どうやら私はバッドエンドに辿りつくようです。

夏目

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第二章 王子殿下の悪徳

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 浅い吐息を吐く。欲望の熱を感じた。ぎとぎととした油に似ている。けれど、なぜか不快には感じなかった。

「カルディア姫、結婚は私のものになるということです。私のものは誰にもあげない。あげたくない」

 ギスランも私と同じように浅い呼吸をした。空気が少ないと言い訳のように頭のなかで呟く。

「死人が持つには傲岸な独占欲だ。言っておきますが、ここまで吐露してしまったので、結婚するとなれば絶対にします。カルディア姫はお嫌でしょうが、私は貴女様をぐちゃぐちゃにしても、自分の証を残すつもりです」

 これはギスランの警告だ。これ以上は自己責任。この先はもう後戻りできない。

「お可哀想に。新婚生活は最悪だ。死にかけた夫と手足の捥がれた芋虫のような妻。世話する者達も悲惨に違いありません」

 突き放そうとしている?
 憎悪を抱かせようとしている?
 嫌悪を向けさせようとしている?
 どれもそれらしい理由だ。ギスランは、散々忠告はしたのだと既成事実を作りたいのだろう。それに何度も想起させて、私の感情を試している。揺らぐ感情の境界を見極めて、覚悟を知ろうとしている。

「貴族連中には嘲笑われるでしょうね。惨めな夫婦だと憐れまれるかもしれません。だが、私は満たされる。愛や恋は目に見えない。永遠の愛情なんて信じられません。あっては欲しいと希求するけれど、本当にあるとは信じられない。けれど、この方法ならば、カルディア姫は死ぬまで私へ忘れられない」

 一心不乱にギスランは私を見つめていた。私以外、世界にいないように。

「それが憎悪であろうと、強い気持ちならば私は満足できる。私に縛り付けることができるならばそれでいいです」

 それでもいいのかと、ギスランは皮肉げに問いかけた。この男はと笑いたくなる。こうやって言い募っているくせに私を手放す気はもうなくなっている。ギスランの手はいつの間にか私の腕を掴んでいた。角張った男らしい指。掴まれている反対側の指で手を繋いだ。
 死ぬ人間の指だ。私達は二人ともいつか死ぬ。

「お前の答えは決まっているのでしょう?」
「そうですね。ですが、カルディア姫は違うかもしれません。確かめることは必要です。特に結婚という一生で一番大切なものは」
「痛いのは嫌だけれど、ギスランがそうしたいなら、してみればいいじゃない。結婚式を終えてからがいいわ。ドレスを着れないのは流石に切ないもの。それに、私はお前が少しでも長く生きられる方法を模索し続けるわ! 頭さえあれば、誰かが手足となって万里を越えて見つけ出してくれるはず」

 父王に囲われた母は結婚式を挙げられなかった。
 姉様達は嫁ぐ時にやっていたけれど、式典には参加していないし、正直どんなものか知らない。着飾って、祝福されるものだとは聞いている。でも、私が祝福されることはありえない。誕生日会だって血塗れになった自分がきちんと幸福を噛みしめる想像もできなかった。

「言っておくけれど、自分が死ぬときに死んで欲しいと言わないから、仕方がなくよ。私を傷付ける命令は下せるのに、死んでくれと一言頼む度胸もないのね」
「……言えるわけがない。カルディア姫は生きたいと思う人だ。死にたくないと願う人だ。せいぜい理由をつけて、貴女様の人生に亡霊として食い込むことしかできません」
「……それでもいいわよ。それで結婚してくれるの? もう一度拒否したら、流石に怒るわよ」

 ギスランははにかむように笑った。

「怒った顔も、笑った顔も、カルディア姫の表情すべてが好きです。なので、怒ってくださっても構いません」
「お前ね! 真面目に返事しなさいよ」
「はい、カルディア姫」
「はいではなくて」
「愛しています。私と結婚してくださる?」

