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しおりを挟むサロンに向かうまでの間にもフレッド様が私に昨夜のことを謝ってくださいますが、こんなに気にかけて頂くとわかっていたなら先になど帰らなかったのにと思ってしまいます。私もきっと7年もの婚約期間の中で『普通』が変わってしまっていたのだと思います。そのためにこんなに気を使わせてしまい、申し訳ないの一言ですわ。
それから少しすると食事が運ばれてきます。
今日のメニューはチーズソースの温野菜のサラダ、オニオンスープ、ラム肉のソテー、ブルーベリーのタルトです。どれも領地でとれたものばかりでとても美味しいのです。
フレッド様はどの料理を食べても「うまい、これも領地でとれたものですか?」と聞いてくれます。そうです。わが領地は気候に恵まれ、とても美味しい食材が取れるのです!
そして落ち着いてタルトを食べているときにアンからさっき染めたばかりのハンカチをフレッド様の護衛に渡してもらいます。今日は天気も良く、薄いハンカチはよく乾いています。
「これがブルーベリーで染めたもの?このブルーベリーがこんな色を出すのですか?」
今食べているブルーベリーをフォークで掬いながら興味深げに見つめております。
ブルーベリーの実から連想されるのは濃い紫色ですが、染めようと思うとなかなかそこまで濃い色は出ないようですね。
「サリー嬢、実は隣国との交易をもっと盛んにしたいと考えているんだ。しかし、国として今のままでは目玉になる商品が弱いと思っている。今国として他国では珍しい宝石「トパーズ」を売りに出しているが、流通され始めると物珍しさもなくなり、買い手も減ってくるだろう。今後も続いていけるような産業を国としての目玉にしたいと考えているのです。そこでナシェルカ伯爵領に手伝ってもらいたい。昨夜のサリー嬢のドレスもアイシャ嬢のドレスもかなり目を惹き、今日にはすでに噂の的になっていました。そしてこの食事も素晴らしい。他国に野菜を卸すとなるとまた流通ルートの確保が必要となってくるが、とりあえずはドレスなどを目玉にすることはできないかと考えている。いかがでしょうか」
突然フレッド様が興奮気味に話された内容は驚くものでした。わが領地の物を他国との交易の目玉に据えるなどびっくりの一言です。ですが、もしそうなればわが領地の特産品が広がりを見せることになります。その提案はとても素晴らしいのです。
ただ、一つだけ...どうしてこの話を私になさるのでしょうか。これは伯爵家当主である父と話すべき内容です。私ではなんの決定権もありません。
「フレッド様、わが領地の物をお気に召していただきありがとうございました。他国との交易の目玉として頂けるのであれば、こんなに光栄なことはありません。しかし、私はただの伯爵令嬢。そのお話は当主である父にして頂きたいのですが」
「もちろんナシェルカ伯爵には話しをさせてもらいます。しかし、この内容で進める場合、必ずサリー嬢の力が必要になる。
今でもドレスづくりなどにはサリー嬢が関わっているのではありませんか」
表立って私の名前は出ておりませんが、ドレス製作をする場合などは私も必ず参加させてもらっています。市場にも何度も通っていた私たちがふと野菜が捨てられているのを見て、農家さんたちにどうして捨てるのか、どれくらい捨てるのか聞きました。ひどいときは1/3を廃棄するときもあり、廃棄するにも処分も困ると言っていました。なにか他に使い道はないのか模索していた時、オニオンの皮はスープにも入れると聞き、その様子を見せてもらいました。それはとても綺麗な色で、その野菜の汁で糸を染めたのが私とメイドのアンです。試して見てから、その色でドレスを作ってもらいました。結果的にとても綺麗なドレスを作ることができ、農家としても廃棄ではなく、安くでも買い取ってもらえるなら嬉しいと言ってもらえました。
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