【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵

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対峙

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――次に目を覚ましたとき、外が騒がしかった。
「……何だ?」
アーベルと共に身を起こし、バルコニーへ。
館の周囲を鎧姿の騎士たちが取り囲んでいた。

掲げられた旗を見て、アーベルが呻く。
赤いガレロ、その下に六匹のミツバチ――枢機卿の紋章だった。


着替えて階段を降りると、裏口に停めてある馬車まで荷物をまとめて走ろうとする。

ここから先は王国領ではなく緩衝地帯となるが、南側に回り込んで川船で帰れば見つかりはしないだろう。船着場はちょうど俺の部屋の裏側にある。少し長い逃避行になるが・・・そう考えて馬車まで辿り着いてはたと気が付く
アーベルがついてこない。

急いで裏口まで戻るとアーベルはじっと枢機卿たちのいる館の玄関を見つめていた。

「おい、早く行くぞ」
「先に行っていて。あとから追いかけるよ」
「なに言って――」
「ここは小さいけれど、僕の正式な領地だ。王宮に戻れば、いずれ彼と向き合わなくちゃいけない。だったら、父さんもいないここで対話する方が、まだ主導権が握れると思う」

アーベルの目は揺れていなかった。

結局、俺はアーベルの意志を尊重し、馬車で一人逃げ出し--たりはしなかった。自らに『不可視』の呪文をかけてひとまず館の中で姿を隠すことにする。処刑されることを回避することを最優先にするのであれば、この行動はひどく非効率だ。そんなことはわかっている。だが--

枢機卿つまりかつての師と一人対峙しようとしているアーベルを放っておくわけには行かなかった。
ほどなくして、馬車の扉が音を立てて開いた。

緋色の司教服をまとった細身の男が、ゆったりとした足取りで地面に降り立つ。敵を追ってきたというよりは、まるでこれから舞踏会にでも出席するかのような、優雅な所作だった。

アルマン=ジャック・ポワトゥール・ド・プレシー――枢機卿。地方の貧乏貴族の三男に生まれながら、三十前に司教となり、その数年後には枢機卿へと上り詰めた男。神経質そうな細面に切れ長の目を持ち、柔和な微笑みの奥に何を考えているか読めない。

アーベルが歩み寄ると、枢機卿は芝居がかった大げさな仕草で片膝をついた。

「このような場にお招きいただき、光栄です」
「もてなすほどの用意もありませんが、中へどうぞ」

アーベルの案内で枢機卿は館の中へ。同行していた兵は玄関先で待機し、館内には入ってこないようだった。

「まさか、出迎えていただけるとは思いませんでした」
「王宮でお会いすれば、父上も同席することになります。貴方にとっても、ここは都合がよかったのでは?」
「……ふふ、読まれていましたか」
柔らかな声で笑った枢機卿が、不意に俺たちの隠れている奥の方へ、視線を向けた。
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