大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

金と能力

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『………神が戦争に勝利した際、敗北した神の全てを自由に出来る。この話したっけか?』
「さぁ。なんせ俺も山ほどその手の話を聞いたしな。覚えてるかもだが、齟齬があると不味い。一応言ってくれ」
木箱にアベルを入れて穴に入れたはいいが、埋めるのが予想以上に面倒で、よっこらせと言いながら埋めている最中、シャルがそんなことを聞いてきた。
『つっても今の言葉の通りだ。当然、機人に勝った神は機人のあらゆるものを吸収し、ヒトに渡した。身近な話だとそうだな…それまでヒトの魔法ってのは極々一部のヒトだけにしか使えないものだった。それをグルーマルは機人の「魔法には適性があるが魔力を持たない」という性質をヒトに無理矢理ねじ込んだりとかな。元々は魔導具を作るための適性なんだがな…』
「で?それがどうかしたのか?」
やっと箱の半分程か?先は長い。
『ずっと考えてたんだ。アベルがなんでまだ動いているのかを』
「………。」
一度手を止め、アベルの入った木箱を見下ろす。
寄生虫が取り付いていないかと少し不安に思ったが、そもそも人形につくわけが無いか。
『アベルは…というか、《理》がグルーマルに弄られた際、グルーマルは《理》にアベルと言う人格をそのままに、その一方で《理》からヒトガタへと可変する能力を奪った。だからその剣からアベルが出てくる事は無い。一人でずっと居るのは間違いないんだろうがな』
「じゃあ、この木箱の中にいるアベルはなんなんだ?オリジナルは金剣の中なんだろう?」
『人形の方のアベルにはな、まだ機人が敗戦する前に、アベルが俺にくれた彼の一部が入っている。そこを核に俺の能力を使った』
「…!」
シャルが自嘲気味に笑った。
『分かってはいたが、もしかしてアベルが帰ってくるんじゃないかと思って作ったもんだ。結果は見た通り。失敗じゃないが、望んだものが高すぎた』
「だから埋めたのか」
『ま、他にも色々とな。だが、アベルの欠片にちゃんとした意識があったのは確かだ。俺が死んだ後も能力が残った理由に心当たりがあるとすれば、アベルの欠片を核に使ったからぐらいだ。なんせグルーマルが見逃した本物の《理》だしな』
ざまぁみろ、とシャルは言い放つ。神でも見落としはよくする。というか、割と良くするのは結構聞いていたが…
『だがそれも、いつまで続くのか。グルーマルが気づくか、それとも俺の能力がふっつりと消えるのか…』
「どうせ形あるものはそのうち終わる。そうじゃなくても忘れられりゃ誰でも、何でも消える。だったらお前が忘れてなけりゃ、アベルもそれでいいんじゃねぇか?」
『…ありがとう、レィア』
…まさか礼を言われるとは思ってもなかった。鼻で笑ってアベルを埋める作業に戻る。
アベルはきっと、消えるのは構わないと思っているだろう。一度見たあの男は、大切なもののために全てを投げ捨てられる男だとすぐに分かった。
彼はきっとここで待ち続けるのだろう。自分の力が本当に望まれる瞬間まで。
願わくばそんな瞬間が来ないことを。
なんて思いながら、俺はマキナスコップで埋め続けた。
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