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第1章
平民に指示されて働くなんて(元ドルマン侯爵視点)
しおりを挟む「おい!!サムエル!
今日はまだ牛とヤギの掃除ができていないぞ!早くしろ!」
まだあたりも薄暗いのにそんな声が聞こえてくる。
山の麓にある家に住んでいる私の仕事は牛とヤギの世話。
ここは元々ドルマン家の領地で、今まで私が治めていた場所。
それなのに、今は平民に指示されて働いているだなんて。
「私が掃くより早いんだから自分ですればいいじゃないか!」
私がイライラしながらそういうと男はにやりとしながら言う。
「そうだな。じゃあ俺が終わらせたらお前は食事抜きだな。それでよければ俺がやってやるよ」
………くそっ!!なんでこんなことになったんだ!!俺は侯爵なんだぞ!!!
父が領主の頃から領地経営はうまくいっていなかった。
そしてうまくいかないまま領主交代をし、私が新当主となった。正直私ならもっとうまくやるのに、うまくやれるのにと思っていた。だが理想とは程遠く、なにをしようとしてもうまくいかず、お茶会をして支援を募ろうとしても上手く行かなかった。上手くいかなくともお茶会代にも資金は必要で、それでもお茶会でもせねば更に支援金の話など出来ず、完全に行き詰まっていると、借金は徐々に膨れていった。
そんな時同級の伯爵家の経営が上手くいっており、伯爵のままでいるには支障が出ると言われるほどだと噂を耳にした。
あいつは学生の頃から頭もよく、要領も良く戦略家だった。伯爵家のくせに、いつもあいつが成績の上位に入っていて、俺では入れないトップクラスにいた。
このままいけばすぐに侯爵にもなることだろう。
くそ面白くない!!
ならば学生の頃から情に脆いあいつに、頭を下げて頼み込んでやろう。きっと断ることなく言われる分だけ支援するはずだ。
そうだ。そうすればもう経営なんかに頭を悩ませる必要もない。あいつが勝手に稼いだ分がそのまま俺の所に転がり込んでくる。あそこの娘とロディを結婚させればそれこそ俺は死ぬまで安泰じゃないか!!
そうと決まれば早速伯爵家に行こう!!
そう思ってからはまさに勝ち組だった。伯爵の娘との婚約を勝ち取り、支援も得られた。これならばもう何があっても金の心配をする必要はない。黙っていても伯爵家が稼いでくれる。
由緒正しき侯爵家当主が伯爵家なんぞに頭を下げてやってるんだ。しっかりと稼いでくれ。
そう思っていたのに!!
ロディの奴が勝手に婚約破棄など言い渡した。
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