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本編
宿屋と飯
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外に出て、俺達の宿まで全力で馬を飛ばし、宿屋のオッサンに簡単に事情を説明…する前に。
「飯だな!」と叫んで厨房へと駆け込んでいった。
「…あ、オッサンにとにかく何でもいいからとにかく頼むって言っちゃったけど…大丈夫かな?」
すっげぇ今更だけど。
ほら、よく何も食べてない状態から大量の飯食ったら腹壊すとか言うからな。
『ん?大丈夫大丈夫。魔族は頑丈だから、それぐらいじゃ何ともないだろ』
いや、そんでも半分はヒト種だし…。
「……大丈夫そうですわよ?」
答えたのはアーネ。
いつの間にかテーブルの上に置いてあったっぽい料理は既に空で皿のみ。
少しばかり考え事をしていたら、その間に運ばれて無くなっていたらしい。
彼女は非常に美味しそうに、口いっぱいに頬張り、もっきゅもっきゅと強引に咀嚼している。…可愛い。
「……俺、全然食ってない…」
昼には少し早いが、一緒に食べようかと思ってたんだが。
まぁいい。オッサンが次に取り掛かってるっぽいし。
それより…シャル。
『ん?まだ大丈夫っぽい。けどまぁ、あんまり長くは持ちそうにないと思っとけよ』
だよなぁ…。
「別にいいじゃないですの。ほら、貴女もどうぞ」
「ん?おう」
オッサンの料理を出す速度、異常に早いんだが、単純に手軽な料理だからか。
パンに挟まれた鳥肉を眺めながらそう思った。
かぶりつくと、柔らかいパンの奥にある、鳥肉が口の中で跳ねた。
なるほど、美味い。
どれ、もう一つ──。
『とか言ってたら来たな』
チッ、飯ぐらい食わせろよな。
パンをもう一つ掴みながら無言で席を立ち、戸の方へ歩いていく。
「あら、どうしましたの?」
「んー?ちょっと野暮用。あぁ、ゆっくり心ゆくまで食っててくれ。どうせ飯代はあの糞野郎に請求されんだし。ただ、いつでも出発出来るようにしとけよー」
そう言いながら俺は宿の外に出る。
──外には数え切れない程の警備兵。
やれやれ、いつぞやに見た光景だな、おい。
俺に一番近かった男が俺に近づき、質問を投げかけた。
「失礼、ここに白銀の髪と赤い目を持った少女がいると聞いたのだが…お嬢さんは何か知らないか?」
……あぁ、緋眼が出て無いから赤い目な。普通は俺、黒目だから判断されなかったのね。
「んー?どうした?いきなり」
「何、その者が都市長の自宅に押し入り、都市長に暴力を振るった後に家を荒らしたと通報されてな。ちなみに同様の理由で赤い髪の少女も探している」
『ふーん。ガキの方についちゃ無言か』
「なるほど、そう伝わってんのねー」
「何か知っているのか!?」
「…ちなみに、そいつらを捕まえたらどうするんだ?」
「我々は逮捕までが仕事だ。それから先は都市長の裁量に任されるが……ほぼ間違いなく長期間の投獄、最悪打首すら有り得る。それがどうかしたか?」
「いんや?」
そう言って、俺は片手に持っていたパンを一口で食べきった。
ゆっくりと、むぐむぐと咀嚼、嚥下した後に彼の顔を見ると、早く答えろと顔に顔に書いてあった。
「それ、俺だわ」
「は?」
呆気にとられた男が正気になる前に銀剣を取り出し、未完成の緋眼を起動する。目を赤くするだけの見掛け倒しだが、問題あるまい。
「ッ!いたぞ!囲め!!」
視界いっぱいの警備兵。俺が前に来た時、どこぞの商人の兵士達と戦った時、何人倒したっけか…。
まぁ、あの時ぐらいか?
いずれにしろ。
「だぁぁぁぁぁぁれが、お嬢さんだぁぁぁぁッ!?」
開戦の雄叫びが上がる前に、眼前の男をぶっ飛ばした。
「飯だな!」と叫んで厨房へと駆け込んでいった。
「…あ、オッサンにとにかく何でもいいからとにかく頼むって言っちゃったけど…大丈夫かな?」
すっげぇ今更だけど。
ほら、よく何も食べてない状態から大量の飯食ったら腹壊すとか言うからな。
『ん?大丈夫大丈夫。魔族は頑丈だから、それぐらいじゃ何ともないだろ』
いや、そんでも半分はヒト種だし…。
「……大丈夫そうですわよ?」
答えたのはアーネ。
いつの間にかテーブルの上に置いてあったっぽい料理は既に空で皿のみ。
少しばかり考え事をしていたら、その間に運ばれて無くなっていたらしい。
彼女は非常に美味しそうに、口いっぱいに頬張り、もっきゅもっきゅと強引に咀嚼している。…可愛い。
「……俺、全然食ってない…」
昼には少し早いが、一緒に食べようかと思ってたんだが。
まぁいい。オッサンが次に取り掛かってるっぽいし。
それより…シャル。
『ん?まだ大丈夫っぽい。けどまぁ、あんまり長くは持ちそうにないと思っとけよ』
だよなぁ…。
「別にいいじゃないですの。ほら、貴女もどうぞ」
「ん?おう」
オッサンの料理を出す速度、異常に早いんだが、単純に手軽な料理だからか。
パンに挟まれた鳥肉を眺めながらそう思った。
かぶりつくと、柔らかいパンの奥にある、鳥肉が口の中で跳ねた。
なるほど、美味い。
どれ、もう一つ──。
『とか言ってたら来たな』
チッ、飯ぐらい食わせろよな。
パンをもう一つ掴みながら無言で席を立ち、戸の方へ歩いていく。
「あら、どうしましたの?」
「んー?ちょっと野暮用。あぁ、ゆっくり心ゆくまで食っててくれ。どうせ飯代はあの糞野郎に請求されんだし。ただ、いつでも出発出来るようにしとけよー」
そう言いながら俺は宿の外に出る。
──外には数え切れない程の警備兵。
やれやれ、いつぞやに見た光景だな、おい。
俺に一番近かった男が俺に近づき、質問を投げかけた。
「失礼、ここに白銀の髪と赤い目を持った少女がいると聞いたのだが…お嬢さんは何か知らないか?」
……あぁ、緋眼が出て無いから赤い目な。普通は俺、黒目だから判断されなかったのね。
「んー?どうした?いきなり」
「何、その者が都市長の自宅に押し入り、都市長に暴力を振るった後に家を荒らしたと通報されてな。ちなみに同様の理由で赤い髪の少女も探している」
『ふーん。ガキの方についちゃ無言か』
「なるほど、そう伝わってんのねー」
「何か知っているのか!?」
「…ちなみに、そいつらを捕まえたらどうするんだ?」
「我々は逮捕までが仕事だ。それから先は都市長の裁量に任されるが……ほぼ間違いなく長期間の投獄、最悪打首すら有り得る。それがどうかしたか?」
「いんや?」
そう言って、俺は片手に持っていたパンを一口で食べきった。
ゆっくりと、むぐむぐと咀嚼、嚥下した後に彼の顔を見ると、早く答えろと顔に顔に書いてあった。
「それ、俺だわ」
「は?」
呆気にとられた男が正気になる前に銀剣を取り出し、未完成の緋眼を起動する。目を赤くするだけの見掛け倒しだが、問題あるまい。
「ッ!いたぞ!囲め!!」
視界いっぱいの警備兵。俺が前に来た時、どこぞの商人の兵士達と戦った時、何人倒したっけか…。
まぁ、あの時ぐらいか?
いずれにしろ。
「だぁぁぁぁぁぁれが、お嬢さんだぁぁぁぁッ!?」
開戦の雄叫びが上がる前に、眼前の男をぶっ飛ばした。
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