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#154 求人広告を信じた者の末路
しおりを挟むその日、ネット掲示板で奇妙な求人広告を見つけた。
> 「生き残るだけで月収100万円。超簡単、初心者歓迎。」
怪しいのは百も承知だったが、最近失業して生活も苦しくなっていた俺は、ついその広告をクリックしてしまった。
応募フォームはやたらと簡素で、名前と年齢、電話番号、メールアドレスを入れて送信するだけだった。
翌日、見知らぬ番号からの電話が鳴った。出ると、不気味な低い声がこう言った。
「採用おめでとうございます、〇〇様。詳細をお伝えしますので、今からお近くの公園までお越しください。」
思わず顔が引きつったが、既にメールには詳細な住所が記されていた。何かのドッキリかもしれないと思いながらも、どこか期待する気持ちもあって、指定された公園へと向かった。
公園には黒スーツに身を包んだ男が一人、俺を待っていた。表情は見えないが、無機質な声で指示を出す。
「今からあなたにはある役を演じていただきます。」
「……役?」
男はただ「そうです」と答え、厚手の封筒を差し出した。中には小型のイヤホンと分厚いマニュアルが入っている。
「耳にイヤホンを装着し、指示に従ってください。今回の業務は非常にシンプルです――ただ、生き残るだけ。」
その瞬間、寒気が背中を走った。どこかで聞いたことのある言葉だが、実感が湧かない。手に汗を握りつつ、恐る恐るイヤホンを装着した。
途端に耳元から声が響いた。
「今から制限時間は一時間。周囲を見回してください。」
指示に従い、公園の周囲を見渡すと、遠くの茂みの中に男が一人、じっとこちらを見つめている。手にはナイフが光っていた。
「……まさか、これって……」
「安心してください。成功すれば報酬はお約束通りです。動いてください。迫ってきています。」
その言葉と同時に、男がこちらに向かって走り出した。逃げ出そうとする足が思うように動かない。心臓がドクドクと鼓動を刻み、息が荒くなっていく。
「生き残るだけで月収100万円、超簡単、初心者歓迎」
そんな言葉を、信じた俺がバカだった。
その日、深夜のニュースで、一人の遺体が発見されたと報じられた。
彼のポケットには、「募集中:生き残るだけの簡単なお仕事」と記された名刺が一枚、冷たく差し込まれていた。
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