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第六話
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トキオのその行動はひどく衝動的にみえ、ゆえに皆の意表をついた。トキオは背中に差し込んでいた八式拳銃を抜き放ち、夜空にむかって撃つ。
赤い銃火が闇に伸び、獰猛な音が中庭を駆けた。トグルアクションのボルトが動き、金色のカートリッジがバルコニーの床に落ちると甲高い音をたてる。バルコニーの賓客たちは、蒼ざめると少し後退った。一方中庭で浮かれ騒いでいた客たちは、一斉に歓声をあげトキオに注目する。
トキオは、拳銃を背中に戻しよく通る声で語った。
「さて、皆さん。今日の祝宴にふさわしい、ちょっとした芸をお見せしよう」
はじめて、少し困惑の色を笑顔に混ぜたアグネスにトキオは陽だまりのような笑みを返す。
そして、グラスを持たないほうの手を差し出した。
「さあ、我らの友情の証として固く手を取り合おうではないか、FASTからのご客人」
アグネスは困惑を無理やり笑顔に押し隠して、トキオの手をとる。その瞬間、アグネスの顔が驚愕に歪む。アグネスの手は理解できない力にさらされ、小刻みに痙攣をはじめていた。アグネスは陽光を握ったかと思うような熱を、手のひらに感じている。その熱はざわざわと官能めいた漣となり、彼女の体内へと食い込んでゆく。
アグネスは慌て手を引き抜こうとしたが、太陽の笑みを浮かべたトキオはそれを許さない。トキオは、小さな声でアグネスに語りかける。
「驚かなくていい、これはただの気功だ。もともと、あなたがたの大陸で研鑽されていた技だ」
アグネスの困惑は怯えに変わりつつあったが、トキオの笑みはそのままだ。
「浸透勁というのが、ある。気は、あなたの身体を通り抜ける。ほら、こんなふうに」
アグネスは、幾度か身体を震わせる。そして、少し官能的なため息を意図せずつく。優しく愛撫されているような漣が、腕を、胸を、体内をとおり過ぎてゆく。手から伝わった気は彼女の体内を通り抜けると、赤い酒を満たしたグラスにたどり着いた。アグネスの瞳が、驚愕に開かれる。
真紅の輝きを湛える酒に、波紋がおこった。やがて、それは激しい波となり渦を巻きはじめる。
アグネスが、悲鳴をあげた。彼女の持つグラスから酒が噴き上がり、彼女のナイトドレスを血にまみれたように赤く染めたからだ。
バルコニーの賓客は、恐れたように呻き声をあける。中庭の客たちは、歓声と拍手をおこす。そして、爆笑と野次がアグネスを包み込む。
赤い銃火が闇に伸び、獰猛な音が中庭を駆けた。トグルアクションのボルトが動き、金色のカートリッジがバルコニーの床に落ちると甲高い音をたてる。バルコニーの賓客たちは、蒼ざめると少し後退った。一方中庭で浮かれ騒いでいた客たちは、一斉に歓声をあげトキオに注目する。
トキオは、拳銃を背中に戻しよく通る声で語った。
「さて、皆さん。今日の祝宴にふさわしい、ちょっとした芸をお見せしよう」
はじめて、少し困惑の色を笑顔に混ぜたアグネスにトキオは陽だまりのような笑みを返す。
そして、グラスを持たないほうの手を差し出した。
「さあ、我らの友情の証として固く手を取り合おうではないか、FASTからのご客人」
アグネスは困惑を無理やり笑顔に押し隠して、トキオの手をとる。その瞬間、アグネスの顔が驚愕に歪む。アグネスの手は理解できない力にさらされ、小刻みに痙攣をはじめていた。アグネスは陽光を握ったかと思うような熱を、手のひらに感じている。その熱はざわざわと官能めいた漣となり、彼女の体内へと食い込んでゆく。
アグネスは慌て手を引き抜こうとしたが、太陽の笑みを浮かべたトキオはそれを許さない。トキオは、小さな声でアグネスに語りかける。
「驚かなくていい、これはただの気功だ。もともと、あなたがたの大陸で研鑽されていた技だ」
アグネスの困惑は怯えに変わりつつあったが、トキオの笑みはそのままだ。
「浸透勁というのが、ある。気は、あなたの身体を通り抜ける。ほら、こんなふうに」
アグネスは、幾度か身体を震わせる。そして、少し官能的なため息を意図せずつく。優しく愛撫されているような漣が、腕を、胸を、体内をとおり過ぎてゆく。手から伝わった気は彼女の体内を通り抜けると、赤い酒を満たしたグラスにたどり着いた。アグネスの瞳が、驚愕に開かれる。
真紅の輝きを湛える酒に、波紋がおこった。やがて、それは激しい波となり渦を巻きはじめる。
アグネスが、悲鳴をあげた。彼女の持つグラスから酒が噴き上がり、彼女のナイトドレスを血にまみれたように赤く染めたからだ。
バルコニーの賓客は、恐れたように呻き声をあける。中庭の客たちは、歓声と拍手をおこす。そして、爆笑と野次がアグネスを包み込む。
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