32 / 172
社長としてのあなた
6
しおりを挟む
『それは良かったです。ありがとうございます。では、私達は失礼します。どうぞごゆっくりなさって下さい』
前田さん達は、社長室を出て行った。
『あ、じゃあ、私も…』
『まだ残ってる』
榊社長は、私のミルクティーを見た。
『あ…でも、社長さんの食事の邪魔をしたらダメなので…』
『その「社長さん」って言うの、やめてくれないか』
『え?でも…』
榊社長を、他になんて呼べばいいの?
『俺の名前は、榊 祐誠。だから、祐誠(ゆうせい)でいい』
『そ、そんな…それは無理です』
頭をブンブン横に振った。
『何が無理?社長なんて…そんな呼ばれ方、会社だけで十分だ。雫には、肩書きじゃなく名前で呼んで欲しい』
榊社長は、立派でふかふかのソファに座って、対面にいる私を真剣な瞳で見つめた。
そう言えば、私は、希良君を名前で呼ぶことにあまり抵抗なかったのに…
目の前の榊社長に対しては…なぜかすごく緊張してしまって…
この心理状態が何を表すのか、自分ではわからないけど…
『すみません…やっぱり、そんな軽々しく呼べません』
『…簡単なことだ。ゆうせい…ひらがな4文字。幼稚園児でも出来る、言ってみて』
『ゆう…』
うわ、危うく言ってしまいそうになった。
『そのまま続けて』
『…む、無理です』
『じれったい。そんなにじらすのが好きなのか、雫は』
『ち、違います!じらしてるとかじゃないです』
『なら、言えるだろ?』
『わ、わかりました。言います。言いますよ。ただ4文字のひらがなを言えばいいんですもんね』
うなづいて、ニコッと笑う榊社長。
『…ゆう…せい…さん』
『まあ、さんは余計だけど許してやる。これからは、絶対にそうやって呼んで』
本当に…強引過ぎる…
この人のペースにどんどん引き込まれてしまって…
榊社長を祐誠さんと呼ぶことになるなんて思いもしなかった。
しかも、自宅にパンの配達。
おまけにジムにまで誘われて…
これは、いったいどういう事?
夢じゃないんだよね、このやり取り。
『じゃあ、本当に失礼します。ありがとうございました』
『気をつけて、雫。また、必ず連絡する』
祐…誠さんにそう言われ、私は半分逃げるように部屋を出た。
前田さん達は、社長室を出て行った。
『あ、じゃあ、私も…』
『まだ残ってる』
榊社長は、私のミルクティーを見た。
『あ…でも、社長さんの食事の邪魔をしたらダメなので…』
『その「社長さん」って言うの、やめてくれないか』
『え?でも…』
榊社長を、他になんて呼べばいいの?
『俺の名前は、榊 祐誠。だから、祐誠(ゆうせい)でいい』
『そ、そんな…それは無理です』
頭をブンブン横に振った。
『何が無理?社長なんて…そんな呼ばれ方、会社だけで十分だ。雫には、肩書きじゃなく名前で呼んで欲しい』
榊社長は、立派でふかふかのソファに座って、対面にいる私を真剣な瞳で見つめた。
そう言えば、私は、希良君を名前で呼ぶことにあまり抵抗なかったのに…
目の前の榊社長に対しては…なぜかすごく緊張してしまって…
この心理状態が何を表すのか、自分ではわからないけど…
『すみません…やっぱり、そんな軽々しく呼べません』
『…簡単なことだ。ゆうせい…ひらがな4文字。幼稚園児でも出来る、言ってみて』
『ゆう…』
うわ、危うく言ってしまいそうになった。
『そのまま続けて』
『…む、無理です』
『じれったい。そんなにじらすのが好きなのか、雫は』
『ち、違います!じらしてるとかじゃないです』
『なら、言えるだろ?』
『わ、わかりました。言います。言いますよ。ただ4文字のひらがなを言えばいいんですもんね』
うなづいて、ニコッと笑う榊社長。
『…ゆう…せい…さん』
『まあ、さんは余計だけど許してやる。これからは、絶対にそうやって呼んで』
本当に…強引過ぎる…
この人のペースにどんどん引き込まれてしまって…
榊社長を祐誠さんと呼ぶことになるなんて思いもしなかった。
しかも、自宅にパンの配達。
おまけにジムにまで誘われて…
これは、いったいどういう事?
