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第39話 迅の新たな思考——“守る”ための力
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王宮魔法研究室——夜
訓練場での実験を終え、魔力収束の理論が確立しつつある中で、王宮の魔法士たちはそれぞれの部屋へと戻っていった。
ロドリゲスも「では私は酒でも飲みながら整理をするかの」と部屋へ引き上げ、リディアも「ふぅ、今日は疲れたわ」と言いながら研究室を後にした。
——しかし、九条迅だけは、まだその場を離れずにいた。
机の上には、いくつものメモ書き。
魔力収束砲の理論、魔力の流れの調整法、そして新たに見えてきた魔力の密度と質量の関係。
迅はそれを見つめながら、ふと目を閉じた。
(……“魔力収束砲”は、間違いなく強力な技術だ)
それは訓練場での実験結果が証明している。
普通の炎魔法の数倍以上の威力を持ち、熱量が一点に集中することで金属製の的すら一瞬で融解させた。
(だが……)
迅は目を開ける。
あの威力を、もし誰かがこちらに向けて放ったら?
自分が、リディアが、ロドリゲスが、その攻撃を受ける側になったら?
胸の奥に、得体の知れない感覚が広がる。
——怖い、とは違う。
——ただ、今まで意識していなかった現実を突きつけられたような、そんな感覚。
これは、“戦争”なのだ。
研究に夢中になり、戦術や技術の開発に没頭していたが、それを使うのは戦場であり、敵は本気でこちらを殺しにくる。
(仮に、同じ攻撃が自分たちに向けられたら?)
迅は机の上のペンを指で回しながら、考える。
(回避手段がなければ、確実に死ぬ)
王宮の魔法士たちが研究した技術が、敵に奪われ、逆に利用されたら?
戦場では「やったもん勝ち」だ。こちらが新技術を開発しても、いずれ敵もそれを模倣し、対抗策を打ち出してくるだろう。
ならば——
(俺たちは、“それを上回る手段”を用意しなきゃならねぇ)
迅はゆっくりと立ち上がる。
ここで一つ、新たな課題が生まれた。
それは——
「高速戦闘への適応」
相手が魔力収束砲のような高速かつ高威力の攻撃を放った場合、それを回避する手段が必要だ。
いくら魔力を制御して防御魔法を強化しようと、瞬間的に発射される“当たれば即死”のような攻撃には意味がない。
ならば、攻撃が当たる前に”避ける”しかない。
そして、そのために必要なのは——人間の限界を超えた反応速度。
(魔法で攻撃を強化するのが可能なら、魔法で”反応速度”を上げることも可能なんじゃねぇか?)
迅の頭の中で、あるビジョンが浮かぶ。
(もし、魔力で神経伝達速度を一時的に向上させれば……五感の処理速度が上がり、時間の流れが遅く感じるはずだ。そしたら、相手の攻撃に対して、ギリギリの回避も可能になる……!)
思考の回転が加速する。
問題は、人体の神経を直接操作するという危険な領域に踏み込むことだ。
反応速度を上げるだけなら簡単かもしれないが、それを”戦闘中”に制御するとなると話は別だ。
(副作用の可能性も考えなきゃならねぇな……)
脳のオーバーロード、感覚過多、神経の過剰活性による筋肉制御の乱れ。
無茶な調整をすれば、自分の体が暴走しかねない。
(でも……やる価値はある)
迅はペンを手に取り、新たな研究メモを開く。
人間の反射の限界に迫る魔法。
それが完成すれば、戦場での生存率を飛躍的に向上させることができる。
(よし……まずは基礎研究からだ)
そのまま机に向かい、迅は夜通しメモを書き続けた。
◇◇◇
翌朝——
「……眠そうね?」
研究室に入ってきたリディアが、明らかに寝不足の迅を見て、呆れたようにため息をついた。
「昨日、ずっと研究してたの?」
「ま、そんなとこだな……」
迅は目をこすりながら答える。
「もう、無茶しないでよね。倒れられたら困るわ」
「へいへい」
適当に返しつつ、迅はリディアに悟られないように机の端にある新しいメモをさりげなく裏返す。
——これは、まだ言うつもりはない。
「……まぁ、せっかくだし、今日は少し休むわ」
そう言いながら、大きく伸びをする。
リディアはじっと迅を見つめると、ふっと微笑んだ。
「なら、今日は私が代わりに研究を進めておいてあげる」
「あー……悪い。じゃ、頼むわ」
迅は苦笑しながらも、その言葉に少しだけ安心する。
(……さて、“神経加速”の研究は、しばらく夜中にこっそり進めるか)
こうして、迅の新たな研究は、密かに幕を開けた——。
訓練場での実験を終え、魔力収束の理論が確立しつつある中で、王宮の魔法士たちはそれぞれの部屋へと戻っていった。
ロドリゲスも「では私は酒でも飲みながら整理をするかの」と部屋へ引き上げ、リディアも「ふぅ、今日は疲れたわ」と言いながら研究室を後にした。
——しかし、九条迅だけは、まだその場を離れずにいた。
机の上には、いくつものメモ書き。
魔力収束砲の理論、魔力の流れの調整法、そして新たに見えてきた魔力の密度と質量の関係。
迅はそれを見つめながら、ふと目を閉じた。
(……“魔力収束砲”は、間違いなく強力な技術だ)
それは訓練場での実験結果が証明している。
普通の炎魔法の数倍以上の威力を持ち、熱量が一点に集中することで金属製の的すら一瞬で融解させた。
(だが……)
迅は目を開ける。
あの威力を、もし誰かがこちらに向けて放ったら?
自分が、リディアが、ロドリゲスが、その攻撃を受ける側になったら?
胸の奥に、得体の知れない感覚が広がる。
——怖い、とは違う。
——ただ、今まで意識していなかった現実を突きつけられたような、そんな感覚。
これは、“戦争”なのだ。
研究に夢中になり、戦術や技術の開発に没頭していたが、それを使うのは戦場であり、敵は本気でこちらを殺しにくる。
(仮に、同じ攻撃が自分たちに向けられたら?)
迅は机の上のペンを指で回しながら、考える。
(回避手段がなければ、確実に死ぬ)
王宮の魔法士たちが研究した技術が、敵に奪われ、逆に利用されたら?
戦場では「やったもん勝ち」だ。こちらが新技術を開発しても、いずれ敵もそれを模倣し、対抗策を打ち出してくるだろう。
ならば——
(俺たちは、“それを上回る手段”を用意しなきゃならねぇ)
迅はゆっくりと立ち上がる。
ここで一つ、新たな課題が生まれた。
それは——
「高速戦闘への適応」
相手が魔力収束砲のような高速かつ高威力の攻撃を放った場合、それを回避する手段が必要だ。
いくら魔力を制御して防御魔法を強化しようと、瞬間的に発射される“当たれば即死”のような攻撃には意味がない。
ならば、攻撃が当たる前に”避ける”しかない。
そして、そのために必要なのは——人間の限界を超えた反応速度。
(魔法で攻撃を強化するのが可能なら、魔法で”反応速度”を上げることも可能なんじゃねぇか?)
迅の頭の中で、あるビジョンが浮かぶ。
(もし、魔力で神経伝達速度を一時的に向上させれば……五感の処理速度が上がり、時間の流れが遅く感じるはずだ。そしたら、相手の攻撃に対して、ギリギリの回避も可能になる……!)
思考の回転が加速する。
問題は、人体の神経を直接操作するという危険な領域に踏み込むことだ。
反応速度を上げるだけなら簡単かもしれないが、それを”戦闘中”に制御するとなると話は別だ。
(副作用の可能性も考えなきゃならねぇな……)
脳のオーバーロード、感覚過多、神経の過剰活性による筋肉制御の乱れ。
無茶な調整をすれば、自分の体が暴走しかねない。
(でも……やる価値はある)
迅はペンを手に取り、新たな研究メモを開く。
人間の反射の限界に迫る魔法。
それが完成すれば、戦場での生存率を飛躍的に向上させることができる。
(よし……まずは基礎研究からだ)
そのまま机に向かい、迅は夜通しメモを書き続けた。
◇◇◇
翌朝——
「……眠そうね?」
研究室に入ってきたリディアが、明らかに寝不足の迅を見て、呆れたようにため息をついた。
「昨日、ずっと研究してたの?」
「ま、そんなとこだな……」
迅は目をこすりながら答える。
「もう、無茶しないでよね。倒れられたら困るわ」
「へいへい」
適当に返しつつ、迅はリディアに悟られないように机の端にある新しいメモをさりげなく裏返す。
——これは、まだ言うつもりはない。
「……まぁ、せっかくだし、今日は少し休むわ」
そう言いながら、大きく伸びをする。
リディアはじっと迅を見つめると、ふっと微笑んだ。
「なら、今日は私が代わりに研究を進めておいてあげる」
「あー……悪い。じゃ、頼むわ」
迅は苦笑しながらも、その言葉に少しだけ安心する。
(……さて、“神経加速”の研究は、しばらく夜中にこっそり進めるか)
こうして、迅の新たな研究は、密かに幕を開けた——。
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