 当たり前でしょうと口で言う代わりに、ギスランの腕に寄り掛かる。最初に告白したのは私だ。少しだけずるをしたって構わないはずだ。
 ギスランは頬を膨らませて、顔を覗き込んできた。

「本当はね、カルディア姫」

 いけないことを打ち明けるように声を潜める。露わになった首の喉仏がこくりと動いた。鎖骨の間に汗が浮かんでいた。ギスランも緊張していたのだと今頃気が付く。
 この男の人生に食い込む。打ち込んだ杭を抜いても傷が残る。人生を重ねるというのはそういうものだ。結婚とはそういうものだ。ギスランも、初めての結婚なんだ。

「何度も自殺してしまおうと考えました。惨めに死ぬのは恥ずべきことだ。実際に首を吊ろうとしたことがあります。けれど、この日のために生き延びた。カルディア姫と幸せになりたかったんです」

 叶ってよかったと言いながら、ギスランは唇を私の唇にくっつけた。
 ふわふわとした感触だった。唇の皮はかさかさだったはずなのに、柔らかなショートケーキのような口触りだった。
 けれどそれと同じぐらい、悲しくて、泣きたくなる。
 地獄はない。私達は死んだらそれっきりだ。当たり前のことなのに、違うと大声で否定して欲しい。
 永遠が欲しい。ギスランの言葉が頭の中をぐるぐる回る。死ぬまでギスランの仕打ちを思い出して生きることは永遠になのだろうか。こいつが望む永遠は私を永遠に独り占めすることだと思う。私を殺して、次の可能性を葬ってしまいたいはずだ。
 ギスランは私を殺そうとしない。これを愛の証明だと思うのは捻くれている。けれど、愛の形を私は知らない。
 一緒に死んで欲しい。そう言って欲しかった自分がいる。
 殺して欲しいと言う勇気もないのに、道連れにして欲しいと身勝手に思ってしまう。
 ああ、嫌だ。
 触れているところが、気持ちよくてたまらない。





 結婚をすると決めたまではよかったが、その先が揉めた。
 ギスランは再び眠るのを嫌がり、断固として拒否したのだ。

「つまり私をもう一度寝かせると? 意味が分かりません。結婚式の準備の途中で死んでも構わないので、起きています」
「それが嫌だと言っているでしょう!?」
「そういって寝てしまってはカルディア姫に逃げられるかもしれませんし。油断してはならない……」
「逃げないと言っているの、聞こえないの? 私の言葉まったく聞いていないでしょう」
「結婚前は浮気心が疼くと相場が決まっていますよね?」

 こ、こいつ! 信じられない。結婚を決めた人間に対して、浮気を疑っているのか?
 それはこっちの台詞だと言ってやりたい。気持ちを疑ってはいないが、ギスランは世間で浮名が通り過ぎている。不安になるのはこっちではないのか?

「お前こそ、女関係は清算してもらうのだからね! 言っておくけれど、文通だって許容しないわよ」
「お、なんです? お姫さんってば案外嫉妬しやすいタイプですか?」
「蘭王、お前、口を出さないで! というか、まだいたの!?」
「でもでもぉ、この間のこともありますし? それに、花嫁衣裳などをご入用なのでしょう? ではうちを是非ともご利用を! 金さえ積まれればなんでも手に入れてみせますよ。虹色の糸を出す蚕から、ドレスを作りましょうよ。式の余興に珍しい動物の決闘はいかがです? 知り合いに、猛獣使いがいましてね。頭が二つある巨大な雄の鳥が手に入ったと知らせてくれました。獅子と戦わせてみたくないですか?」
「……お前、ろくに仕事ができないくせに厚かましいな。その減らず口、舌を切り取ってやりたいぐらいなのに」
「うう、耳が痛い! そりゃあ、ギスラン様をお守りできなかったのはこちらの失態ではありますけどぉ……。ほら、こうやってご無事なんですから、水に流しません? お金もお返しします」

