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第十三話
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eVTOLが舞台に着地し、ヒースが降りる。それと同時に、イシガミの配下らしいPSSの現地対応部隊が姿をあらわす。
黒天狐は、PSSの隊員が差し出す対呪の封印が付与されたケースにグリモワールを放り込む。ヒースは斬り落とされた黒天狐の腕を拾い上げ、黒天狐のもとへむかう。
黒天狐は糸で止血したらしく、血の流れはわずかになっている。
「さすが魔神だな、きれいに斬ってるよ。これなら、うまく繋がるだろうさ」
ヒースの軽口に、黒天狐は苦笑する。ヒースはいくつかの器具を使って切断された骨を接続し、切断面に液状化したギミックスライムを振りかけた。
さらに腕をテープで固定すると、スプレーで固定用の樹脂を吹きかける。空気に触れた樹脂はすぐに固まり、切断された腕を固定した。
ヒースは、PSSの指揮官に声をかけeVTOLに乗り込む。黒天狐もあとに続いた。
eVTOLは再び夜空へと舞い上がる。
「とりあえず、治癒術師のところへゆくぜ。あと、こいつを打っとけよ」
黒天狐は、ヒースの差し出す更生物質の注射を腕に刺した。
「しかし、魔神を素手で殺すとは相変わらず出鱈目だよな」
ヒースがeVTOLを操りながら、嘆息まじりに呟く。
「ああ、あれは運がよかっただけだ」
黒天狐が、昏い声でこたえる。
「魔神というのは、大地の龍脈から魔力を引き出すことができる。ただ召喚された直後はまだ、龍脈へのパスがはられていない。到着があと五分遅れていたら、死んでいたのはおれだな」
ヒースは薄く笑うと、タバコを取り出し火をつけた。
「まあ、そういうもんだろ、おれたちは。命を掛け金にしたイカれたゲームに、興じてる馬鹿だろ」
黒天狐はヒースの吐き出した紫煙をどこか虚ろな瞳でみつめながら、うなずく。
「負ければ、死ぬ。馬鹿にもわかりやすいご機嫌なゲームだ」
ヒースは、楽しげに笑った。
「で、そろそろ話してもいいんじゃないのか?」
ヒースの言葉に、黒天狐は怪訝な顔をする。ヒースは思わず苦笑した。
「おいおい、今更惚けられると思っちゃいまい。イシガミの言ってた、例の話ってなんだよ。おれも巻き込むつもりなんだろ」
「ああ」
黒天狐は、昏く笑う。その瞳は遠くを見つめているようで、奥底に熾火のような輝きを秘めている。
「見つかったんだ。少し前の、数カ月はたつかな。ダンジョンの奥底でのなんだが。国家プロジェクトが始動しつつある」
「なんだって?」
ヒースは、驚きの声をあげる。
「いったい何が、見つかったっていうんだ」
黒天狐は、少し首をふる。
「伝説の存在だと、思っていた。本当にあるものだとは、思わなかったんだが。ダンジョンの奥底で、目撃情報があげられた」
黒天狐は、躊躇うように沈黙する。ヒースは黙って、黒天狐が口を開くのを待つ。
「始原の巨人。その死体が、あったそうだ」
ヒースは、思わず声をあげる。
「なんだって? そいつはベリアル王が管理してるんじゃあ、なかったのか?」
「いや、それとは別の、もっと完全な形のものらしい。おれは、そいつを拝みに行くつもりだ。ヒース、どうだい、ひとつガイドに復帰する気にならないか?」
ヒースは、ふっと笑う。
「まずは、低階層で勘をとりもどさないといけないな。つきあってもらうぜ」
黒天狐は、薄く笑う。
「いいだろう。時間があまりない。フル・スロットルでいくからな」
ヒースは肩を竦めた。
「お手柔らかに頼む」
黒天狐は、PSSの隊員が差し出す対呪の封印が付与されたケースにグリモワールを放り込む。ヒースは斬り落とされた黒天狐の腕を拾い上げ、黒天狐のもとへむかう。
黒天狐は糸で止血したらしく、血の流れはわずかになっている。
「さすが魔神だな、きれいに斬ってるよ。これなら、うまく繋がるだろうさ」
ヒースの軽口に、黒天狐は苦笑する。ヒースはいくつかの器具を使って切断された骨を接続し、切断面に液状化したギミックスライムを振りかけた。
さらに腕をテープで固定すると、スプレーで固定用の樹脂を吹きかける。空気に触れた樹脂はすぐに固まり、切断された腕を固定した。
ヒースは、PSSの指揮官に声をかけeVTOLに乗り込む。黒天狐もあとに続いた。
eVTOLは再び夜空へと舞い上がる。
「とりあえず、治癒術師のところへゆくぜ。あと、こいつを打っとけよ」
黒天狐は、ヒースの差し出す更生物質の注射を腕に刺した。
「しかし、魔神を素手で殺すとは相変わらず出鱈目だよな」
ヒースがeVTOLを操りながら、嘆息まじりに呟く。
「ああ、あれは運がよかっただけだ」
黒天狐が、昏い声でこたえる。
「魔神というのは、大地の龍脈から魔力を引き出すことができる。ただ召喚された直後はまだ、龍脈へのパスがはられていない。到着があと五分遅れていたら、死んでいたのはおれだな」
ヒースは薄く笑うと、タバコを取り出し火をつけた。
「まあ、そういうもんだろ、おれたちは。命を掛け金にしたイカれたゲームに、興じてる馬鹿だろ」
黒天狐はヒースの吐き出した紫煙をどこか虚ろな瞳でみつめながら、うなずく。
「負ければ、死ぬ。馬鹿にもわかりやすいご機嫌なゲームだ」
ヒースは、楽しげに笑った。
「で、そろそろ話してもいいんじゃないのか?」
ヒースの言葉に、黒天狐は怪訝な顔をする。ヒースは思わず苦笑した。
「おいおい、今更惚けられると思っちゃいまい。イシガミの言ってた、例の話ってなんだよ。おれも巻き込むつもりなんだろ」
「ああ」
黒天狐は、昏く笑う。その瞳は遠くを見つめているようで、奥底に熾火のような輝きを秘めている。
「見つかったんだ。少し前の、数カ月はたつかな。ダンジョンの奥底でのなんだが。国家プロジェクトが始動しつつある」
「なんだって?」
ヒースは、驚きの声をあげる。
「いったい何が、見つかったっていうんだ」
黒天狐は、少し首をふる。
「伝説の存在だと、思っていた。本当にあるものだとは、思わなかったんだが。ダンジョンの奥底で、目撃情報があげられた」
黒天狐は、躊躇うように沈黙する。ヒースは黙って、黒天狐が口を開くのを待つ。
「始原の巨人。その死体が、あったそうだ」
ヒースは、思わず声をあげる。
「なんだって? そいつはベリアル王が管理してるんじゃあ、なかったのか?」
「いや、それとは別の、もっと完全な形のものらしい。おれは、そいつを拝みに行くつもりだ。ヒース、どうだい、ひとつガイドに復帰する気にならないか?」
ヒースは、ふっと笑う。
「まずは、低階層で勘をとりもどさないといけないな。つきあってもらうぜ」
黒天狐は、薄く笑う。
「いいだろう。時間があまりない。フル・スロットルでいくからな」
ヒースは肩を竦めた。
「お手柔らかに頼む」
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