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#140 首都高速道路のループ
しおりを挟む「またかよ……」
車内でカーナビがループを描き、僕は首都高速道路を走り続けている。渋谷を通り過ぎ、品川で曲がり、新宿を目指すが、どこをどう走っても同じ風景が続く。いつしか夜の東京は静まり返り、他の車は一台も見えなくなっていた。
「首都高から出られないんだ」
そう呟くと、助手席にいた友人のミカが小さく笑った。
「知ってる? 首都高には出口がないって話、聞いたことある?」
彼女の声は不気味なほど平静だった。
「冗談だろ。出口なら、もうすぐ……」
そう言いかけて僕は言葉を失った。カーナビの画面に映し出されたのは、またもや渋谷ジャンクションのサイン。首都高はまるで、終わりのない迷宮のように僕たちを飲み込んでいた。
「首都高は、ある種のテストみたいなものだって言われてるの」
ミカは淡々と続けた。「本当に目的地にたどり着きたい人は、抜けられる。でも、道に迷った人は永遠にループするのよ。」
そんなバカな話があるかと思いながらも、焦りが胸に広がる。ガソリンは残りわずか、どのルートを選んでも、出口にたどり着けない。
ふとバックミラーを見ると、後方に不気味な光の影がちらついた。
何かが僕たちを追いかけているような気配。スピードを上げようとアクセルを踏むが、首都高の急カーブが次々に現れる。逃げ切れる気がしない。
「諦めるのは早いよ」
ミカが冷静に言った。
「出口はどこにでもある。ただ、君の心が出口を見つけられるかどうかだけ。」
その言葉に応えるように、目の前に見慣れないインターチェンジが現れた。カーナビには表示されない、存在しないはずの出口。
僕は最後の力を振り絞り、その道へハンドルを切った。
突然、視界が白く光り、耳をつんざくような轟音と共に車が宙に浮いた。
次に目が覚めたとき、僕はベッドの上にいた。カーテン越しに朝日が差し込む。首都高はどこにもなく、僕はただ静かな東京の朝に包まれていた。
あの出来事は夢だったのか? それとも、僕は本当に首都高の出口を見つけたのか? 鍵を手に握りしめながら、僕は再び首都高速道路に乗る勇気が湧くまで、しばらく車には近づかないと決めた。
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