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糸河博士語る。
失敗と成功
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「まず、言えることは。」 糸河博士は白衣の前を直し(彼のくせだ。)ながら解説を始めた。 「この、独逸帝国の兵器は、攻撃を考えて造られています。」 まあ、ミサイルなんだから当然だが。 「私のいいたいのは、そこではありません。」 「この、ミサイルは運用する兵士の安全を考えて造られていないことです。」 「私は伊達に13回連続失敗はしていません。」 まあ、自慢するほどではないが。 「そこで、わたしは、危機管理のバックアップ対策の重要度を骨身に染みたのです。」 「衛星を打ち上げるロケットには、その時、その時の気象や推進薬の燃焼などの不確定要素が重なります。」 「ふむ。」総理は、とりあえず肯く。 博士は続ける。 「この設計でなら、短時間で製造可能ですが、私ならこのミサイルの対抗兵器を造ります。」 「まあ、今回は設計図があるから、どれだけ時間があればコレは出来ますか。」 総理が聞いた。 「3日です。」 「え、もう一度。」 「3日もあれば完成します。」 また、糸河先生の大風呂敷か、と総理は思ったが、ぐっと堪えて、「では、予算は都合つけますから、7日で実験を出来るようにおねがいします。」 「マカセンシャイ。」 糸河大先生博士は太鼓判を押す。 イヤ、いいんかよ? なにか当てがあるのならいいが? 総理をはじめ閣僚らは大ダヌキにダマされた気持ちで会議を終わった。 ・・・・さて、こちらは大風呂敷を広げた帝都大学航空宇宙物理学科宇宙工学研究室付けロケット工学名誉教授の糸河大先生博士(長い名前だが、名刺にかいてあるのだ。)である。 13回連続失敗は糸河博士に負の遺産ではなく、大きな起死回生の漢(オトコだ。)としての箔をつけた。 崖っぷちでも落ちない漢(オトコ)、落ちない野郎、受験の神様、など二っ名、三つ名を付けたのだ。 そして13回連続失敗の記録は、だれにも、どこの国の学者にもまだ、破られていない記録なのだ。 失敗は成功の元、というコトワザがあるが、まあ失敗を恐れていてはロケットなぞ造れないのだ。 糸河大先生は電車を乗り継いでトヨス自動車本社の門をくぐった。 門番が電話で、なんか言うと車が糸河先生を迎えにきて、乗せて、社内の奥の研究実験棟に連れて行った。 そして車ごと実験棟に入る。 そこには、長さ3メートルの白い色のロケットが鎮座していた。 トヨスの研究員が、ぞろぞろ出てきた。 糸河先生は、「これが、思考ミサイルですか、やっと完成しましたか。」 「ハイ、トヨス自動車の頭脳ともいえる研究棟の全員が寝る間も惜しんで作り上げました。」 「現在の日本国の最新技術のカタマリです。」 「新型回路に電子顕微鏡の電子レンズで印刷する回路をつかい、光演算機を搭載できました。」 まあ、現在のIC回路みたいな物だ。 そばに、10メートル四方の演算機が置いてあった。 研究員はそれを示して「この、現在の光速演算機を5センチまで、性能を落とさずに小さく造り上げたのです。」 と手の上に5センチの合金の箱を乗せて示した。 「電力も少しでOKです。」 糸河大先生は、「わかった、で研究途中で失敗したヤツを見せてくれ。」 研究員らは、奥のドアを開けた。 そこには、12本くらいロケットが並んでいる。 糸河先生は一番おおきいヤツを見て、「これは、どうだ。」と聞いた。 研究員のひとりが、「それは、最初に造りました、1号ロケットで、フレアやチャフに騙されないヤツです。」 「動態観測カメラのヤツか。」 「ハイ、しかし、デゴイ(オトリの戦闘機)に騙されるんでボツですが。」 「イヤ、これがいいんだ。」 「これを、ミサイル試射場まですぐに運んでくれ。」 糸河先生は13回連続失敗からトヨス自動車と組んで、やっと衛星ロケットに成功した。 それ以来、ココに通い、あらゆるロケット研究を成し遂げたのだ。 トヨス自動車に、自身の研究成果を使う条件で資金を得たのだ。 13回連続失敗から、衛星ロケットの失敗は一度も無いのだ。 あれから、60個ほどイマドコ衛星から偵察監視衛星から米国用イマドコまで打ち上げているのだ。 そして、糸河米国研究所が米国トヨス内にできてから、でかいロケットは米国で打ち上げるようになった。 まあ、広い土地が余ってるからだが。 そりゃあ、すでに研究していたロケットの中に動態誘導ミサイルがあれば、3日で出来るなんてホラも拭けるはずだ。 愛知のトヨス本社から、千葉のロケット試射場まで運びこむための3日なのだから。 10メートルあまりの動態誘導ミサイルはトラックに3発積んで、出来たばかりの高速専用道路を千葉まで走る。 さあ、明日はロケット実験初日だ。 試射場はテントや発射台のランチャーや出店まで用意された。 マスコミ連中も高い見物料(マスコミ料金)を払って乗り込んだ。 一般見学者は500円(オミヤゲ込み)だが、カメラがあるマスコミは100万円(オミヤゲなんて無しだ。)である。 (放送の版権代なのだ。) さあ、夜が明けた・・・・・・
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