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#139 防災袋の非常な扱い
しおりを挟むある日、田中さんは念入りに非常用バッグの点検を行っていた。防災グッズ、食料、水、懐中電灯……すべての準備は完璧だ。いざという時に備えて、自分と家族の安全を確保するためだ。
しかし、妻の美穂は田中さんの執拗なまでの準備に少しうんざりしていた。
「また点検してるの? そんなに心配しなくてもいいじゃない。災害なんてそうそう起きないわよ。」
田中さんは真剣な表情で答えた。
「いや、美穂、油断は禁物だよ。いつ何が起こるかわからないんだ。」
その夜、家族が夕食を終え、テレビを見ながらリラックスしていると、突然、家全体がガタガタと揺れ始めた。
「地震だ!」と田中さんは叫び、すぐに非常用バッグを掴んで家族を連れ出そうとする。
しかし、揺れはすぐに収まり、家の中は静寂を取り戻した。震度は大したことがなく、外に出る必要はなかった。
田中さんはほっと息をつきながらも、まだ警戒を解かない。
「やっぱり準備しておいてよかっただろう?」
翌朝、田中さんは目を覚ますと、非常用バッグがないことに気づいた。部屋中を探し回ったが、どこにも見当たらない。彼は混乱しながら妻に聞いた。
「美穂、非常用バッグを見なかったか?」
美穂は少し微笑んで、
「昨日の夜、あなたがあんなに真剣にバッグを持っていたから、私は新しい置き場を作っておいたのよ」
と答える。
田中さんは安心して笑顔を見せたが、美穂は続けた。
「あなたの準備に感謝してる。でも、非常用バッグを『非常用』に使ってもらおうと思ってね。」
田中さんはその意味がすぐにわからなかった。しかし、妻がバッグをどこに隠したのかを思い出した瞬間、彼は絶句した。非常用バッグは、どうやら非常に使われることのない場所……ゴミ箱に捨てられていたのだった。
「これで、もう不必要な心配をする必要がないでしょ?」
美穂は微笑みながら言った。
妻と夫で防災意識があまりに違い過ぎた……。
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