夢じゃないんだよね、このやり取り。
『じゃあ、本当に失礼します。ありがとうございました』
『気をつけて、雫。また、必ず連絡する』
祐…誠さんにそう言われ、私は半分逃げるように部屋を出た。
3
あなたにおすすめの小説
思い出のチョコレートエッグ
ライヒェル
恋愛
失恋傷心旅行に出た花音は、思い出の地、オランダでの出会いをきっかけに、ワーキングホリデー制度を利用し、ドイツの首都、ベルリンに1年限定で住むことを決意する。
慣れない海外生活に戸惑い、異国ならではの苦労もするが、やがて、日々の生活がリズムに乗り始めたころ、とてつもなく魅力的な男性と出会う。
秘密の多い彼との恋愛、彼を取り巻く複雑な人間関係、初めて経験するセレブの世界。
主人公、花音の人生パズルが、紆余曲折を経て、ついに最後のピースがぴったりはまり完成するまでを追う、胸キュン&溺愛系ラブストーリーです。
* ドイツ在住の作者がお届けする、ヨーロッパを舞台にした、喜怒哀楽満載のラブストーリー。
* 外国での生活や、外国人との恋愛の様子をリアルに感じて、主人公の日々を間近に見ているような気分になれる内容となっています。
* 実在する場所と人物を一部モデルにした、リアリティ感の溢れる長編小説です。
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「結婚したらこっちのもんだ。
絶対に離婚届に判なんて押さないからな」
既婚マウントにキレて勢いで同期の紘希と結婚した純華。
まあ、悪い人ではないし、などと脳天気にかまえていたが。
紘希が我が社の御曹司だと知って、事態は一転!
純華の誰にも言えない事情で、紘希は絶対に結婚してはいけない相手だった。
離婚を申し出るが、紘希は取り合ってくれない。
それどころか紘希に溺愛され、惹かれていく。
このままでは紘希の弱点になる。
わかっているけれど……。
瑞木純華
みずきすみか
28
イベントデザイン部係長
姉御肌で面倒見がいいのが、長所であり弱点
おかげで、いつも多数の仕事を抱えがち
後輩女子からは慕われるが、男性とは縁がない
恋に関しては夢見がち
×
矢崎紘希
やざきひろき
28
営業部課長
一般社員に擬態してるが、会長は母方の祖父で次期社長
サバサバした爽やかくん
実体は押しが強くて粘着質
秘密を抱えたまま、あなたを好きになっていいですか……?
羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。
泉野あおい
恋愛
人の気持ちに重い軽いがあるなんて変だと思ってた。
でも今、確かに思ってる。
―――この愛は、重い。
------------------------------------------
羽柴健人(30)
羽柴法律事務所所長 鳳凰グループ法律顧問
座右の銘『危ない橋ほど渡りたい。』
好き:柊みゆ
嫌い:褒められること
×
柊 みゆ(28)
弱小飲料メーカー→鳳凰グループ・ホウオウ総務部
座右の銘『石橋は叩いて渡りたい。』
好き:走ること
苦手:羽柴健人
------------------------------------------
君に恋していいですか?
櫻井音衣
恋愛
卯月 薫、30歳。
仕事の出来すぎる女。
大食いで大酒飲みでヘビースモーカー。
女としての自信、全くなし。
過去の社内恋愛の苦い経験から、
もう二度と恋愛はしないと決めている。
そんな薫に近付く、同期の笠松 志信。
志信に惹かれて行く気持ちを否定して
『同期以上の事は期待しないで』と
志信を突き放す薫の前に、
かつての恋人・浩樹が現れて……。
こんな社内恋愛は、アリですか?
シンデレラは王子様と離婚することになりました。
及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・
なりませんでした!!
【現代版 シンデレラストーリー】
貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。
はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。
しかしながら、その実態は?
離婚前提の結婚生活。
果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。
おじさんは予防線にはなりません
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「俺はただの……ただのおじさんだ」
それは、私を完全に拒絶する言葉でした――。
4月から私が派遣された職場はとてもキラキラしたところだったけれど。
女性ばかりでギスギスしていて、上司は影が薄くて頼りにならない。
「おじさんでよかったら、いつでも相談に乗るから」
そう声をかけてくれたおじさんは唯一、頼れそうでした。
でもまさか、この人を好きになるなんて思ってもなかった。
さらにおじさんは、私の気持ちを知って遠ざける。
だから私は、私に好意を持ってくれている宗正さんと偽装恋愛することにした。
……おじさんに、前と同じように笑いかけてほしくて。
羽坂詩乃
24歳、派遣社員
地味で堅実
真面目
一生懸命で応援してあげたくなる感じ
×
池松和佳
38歳、アパレル総合商社レディースファッション部係長
気配り上手でLF部の良心
怒ると怖い
黒ラブ系眼鏡男子
ただし、既婚
×
宗正大河
28歳、アパレル総合商社LF部主任
可愛いのは実は計算?
でももしかして根は真面目?
ミニチュアダックス系男子
選ぶのはもちろん大河?
それとも禁断の恋に手を出すの……?
******
表紙
巴世里様
Twitter@parsley0129
******
毎日20:10更新
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる