2 / 8
2
しおりを挟む
「お母さん、妊娠したの」
浄化の旅を一年ぐらい掛けて無事に終えて、国に帰ってきて歓迎のパレードやパーティが終わった次の日のことだ。
お母さんから話があると言われて少し緊張してテーブルに向かい合って座るとお母さんが恥ずかしそうにそう言った。
最初は何を言っているのかわからなかった。
だってお父さんは死んでいるし妊娠なんてするわけないじゃん……
「え……誰の?」
まさかと思いつつそう尋ねるとお母さんは顔を真っ赤に染めて、言いにくそうに小さな声で呟いた。
「……エリオットさんよ」
「は?」
エリオットさん?あの騎士のエリオットさん?私の初恋であり片想い中のエリオットさん?
そりゃお母さんは年齢の割に若々しい見た目だし美人だよ?お母さんは38……いや、先月誕生日を迎えたから39歳で10歳差だしそんなに離れては無いけど……
「私が死ぬ思いで頑張っていたのに何しているの……」
年齢とか年の差よりも何よりも私が旅をしている間に二人で距離を近づけてきているのが問題だった。
私の気も知らないで……私だって、エリオットさんをいいなぁって思っていたけど我慢して!我慢して帰る為に頑張ったのにお母さんは安全な場所で
「ごめんさない……でも、不安で……そしたらエリオットさんが……」
「聞きたくない」
言い訳をしようとするお母さんに思わず冷たく言ってしまい、私は椅子から立ち上がって自分の部屋に戻った。
その後、しばらく部屋から出てこなかった私にお母さんは何度も謝りにきたけれど全部無視をした。
もうあの頃には戻れないのかな?せっかく瘴気浄化出来て帰ってきたのに……こんなことになるならエリオットさんを旅に同行させるべきだった。
そうしたらエリオットさんが選んだのは私でお母さんはずっとお父さんだけを好きでいてくれたのに。
……そう思いながらベッドの上悩んでいるとエリオットさんが部屋を訪ねてきた。お母さんに私のことを聞いて心配になったらしい。
それはとてもエリオットさんらしいなと思いながらも私も話をしたかったから一度外に出て中庭に散歩をしに行った。
「子供が出来たんだってね」
どんな顔をすれば良いのかわからなかったので空に浮かぶ月を見たまま尋ねた。
元の世界の月と違ってここの月はとても青い。
そして私はきっと可愛くない顔をしているんだろうな。
「はい、申し訳ありません。私は……その……」
ああ、謝られても困るよ……本当に家族になろうなんて言われたらどう対処していいかわからない。
そんなの苦しいだけだ。あの人は私に恋をしていないし、私のことなんて妹ぐらいにしか思っていないからね。
「責任を取りたい。彼女との結婚を認めて欲しい」
思わず立ち止まると、エリオットさんも立ち止まって振り返った。その顔はとても真剣で冗談を言っているようには見えない。
「私が許さなかったら結婚は諦めるの?」
「それは……」
「私が認めなかったらお母さんのお腹の赤ちゃんは私生児扱いになるんだよ?その覚悟はあるの?」
「そうではなく…… 」
私が早口でそう言うとエリオットさんはとても辛そうに顔を歪めて泣きそうになっていた。こんなエリオットさんは見たくなかった。
「順番が違うよね?」
私が帰ってきて、妊娠なんてしてなくてお付き合いをしたいと最初に言ってきてくれれば私はまだエリオットさんの手を取れたかもしれない。エリオットさんなら信じられると思ったから……
でももう駄目だよ。もう手遅れで、気持ち悪いとしか感じない。
「私、旅の途中で何度か魔物に襲われたりして大変だったんだよ?宿屋のベッドは当たり外れあるし野宿とかもしてさ、ご飯もあまり美味しくないし、異世界人だからって快く思わない人だっていたの……そう、楽しいだけの旅じゃなかった」
辛いことがあっても元の世界にお母さんと一緒に帰る為に泣くのを我慢して頑張ってきたのだ。
帰りたい場所があるから頑張れたのに……エリオットさんの子供を身籠ったから幸せですって?そんなの絶対に許さない。
私が話している間、エリオットさんはずっと辛そうな顔をしていた。その顔は見ていて胸が痛くなるけれど知ったこっちゃない。それぐらい私は悲しくて怒っている。
「彼女を責めないでほしい……私が先に」
「やめてってば!」
そんな気持ち悪い話なんて聞きたくない。どっちが先に好きになったとかそんなの関係ない。
家族が増えて喜ばれると思っていたのかお母さんもエリオットさんも傷ついた顔して、悲しそうで、それで余計腹が立つ。
そして私はエリオットさんに酷い言葉をたくさん投げつけた。エリオットさんは泣きそうになりながらもずっと黙って聞いていた。
こんなにわがままで酷くて冷たいことを言ってしまって嫌われただろう。
