと他の令嬢たちと楽しんでいるだろうと考えて勝手に行動した。それなのに殿下に頭を下げさせてしまうなど…どうしたらいいのかと父と2人でおろおろしているとフレッド様がゆっくりと頭を上げた。
「いや、昨日は私からエスコートを申し出たのに、その相手を置いて他の令嬢と踊った私に落ち度があります。大事な令嬢を一人で帰してしまうなど男としてあるまじき行為。その贖罪としては全然足りませんが、こちらをお持ちしました。」
フレッド様の言葉と同時に、フレッド様の後ろに控えていた護衛の服を来た男性が2つ箱を差し出す。
「これは隣国のウィスキーです。ナシェルカ伯爵は酒を嗜むと聞きました。それとこちらは奥様に。皇室御用達の製菓店のスイーツです。」
中を確認させるように、護衛の方が一つずつ箱を開けて見せてくれる。
お酒の価値はわからないが、箱から見ても高級品であることは間違いない。それに皇室御用達のスイーツは販売数が限られている為、中々手に入らない。そんなもの…絶対母は喜ぶに決まっている…
隣の父はすでに顔が緩んでいる…
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