 眉毛を下げて、殊勝な態度で蘭王は言った。
 どうやら、二人はオペラハウスから私を連れ出す際、無事に河に辿り着くまで護衛するという契約を結んでいたようだ。
 私達は河を越えられなかったので、蘭王としては信用に傷がついた結果になったらしい。
 ちなみに傷付いたギスランを応急手当したのはラー。河に放り込まれているところを引き上げて、ロイスタ―家に蘭王を通して連絡を取ったようだ。
 蘭王は容体を見に何度も足繫く通っていた。契約したのにきちんと果たされなかったのだ、死んでしまったら蘭王のせいだと賠償金を払わされるからだろう。
 今日もそうやって足を運んで、ギスランが起き上がったを知ることに。
 ギスランが起きていることを確認したこいつの顔を忘れられない。助かった! と快哉を叫んでいたからだ。正直者過ぎて、呆れてしまった。
 オペラハウスで華麗に助けてくれたのに恰好悪い。

「金を返すのは当然として、なぜカルディア姫のお声に聞き入っている? お前に聞かせるために、姫は囀っていない。失せろ」

 ギスランはギスランで、蘭王に対してかなりきつい。それだけ、蘭王の仕事がいい加減だったのだろう。きちんと仕事をして欲しい。ギスランは死ぬところだったんだ。

「いやあ、一国のお姫様のお声を拝聴できる機会に恵まれるなんて、俺はすごく幸福なんでしょうね! それはそうと、ヴィクター・フォン・ロドリゲスがここに待機しているって本当ですか? 俺、会ってみたいです! 紹介してくださいませんか?」
「もしかして、ここに残っているのはそういうこと!? 殊勝な顔をしていると思ったら、紹介してもらおうとしていたの?!」
「ええ、はい! 正直、今回のことで赤字なので、黒字に転じる方策を考えていたんですよ。ヴィクターは金払いがよくて、気前もよくて、しかも大量購入してくれる、最高の客だと商人連中のなかでも有名なんですよ! しかも、お抱え商人がいない! 狙い目です!」
「……これ以上無駄口を叩くようならお前の体を三等分して、妻達に送ってやる」
「ええ、ええ。俺は一向に構いませんよ。ヴィクターを紹介して下さるのでしたら! 妻達もきちんと仕事をした夫を労わってくれるに決まっています」

 ん? 妻達って、もしかして、妻が複数人いるのか?
 いや、ライドルは一夫一妻制だ。娘や息子のことだろうか?
 変な顔をして首を傾げていたのを目敏く見つけて、蘭王が爽やかにほほ笑んだ。
 機敏に顔色を察するのは有能な人間っぽいんだけれど。

「俺には三人の妻がいましてね。養うのが大変なんですよ」
「……は? いや、どうやって妻を三人も娶ったのよ」
「方法はいろいろありますよ。合法なものから、違法なものまで。俺の場合は他国で結婚したので。重婚が合法的に認められている国って結構あるんですよ? カルディア姫も興味あったりします?」
「あっても、私以外と結婚なさったりしませんよね?」

 ギスランから威圧を感じる。こくこくと頷くと天使の顔で温かい笑顔を見せた。少しでも回答を渋っていたら、大変なことになっていたに違いない。

「ええー。もったいない。お姫さんなら、男侍らせ放題では? ギスラン様やリスト様、清族のトーマにヴィクター。それに噂の貧民殿とかラーとか物凄い面子で享楽に耽れるもご」
「お、お前、死にたいの!?」

 慌てて蘭王の口を塞ぐ。ギスランの紫の瞳が人を殺す目をしていた。この男、ギスランの気分を逆撫でるのが得手だな!

「きゃあ、お姫さんったら大胆ですね。俺も手籠めにされちゃったりして」
「お、お前ね! 命知らずなのは知っているけれど、こっちを巻き込まないでちょうだい!」
「……とりあえず、カルディア姫はその男の汚い顔から手を離して下さる? 私を怒らせたいのならば別ですが」

 もう怒っているじゃないかと言いたい気持ちをおさえて、蘭王から離れる。
 私だって、口を塞ぎたくない。塞ぎたくないのだが、蘭王の口は禍の源過ぎて油断できないのだ。
 ギスランがじっと蘭王を見つめた。まるで狙いを定める獣のようだった。
 蘭王の顔から笑みが消える。その代わりに挑発的に腕を組んだ。

「その体調で俺に術を使おうとするのは流石に愚策なのでは? そういえば清族の術はどうにも頭でっかちになりがちだそうですね。理論から入り、実践する。感情が先走ると、焦って演算に支障をきたすのだとか。それはそうと、どれほど体調が戻っているか知りませんが、無茶はいけませんよ。清族は不死身ではなく、魔力にも限りがあるはずだ。ギスラン様の賢い頭なら、分かると思いますが」
「べちゃべちゃとよく動く舌だ。切り取ってもなお、喋り倒しそうだな」
「もちろんですとも。商人は口が上手くなければ。寡黙な商人は信用なりませんよ。饒舌なものこそが真実を語ります。そう考えると俺より正直者はいませんね! ……それに、俺はお姫さんの意見に賛成しますよ。どう見繕っても、その体、長く持ちません。俺は商人としての才気はないと妻達にどやされるが、目利きだけは得意でね。特に人の目利きに関しちゃあ、俺を越えるものはそういないと自負しています。貴方からは死臭がする。片足、死という沼にははまっちまってる」

 余計なお世話だと言わんばかりに、ギスランが目を逸らした。
 なにか術を使おうとしていたのか? 息がつまるような閉塞感が、ギスランが目を逸らした瞬間なくなった。

「結婚式は無理そうだ。ヴィクターを呼び込んだ方が俺はいいと思いますがね、お姫さん。ギスラン様、すでに魔力を消費しているようだ。妖精でしたっけ? それに何をさせているのかは分かりませんが、あんまり無理しちゃあ体に響きますよ」
「ギスラン、お前何か無理をしているの?」
「……まさか。私は魔力が強いので、妖精に食わせているだけです。清族ではない男の診察など気になさらない方がいい」
「念のため、ヴィクターに見せた方がいいわね」

 巧妙に隠すのが得意な男の言葉を信用するわけにはいかない。

「賢明な判断です! ついでに俺を紹介してくれません? なあに、そのあとはご面倒をおかけしませんから」
「蘭王、お前は本当に出ていきなさいよ……」
「寂しいこと言わないでくださいよ」

 ぐちぐちと文句を言う蘭王を部屋から出して、改めてギスランに向き直る。
 ギスランはそっぽを向いたままだ。まだ拗ねているらしい。

「最後にはお前が決めることだと分かっているけれど、私はお前に死んで欲しくない」
「理解はできます。ですが、もう二度と起きないのではないかと嫌な予感がよぎるのです。死にかけた状態から起き上がるのは初めての経験でしたが、ここが死後の世界かと勘違いしたのは本当です。それぐらい、現実感がなかった」
「……怖いの?」
「そう、ですね。もう一度あの状態に戻るのは怖い。原始的な恐怖を感じます。死が友達のように笑いかけ、質問を投げかけてきたような気分でした。死ぬのは怖いか、だがお前は死ぬんだ。私に抱かれて、息を引き取るのだと」

 死の抱擁。無慈悲な概念にギスランでさえ恐れをなしている。
 もう一度、眠れというのは、死んで来いというものだ。その重さを私は受け止めなくてはならない。私がギスランに強要する。重たい責任がある。

「死ぬことは前から決まっていたことですので、そう恐ろしくはないです。ただ……暑い」
「暑い?」
「ええ、カルディア姫は暑くありませんか……?」

 突然なにを言い出すのだろうとギスランの顔を覗き込んで驚く。顔が染められたように赤かった。額に手を当てる。指先がひりつくほどの高熱だ。

「お、お前! きついなら、そう言いなさいよ! ヴィクターを呼んでくるわ」

 隣の部屋で待機しているはずだ。蘭王が変なちょっかいをかけていないかぎりすぐに駆け付けてくれるだろう。

「姫、私を置いていかないで」

 飛び出しそうになった体を無理矢理とどめて、ギスランの側に戻る。
 ギスランが伸ばした手を掴んで、寝台の側で膝立ちになる。

「置いて行ったりしない。私はギスランの側にいるわ」
「そう。ギスランがここで死んでも、ずっと手を握っていて下さいね……?」

 重そうに瞼が閉じていく。顔にかかる息が熱かった。ギスランが眠ったのを確認して、近くにあった呼び鈴を鳴らす。
 飛んできた使用人にヴィクターを連れてきてもらう。ヴィクターは蘭王を連れていた。というか、まとわりつかれていたというのが正解か。馴れ馴れしい蘭王を邪険にしている。
 ギスランが発熱していると告げると、ヴィクターは脈を取り、心音を確かめた。

「体が疲れ切っていらっしゃるのだと思います。無理をされたのだわ。少し休ませて差し上げて下さい」
「お姫さん、妖精についても聞いたほうがいいんじゃありません?」
「妖精? あら、そういえば妖精達も戻ってきておりますわね。さっきまでは影も形もなかったのに」

 それについては謎のままだな。妖精はどこに行っていたのだろう。
 見えない私にはとんと検討がつかないが、なにかあるのだろうか。

「蘭王が、ギスランが妖精になにかをさせているのではないかと疑っているのよ」
「そりゃあ、あからさまに体力を消耗していましたから。膨大な魔力を食わせたあとの術師はそういう風になりますからね」
「ああ、それは問題ありませんわ。ただ、ギスラン様がご自分の魔力を食わせていただけです。あの方は魔力量が並外れていらっしゃるの。常時食わせていないと、体にすぐガタがきてしまうぐらい。普段は隠していらっしゃるけれど、体調が悪いのと重なって顔に出てきてしまったのでしょうね」
「なんですか、それ。当たり前のように言ってるけど控えめに言って生き地獄なのでは? 妖精に魔力を食われるって、かなり痛いって聞きますけど」
「個人差がありますから、一概には言えませんわよ」

 それよりもと私を見て、ヴィクターが笑いかける。

「カルディア姫もお休みになった方がいいわ。ギスラン様の看病はこちらでなんとか致します」
「でも、私はギスランの側にいなくていけないもの」
「では、せめてこちらのソファーでお休みください。横になられた方がいいわ。商人の方も戻られた方がよろしいと思いますわよ。時間の無駄ですもの。わたくしはたとえ天帝様を信仰している同輩が相手でも贔屓は作らないようにしていますの」
「……そのようですね。ですが、鼠のことは鼠が知っていることをお忘れなく。海から渡来してくるもので、集められないものは我がランファにありませんので。では、俺はこの辺で。ご用の際はご一報ください。飛んで駆け付けますよ」

 騒がしい男が悠々と帰っていく。もうしばらくは相手にしたくないので、おとなしく帰って欲しい。けれど、商人という人脈は今後必要になりそうなんだよな。
 手広くやっているようだし、一代で王都の名だたる商人の一人として数えられるぐらい優秀な人物ということを忘れてはいけない。時間が出来た時に呼び出して、協力を仰ぐか。

「はあ、押しが強すぎる男というのも考えものですわね。……後で毛布を持ってきますわ。ほら、横になって下さいな」

 ヴィクターは世話を焼く乳母のように私をソファーに横たわらせた。隙を見て、ギスランの看病に戻ろうとしていたのに、気が付けば疲れていたのか眠っていた。

 眠った夜中、高熱が出た。まるで、ギスランの熱が移ったようだった。

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