【完結】前代未聞の婚約破棄~なぜあなたが言うの?~【長編】

暖夢 由

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第1章

侯爵に向いていなかったのかもしれない(元ドルマン侯爵視点)

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「野菜はどうしたんだ?」


私が聞くと妻が食べながらぶっきらぼうに答える。


「ライズさんが食べられる野菜が生えている場所を教えてくれました。ですが、食べればなくなります。今日仕事が終わったらいくつか種をもらったので植えたいと思います。
もしもあなたも食べるようでしたら手伝ってください」


仕事だけでこんなに身体が痛いのに、仕事が終わっても身体を動かすのか?


私がそんな事を思ったのを見越してか


「手伝わないのであれば今後はあなたの分の食事は作りませんので。
ご自由にどうぞ」


……………


そんな事を言われたら身体を動かすしかない。
こんなに身体を動かしては腹が減る。食べないなんて無理だ……


こうして、日中はノエルたちをヤギや牛の世話をし、それが終われば妻と二人で毎日少しずつ野菜を植えるという毎日を過ごしている。
正直こんな生活耐えられないと何度思ったかわからない。


だが、最近ではこれが身の丈に合った生活なのかもしれないと思えてきた。


牛やヤギを小屋にいれてから妻と二人で土を耕す。
だが、初めての作業にこれがかなりの重労働なのだと思い知る。


土は表面はまだいいが、掘り返していくとだんだんと土は硬くなっていて、スコップをいれるのもしんどい。
だが、時間をかけると妻に「遅い!早くしてください!」と怒られるようになってしまった。


辛い……毎日が辛い……


だが、自分でやることが形になって目に見えるのは嬉しいことだと思う。
初めて蒔いた種から芽が出たとき、声を出したくなるほど嬉しかった。
はたから見たら草みたいな小さな芽。それが出てくることが嬉しいなんて思わなかった。
侯爵の時にはこんな事思わなかった……
いや、思うような事は出来ていなかった。


今さらだが、私は元々侯爵には向いていなかったのかもしれない………



*************


サムエルたちがこの地に来て1年ほど経った頃、ノエルとライズがいつものように朝柵を開けて牛とヤギの世話に向かおうとしていると、サムエルの妻が青い顔をして二人の前に現れた。

昨夜からサムエルが戻らないんだという。昨夜、サムエルは1頭牛の数が合わず、山に探しに行ってそのまま帰ってこなかったそうだ。

話しを聞いて二人が山に様子を見に行くと、山の中で大きな足跡とその近くに大量の血だまりを見つけた。
そのあとしばらく足跡を追って歩いていくと、熊の大きな糞を見つけた。その中に作業服の切れ端が見つかった。
そのことをサムエルの妻に伝えると「分かりました」と冷静な答えだった。
だが、二人が離れた後、しばらく泣き声が聞こえていた。

サムエルがこの地の生活にも慣れ、こんな生活も悪くないと思い始めていた矢先の出来事だった。
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