私のお父さんは死んだお父さんだけ、私の家族はお母さんだけ……
涙が出てきて、こんな泣き顔を見られたくなくてその場から走り出した。
浄化の旅を一年ぐらい掛けて無事に終えて、国に帰ってきて歓迎のパレードやパーティが終わった次の日のことだ。
お母さんから話があると言われて少し緊張してテーブルに向かい合って座るとお母さんが恥ずかしそうにそう言った。
最初は何を言っているのかわからなかった。
だってお父さんは死んでいるし妊娠なんてするわけないじゃん……
「え……誰の?」
まさかと思いつつそう尋ねるとお母さんは顔を真っ赤に染めて、言いにくそうに小さな声で呟いた。
「……エリオットさんよ」
「は?」
エリオットさん?あの騎士のエリオットさん?私の初恋であり片想い中のエリオットさん?
そりゃお母さんは年齢の割に若々しい見た目だし美人だよ?お母さんは38……いや、先月誕生日を迎えたから39歳で10歳差だしそんなに離れては無いけど……
「私が死ぬ思いで頑張っていたのに何しているの……」
年齢とか年の差よりも何よりも私が旅をしている間に二人で距離を近づけてきているのが問題だった。
私の気も知らないで……私だって、エリオットさんをいいなぁって思っていたけど我慢して!我慢して帰る為に頑張ったのにお母さんは安全な場所で
「ごめんさない……でも、不安で……そしたらエリオットさんが……」
「聞きたくない」
言い訳をしようとするお母さんに思わず冷たく言ってしまい、私は椅子から立ち上がって自分の部屋に戻った。
その後、しばらく部屋から出てこなかった私にお母さんは何度も謝りにきたけれど全部無視をした。
もうあの頃には戻れないのかな?せっかく瘴気浄化出来て帰ってきたのに……こんなことになるならエリオットさんを旅に同行させるべきだった。
そうしたらエリオットさんが選んだのは私でお母さんはずっとお父さんだけを好きでいてくれたのに。
……そう思いながらベッドの上悩んでいるとエリオットさんが部屋を訪ねてきた。お母さんに私のことを聞いて心配になったらしい。
それはとてもエリオットさんらしいなと思いながらも私も話をしたかったから一度外に出て中庭に散歩をしに行った。
「子供が出来たんだってね」
どんな顔をすれば良いのかわからなかったので空に浮かぶ月を見たまま尋ねた。
元の世界の月と違ってここの月はとても青い。
そして私はきっと可愛くない顔をしているんだろうな。
「はい、申し訳ありません。私は……その……」
ああ、謝られても困るよ……本当に家族になろうなんて言われたらどう対処していいかわからない。
そんなの苦しいだけだ。あの人は私に恋をしていないし、私のことなんて妹ぐらいにしか思っていないからね。
「責任を取りたい。彼女との結婚を認めて欲しい」
思わず立ち止まると、エリオットさんも立ち止まって振り返った。その顔はとても真剣で冗談を言っているようには見えない。
「私が許さなかったら結婚は諦めるの?」
「それは……」
「私が認めなかったらお母さんのお腹の赤ちゃんは私生児扱いになるんだよ?その覚悟はあるの?」
「そうではなく…… 」
私が早口でそう言うとエリオットさんはとても辛そうに顔を歪めて泣きそうになっていた。こんなエリオットさんは見たくなかった。
「順番が違うよね?」
私が帰ってきて、妊娠なんてしてなくてお付き合いをしたいと最初に言ってきてくれれば私はまだエリオットさんの手を取れたかもしれない。エリオットさんなら信じられると思ったから……
でももう駄目だよ。もう手遅れで、気持ち悪いとしか感じない。
「私、旅の途中で何度か魔物に襲われたりして大変だったんだよ?宿屋のベッドは当たり外れあるし野宿とかもしてさ、ご飯もあまり美味しくないし、異世界人だからって快く思わない人だっていたの……そう、楽しいだけの旅じゃなかった」
辛いことがあっても元の世界にお母さんと一緒に帰る為に泣くのを我慢して頑張ってきたのだ。
帰りたい場所があるから頑張れたのに……エリオットさんの子供を身籠ったから幸せですって?そんなの絶対に許さない。
私が話している間、エリオットさんはずっと辛そうな顔をしていた。その顔は見ていて胸が痛くなるけれど知ったこっちゃない。それぐらい私は悲しくて怒っている。
「彼女を責めないでほしい……私が先に」
「やめてってば!」
そんな気持ち悪い話なんて聞きたくない。どっちが先に好きになったとかそんなの関係ない。
家族が増えて喜ばれると思っていたのかお母さんもエリオットさんも傷ついた顔して、悲しそうで、それで余計腹が立つ。
そして私はエリオットさんに酷い言葉をたくさん投げつけた。エリオットさんは泣きそうになりながらもずっと黙って聞いていた。
