【完結】前代未聞の婚約破棄~なぜあなたが言うの?~【長編】

暖夢 由

文字の大きさ
47 / 166
第1章

あの糸は…

しおりを挟む

公表は3か月後。その時に伯爵家の陞爵の件と新しいナシェルカ公爵領についても発表される。
まだまだ色々なことに頭の整理が追いついていない私たちには3か月の猶予があるの。
少しずつ頭の中を整理していこうと思う。
だが、領地のことに慣れるのは早ければ早いほどいいと、フレッド様は基本的な生活を我が家で始めた。
部屋はとりあえず客間を用意し、お父様と一緒に積極的に領地回りをしてくれている。


そして私が学校から帰って、時間が合えば必ずお茶に誘ってくれる。


「そういえばサリー、ドレスに使っている糸はどうやって作ったの?領地の特産物の情報はむやみに言えないかなと思って深くは聞かなかったけれど、婚約者になったから聞いてもいいかな。」
今日も私が学校から帰って、お茶をして、学校の出来事などを話していると、急にフレッド様からそんな質問が飛んでくる。
確かに特別な糸としか説明していなかったな。でも領地を回っているときにでも父に聞けば良かったのに。


「あれは蜘蛛の糸なんです」
私がそういうと、フレッド様がとても驚いた顔をしている。


「……くも!??くもってあの脚がたくさんある蜘蛛?」


「はい、脚がたくさんあるあの蜘蛛です。


わが領で数年前、大量発生した珍しい蜘蛛がいたんです。
専門家に聞いてみたのですが、新種の蜘蛛じゃないかといわれ、今ではナシェルカ蜘蛛と呼ばれています。その蜘蛛が本当に繁殖能力が高く、その上一度巣を張ったら、糸が丈夫過ぎて、処理するのも大変だったんです。

私はたまたまその時期領地に帰っていて、その状況を見ていたんです。そして本当に偶然なんですけど、何匹かの蜘蛛が同じような場所に巣を張り、それが輝いて見えたんです。何匹もが作った巣が重なってしまって、その巣は雨が降ってもきれいな形を保ったまま壊れませんでした。その巣がなんだか気になって触ってみたんです。そしたら雨の後だったからか、その巣はさらさらとしていて、触り心地も悪くなく、それに手で触っても切れにくかったんです。


だから、当時から私の遊び相手になってくれていたアンと一緒に、綺麗な蜘蛛の巣を集め、一本一本ほどいて洗ってみたんです。最初は切れたりしてたんですけど、要領がわかってくるとするするするっとほどけていって楽しいんですよね。そしてその糸で小さいものですけど、布を作ってみたんです。全然布なんて言えるような物ではなかったけど、それでも布になりそうな物になったんです。


そこからは領民たちとやり方を考えて、蜘蛛が多くなりすぎないくらいに増やせないかと話し合いました。色々と試しながらやってみたんですが、なぜか迷惑になるほど蜘蛛が多くなることはなかったんです。そしてほかの蜘蛛はここまでではないようですが、ナシェルカ蜘蛛は糸で玉を作り、その中で子どもを育てます。子どもが玉の中にいる間は自分の近くで守るんですが、子蜘蛛がそこから巣立つとその玉を手放すのです。だからそのいらなくなった玉をとって糸を作っているんです。そうしてみると、きれいな糸の玉が取れ、それから糸が確保できるようになったんです。
しかも一つの巣の中で育てる蜘蛛の数がかなり少ないおかげで、かなり多くの糸玉が確保できるんです。
ただ、難点なのが探すこと。たまには高い所にあったり、たまには踏みつけてしまいそうになったりと探すことだけが難しんです。


それを子どもたちが遊び感覚で集めてくれるようになりました。だから本当に遊びの場に見立てて糸玉1個取れるといくらの特典付きの遊び場にしたんです。。そしたら大量に取ることができて、人件費もかなり安く抑えることができました。それと同時に子どもたちのお小遣い稼ぎする場ができ、領民の懐も少し潤ったんです。


