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短いお別れ
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「——リュシアンが黒魔術を使っていましたわ!」
澄んだ声が夜の湖畔に響く。
俺は心底嫌な予感を覚えながら、ゆっくりと振り返った。
そこには、金色の巻き髪を揺らしながら駆け寄る少女——聖女リーゼロッテの姿があった。
「私、この目で見ました! 彼の黒魔術が、魔物に向かって放たれたのを!」
(……あー、やっぱり見られてたか)
どこで見ていたのか知らないが、運が悪すぎる。
リーゼロッテの告発を聞いたアルマン司教は、静かに俺へと視線を向ける。
「……本当か?」
その声には驚きや非難よりも、確認の意図が強かった。
正直に言って、誤魔化しようがない。俺は確かに黒魔術を使った。
(さて、どうしたものか……)
「——司教様、どうか黙っていてください!」
俺が答えるよりも早く、アーベルが飛び出した。
「アーベル殿下?」
「リュシアンは……俺を助けようとしたんです! 俺が不用意に湖まで来てしまったせいで、魔物に襲われそうになって……! それを、どうにかしようとしてくれただけなんです!」
必死に庇うように、アーベルは俺の前に立つ。
「確かに、黒魔術は禁忌とされています。でも……でも、悪意があって使ったわけじゃない! そんなことで、リュシアンを罰しないでください!」
「……アーベル殿下」
アルマン司教は目を細めた。
「ですが、王に報告しなければなりません」
「お願いします……どうか、黙っていてください」
アーベルはもう一度、懇願するように司教を見上げる。
「俺は……リュシアンを失いたくありません」
アルマン司教は深くため息をついた。
「……わかりました。今回は見なかったことにしましょう」
「……本当ですか?」
「ええ。ただし、条件があります」
「条件……?」
「アーベル殿下。あなたには、正式に教会で神聖魔法を学んでいただきます。最低でも二年間です。その間、魔術に関するいかなる禁忌にも関わらないことを誓えますか?」
「それは……」
アーベルが迷うように俺を見る。
二年間、教会に縛られる。すなわち、王宮や学園での自由な生活は失われるということだ。
(くそ……こっちに火の粉が降りかかると思ったら、アーベルにまで……)
「……わかりました。俺は、神聖魔法を学びます」
アーベルはまっすぐな瞳で、アルマン司教を見つめた。
「その代わり……どうか、リュシアンを裁かないでください」
アルマン司教はしばし沈黙し——やがて小さく頷いた。
「約束しましょう」
「ありがとうございます……!」
アーベルの顔に安堵の色が浮かぶ。
だが、それを見つめるリーゼロッテの表情は、どこか納得していないようだった。
(……面倒なことになったな)
これで、アーベルは二年間教会に縛られることになる。
俺は安堵すべきなのか、それとも——
言い知れぬ不安が、胸をよぎる。
澄んだ声が夜の湖畔に響く。
俺は心底嫌な予感を覚えながら、ゆっくりと振り返った。
そこには、金色の巻き髪を揺らしながら駆け寄る少女——聖女リーゼロッテの姿があった。
「私、この目で見ました! 彼の黒魔術が、魔物に向かって放たれたのを!」
(……あー、やっぱり見られてたか)
どこで見ていたのか知らないが、運が悪すぎる。
リーゼロッテの告発を聞いたアルマン司教は、静かに俺へと視線を向ける。
「……本当か?」
その声には驚きや非難よりも、確認の意図が強かった。
正直に言って、誤魔化しようがない。俺は確かに黒魔術を使った。
(さて、どうしたものか……)
「——司教様、どうか黙っていてください!」
俺が答えるよりも早く、アーベルが飛び出した。
「アーベル殿下?」
「リュシアンは……俺を助けようとしたんです! 俺が不用意に湖まで来てしまったせいで、魔物に襲われそうになって……! それを、どうにかしようとしてくれただけなんです!」
必死に庇うように、アーベルは俺の前に立つ。
「確かに、黒魔術は禁忌とされています。でも……でも、悪意があって使ったわけじゃない! そんなことで、リュシアンを罰しないでください!」
「……アーベル殿下」
アルマン司教は目を細めた。
「ですが、王に報告しなければなりません」
「お願いします……どうか、黙っていてください」
アーベルはもう一度、懇願するように司教を見上げる。
「俺は……リュシアンを失いたくありません」
アルマン司教は深くため息をついた。
「……わかりました。今回は見なかったことにしましょう」
「……本当ですか?」
「ええ。ただし、条件があります」
「条件……?」
「アーベル殿下。あなたには、正式に教会で神聖魔法を学んでいただきます。最低でも二年間です。その間、魔術に関するいかなる禁忌にも関わらないことを誓えますか?」
「それは……」
アーベルが迷うように俺を見る。
二年間、教会に縛られる。すなわち、王宮や学園での自由な生活は失われるということだ。
(くそ……こっちに火の粉が降りかかると思ったら、アーベルにまで……)
「……わかりました。俺は、神聖魔法を学びます」
アーベルはまっすぐな瞳で、アルマン司教を見つめた。
「その代わり……どうか、リュシアンを裁かないでください」
アルマン司教はしばし沈黙し——やがて小さく頷いた。
「約束しましょう」
「ありがとうございます……!」
アーベルの顔に安堵の色が浮かぶ。
だが、それを見つめるリーゼロッテの表情は、どこか納得していないようだった。
(……面倒なことになったな)
これで、アーベルは二年間教会に縛られることになる。
俺は安堵すべきなのか、それとも——
言い知れぬ不安が、胸をよぎる。
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