こんなにわがままで酷くて冷たいことを言ってしまって嫌われただろう。
私のお父さんは死んだお父さんだけ、私の家族はお母さんだけ……
涙が出てきて、こんな泣き顔を見られたくなくてその場から走り出した。
294
あなたにおすすめの小説
拾った指輪で公爵様の妻になりました
奏多
恋愛
結婚の宣誓を行う直前、落ちていた指輪を拾ったエミリア。
とっさに取り替えたのは、家族ごと自分をも売り飛ばそうと計画している高利貸しとの結婚を回避できるからだ。
この指輪の本当の持ち主との結婚相手は怒るのではと思ったが、最悪殺されてもいいと思ったのに、予想外に受け入れてくれたけれど……?
「この試験を通過できれば、君との結婚を継続する。そうでなければ、死んだものとして他国へ行ってもらおうか」
公爵閣下の19回目の結婚相手になったエミリアのお話です。
英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない
百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。
幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。
※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。
冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています
放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。
希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。
元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。
──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。
「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」
かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着?
優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。
【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?
咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。
※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。
※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。
※騎士の上位が聖騎士という設定です。
※下品かも知れません。
※甘々(当社比)
※ご都合展開あり。
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました
山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。
だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。
なろうにも投稿しています。
〖完結〗時戻りしたので、運命を変えることにします。
藍川みいな
恋愛
愛するグレッグ様と結婚して、幸せな日々を過ごしていた。
ある日、カフェでお茶をしていると、暴走した馬車が突っ込んで来た。とっさに彼を庇った私は、視力を失ってしまう。
目が見えなくなってしまった私の目の前で、彼は使用人とキスを交わしていた。その使用人は、私の親友だった。
気付かれていないと思った二人の行為はエスカレートしていき、私の前で、私のベッドで愛し合うようになっていった。
それでもいつか、彼は戻って来てくれると信じて生きて来たのに、親友に毒を盛られて死んでしまう。
……と思ったら、なぜか事故に会う前に時が戻っていた。
絶対に同じ間違いはしない。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全四話で完結になります。
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる