大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

剣と力

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『《勇者》が生まれるように。《聖女》が乗り移るように。《王》が受け継がれるように。
機人の特殊ユニット《比翼の剣》は機人達の手によって創られる。なんでも、全ての機人は生まれながらにして比翼の剣の設計図が存在するらしい。それを元に創られたのが金剣《理》と銀剣《連》だ』
「なるほど…初めて聞いた。そんな謂れがあったのか、これ」
『そりゃ初めて言ったしな。で、その《理》が俺の部下だった訳だが…ま、そんな事しても機人は戦争に負けちまった訳だ。如何せん、剣の完成が遅すぎた』
「?、設計図があるならそれの通りに作りゃいいじゃねぇか」
ましてや全員の頭の中にあるのだ、設計図が敵に盗まれたらという心配も要らないだろう。
『素材作りに千年だそうだ』
「は?」
『だから、素材作り。特殊ユニットってのは全て神の力を継いだ存在だ。当然《比翼の剣》にしたってな。ただの素材じゃ耐えきれないから、まず素材そのものを鍛える必要があるらしい。過程は知らんが、そうやって特別強くした素材を作るのに千年かかったらしい。本工程は合計してさらに千何年だか何千年だかかかったらしいぞ』
「そりゃ間に合わんかったってのは…なるほどな」
『しかしまぁ、それでも完成はした。だが善戦は出来ても、勝利は得れず、敗戦後《比翼の剣》はグルーマルによって隷属化、一部能力を弄られた』
「そんなに脅威だったのか?」
『………正直な話、グルーマルがあんな事をしたのは俺のせいってのが大きいと思う』
「シャルの…あぁ」
元部下、つまりそういうことか。余程シャルも気に入っていたのだろう。だからこそ、彼女を縛る枷にしたか。
そりゃよくシャルが「神はクソ」って言う訳だ。
『…つっても能力の本質は変わってないんだがな。アベルは世界を表す…って言ったらあまりに大袈裟だが、あらゆるものの形だ』
「それがどうやったらあの魔法になるか知らんが…そのうち分かるのかね。というか、銀剣も金剣と似たような感じの能力なのか?」
『いや、比翼の剣は二つで一つ。一対の剣だ。効果はどっちかって言うと逆になる』
「この世界あらゆるものの形の逆…?あの世の形とかか?」
『ハッ、既に死んだ俺がここにいるんだ。あの世なんてあってたまるかよ。《連》の能力はこの世全て歴史だ。連綿と積み重ねた世界の記憶、それが《連》の能力…らしいんだが』
「らしいんだが?」
『完成した年月が浅すぎるせいか、俺が使ってた時はただ硬くて軽くて重い剣だったな』
「…そう考えると、軽くて重いってのは『歴史は重みがあるが今はまだ軽い』って事なのかもな」
さて。元の木箱の位置に戻ってこれた。
「それじゃあやりますか」
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