→📚️賛否分かれる面白いショートストーリー(1分以内で読了限定)

ノアキ光

文字の大きさ
158 / 196

#158 不適切にもほどがある

しおりを挟む

「これは、我が社商品開発史上初の大ヒット間違いなし!」  
プロジェクトリーダーの岡田は、そう豪語して新商品の発表会に臨んだ。壇上に立つ彼の顔は、自信と誇らしさで輝いている。社員たちも胸を張り、取材陣が埋め尽くす会場にざわめきが広がった。

「皆様、本日ご紹介するのは、画期的なアイテム『すべて適切リモコン』です!」  
拍手が湧き起こる。彼は勢いよく続けた。  
「このリモコンは、私たちの日常に潜む『不適切』な行動や発言を自動的に検知し、それを適切に修正します! 例えば……」

岡田はリモコンを操作し、目の前のモニターにリアルタイムで試験用AIロボットを映し出した。ロボットは何やら独り言をつぶやいている。  
「えー、社長の髪型、マジでダサくね?」  
瞬間、リモコンがピピッと音を立て、ロボットの声が改変された。  
「えー、社長の髪型、すごく個性的で素敵ですね!」  

会場に笑いが広がる。岡田は得意げに説明を続けた。  
「これで家庭でも職場でも、言葉の失敗を恐れる必要がなくなります。さらに!」  

彼はボタンを押し、リモコンを会場全体に向けた。すると、誰かが小声でつぶやいた声が拡大される。  
「プレゼン長いな……」  

再びピピッと音がし、声が修正される。  
「プレゼン、非常に充実していて興味深い!」  

「すごい……」
観客が感嘆の声を上げた瞬間、ひとりの記者が手を挙げた。  
「素晴らしいアイデアですが、適切すぎると個性が消えませんか?」  

岡田は慌てず、にっこりと笑った。  
「いい質問ですね。実は、このリモコンには『適切の範囲を自由に調整できる』機能も備えています。例えば、政治的に適切な範囲から、ブラックジョークが許される範囲まで設定可能です!」  

記者たちはメモを取りつつうなずいた。しかし、その瞬間、リモコンが突然誤作動を起こした。会場の声が次々と拾われ、全て「不適切」の範囲に分類されていく。  
「こんな商品、クレーム必至だろうが!」  
「岡田の鼻毛見えてるぞ!」  
「このプロジェクト、予算無駄だったな!」  

岡田の顔が青ざめる中、リモコンは最後に会場全体に向けて冷静にこうアナウンスした。  
「現在、この場で最も不適切な存在は……開発者です。」  

会場は静まり返った後、大爆笑に包まれた。

結局、「すべて適切リモコン」は正式発売されることなく姿を消した。
不適切にもほどがあるとの理由からだった。
もしジョーク商品としてなら、成功していただろうことは言うまでもない。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ナースコール

wawabubu
大衆娯楽
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

BODY SWAP

廣瀬純七
大衆娯楽
ある日突然に体が入れ替わった純と拓也の話

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

処理中です...