選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由

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62.グレンの手紙

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『愛するナタリア・パレドス様へ

まず手紙を手に取ってくれ、そして読んでくれてありがとう。

君には許されないことをしてしまった。本当に申し訳ない。
謝っても許されることでないのはわかっている。だが、どうしても君に伝えたかったんだ。

僕は君を本当に愛していたんだ。いや、今でも愛している。

初めて会ったとき、色が白くて、笑顔がとてもよく似合う女の子で、本当に天使が舞い降りてきてくれたのだと思った。

そんな天使が僕の婚約者だなんて、僕はどれだけ運がいいのだろうと喜んだよ。

君と行ったすべての場所が僕の記憶に残っている。

街で花屋に行ったとき、ピンクの花が可愛いと笑ったナタリー。

宝石店でイヤリングをプレゼントしたとき、身に着けてほしいと言った僕に「ずっと大切にします」と照れながら微笑んだナタリー。

カフェでお茶したとき、クリームのケーキを食べて美味しいと笑ったナタリー。


どれも僕の記憶の中で色褪せる事がないんだ。


だが、ナタリーがアルバとの関係を知ったと聞いた。だから家から飛び出してしまったのだと。
本当に後悔したよ。なぜアルバなんかに身体を許してしまったのか。だがあれは、アルバを愛していたからではない。僕がずっと愛しているのはナタリー君だけだ。

それでも僕も年頃の男でどうしても性欲が出てきてしまう。しかし、ベッドで寝込み、顔色のよくないナタリーにそんなやましい気持ちを持つことはできない。だから私はアルバとの関係を持つことにしてしまったんだ。

だが、それをナタリーが知ってしまったときどれほど傷ついただろう。
あの頃の僕はそんなことにさえ気が回らなかったんだ。本当に申し訳ない。

そしてナタリーがいなくなって、アルバとパレドス当主夫妻に、

「きっとナタリーはどこかで死んでしまっているんだろう。ここのところ体調もよくなかった。あんな状態で薬ものまずにいれば、3日と持たなかったのかもしれないと。

もしこれが社交界にばれれば、子がどこに行ったか把握できない自分たちも、不貞をしていた僕も大変なことになる。幸い、アルバもナタリーもまだ社交界デビューしていない。アルバをナタリーとしてデビューさせればすべてがうまくいく」

と、そういわれたんだ。

だから愚かな僕はその提案に乗ることにしたんだ。
1週間探しても君の手がかりすらつかめなかったからね。
本当に君がこの世から離れてしまったと信じて疑わなかった。

それが君の心をさらに傷つけてしまうなんて考えもせずに。

本当に申し訳なかった。
謝って許されるのならいくらでも謝る。が、そんな事で許されるものではないだろう。
だから私は裁判所の判決通り、製鉄所で労働を行ってくるよ。

そして願わくば、いつか君に許され、また………
いや、この後は会ったときに言いたい。製鉄所での労働を終えたとき、僕はきっと君に会いに行くよ。その時は続きを言わせてほしい。

それまでどうか幸せで。

僕の心の中には永遠にナタリーがいると誓うよ。

僕は永遠にナタリーの虜なんだ。


ナタリーを愛するグレンより』
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