そしてきれいに見えるようにと、洗い方も工夫してしてみると、とてもきれいな糸にすることができました。それを今まで繭の糸でシルクを仕上げていた職人さんに持って行って同じように編んでほしいとお願いしました。すると出来上がった物は予想以上。とてもきれいなものができたんです。


そこからはもうみんなで協力してあっという間に製品化しました。面白かったのは編んでくれた方。自分もこれを作るのに協力する!といってわざわざわが領地に引っ越してきてくださったんです。


そしたら、農家さんたちが自分たちも蜘蛛をやった方が儲かるだろうかって言ってきて。もちろん蜘蛛もいい産業になる気がするんです。でも領地の野菜がおいしいことだって自慢なんです。だから野菜の方もどうにかしたくていろいろ考えていたら色をつけられるってわかって………ってすみません。話しすぎですね。


と、とりあえず、蜘蛛の糸なんです……」


こんな事を話せることがとても楽しく、ひとりで熱くなって話してしまったけれど、ふと目に入ったフレッド様がとてもニコニコしていて、急に恥ずかしくなってしまった。もう普通の淑女だなんて思っていないと思うけれど、それでも淑女がこんなに熱くなって話すべきではなかった……恥ずかしい……
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした

果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。 そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、 あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。 じゃあ、気楽にいきますか。 *『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。

悪役だから仕方がないなんて言わせない!

音無砂月
恋愛
マリア・フォン・オレスト オレスト国の第一王女として生まれた。 王女として政略結婚の為嫁いだのは隣国、シスタミナ帝国 政略結婚でも多少の期待をして嫁いだが夫には既に思い合う人が居た。 見下され、邪険にされ続けるマリアの運命は・・・・・。

良いものは全部ヒトのもの

猫枕
恋愛
会うたびにミリアム容姿のことを貶しまくる婚約者のクロード。 ある日我慢の限界に達したミリアムはクロードを顔面グーパンして婚約破棄となる。 翌日からは学園でブスゴリラと渾名されるようになる。 一人っ子のミリアムは婿養子を探さなければならない。 『またすぐ別の婚約者候補が現れて、私の顔を見た瞬間にがっかりされるんだろうな』 憂鬱な気分のミリアムに両親は無理に結婚しなくても好きに生きていい、と言う。 自分の望む人生のあり方を模索しはじめるミリアムであったが。

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

謹んで、婚約破棄をお受けいたします。

パリパリかぷちーの
恋愛
きつい目つきと素直でない性格から『悪役令嬢』と噂される公爵令嬢マーブル。彼女は、王太子ジュリアンの婚約者であったが、王子の新たな恋人である男爵令嬢クララの策略により、夜会の場で大勢の貴族たちの前で婚約を破棄されてしまう。

【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。

五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」 オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。 シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。 ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。 彼女には前世の記憶があった。 (どうなってるのよ?!)   ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。 (貧乏女王に転生するなんて、、、。) 婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。 (ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。) 幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。 最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。 (もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)

【完結】優雅に踊ってくださいまし

きつね
恋愛
とある国のとある夜会で起きた事件。 この国の王子ジルベルトは、大切な夜会で長年の婚約者クリスティーナに婚約の破棄を叫んだ。傍らに愛らしい少女シエナを置いて…。 完璧令嬢として多くの子息と令嬢に慕われてきたクリスティーナ。周囲はクリスティーナが泣き崩れるのでは無いかと心配した。 が、そんな心配はどこ吹く風。クリスティーナは淑女の仮面を脱ぎ捨て、全力の反撃をする事にした。 -ーさぁ、わたくしを楽しませて下さいな。 #よくある婚約破棄のよくある話。ただし御令嬢はめっちゃ喋ります。言いたい放題です。1話目はほぼ説明回。 #鬱展開が無いため、過激さはありません。 #ひたすら主人公(と周囲)が楽しみながら仕返しするお話です。きっつーいのをお求めの方には合わないかも知れません。

処理中です...