どうやら私はバッドエンドに辿りつくようです。

夏目

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第三章 嫌われた王子様と呪われた乞食

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「それで、持ってきてしまったのかい?」

 レオン兄様は呆れたように嘆息した。
 羞恥心で顔が熱い。よく考えず、持ってきてしまったがまずかっただろうか。

「も、申し訳ありません。レオン兄様にもお見せしたくて」
「……ああ、怒っているわけじゃないんだ。誤解しないでくれ。ただ、カルディア、ドレスに埃がついているよ」

 指摘された通り、ドレスに埃がついてしまっていた。煤汚れたような灰色のシミまである。恥ずかしくなって、体を洗って来ますとレオン兄様の部屋から退出する。
 近くで作業をしていた使用人を呼び止めて、風呂の準備をしてもらう。
 軽く湯を浴びて、部屋に戻るとフィリップ兄様が絵を床に叩きつけようとしていた。

「フィリップ兄様、何をしていらっしゃるんですか!?」

 慌てて止めると、舌打ちをされる。
 持ち上げたキャンパスを投げて、ゆっくり目線を逸らされる。

「何も」
「何もって……」

 慌てて絵が無事かどうか確認する。
 少し顔料が床に散らばったが、剥げてしまったという感じではなかった。一安心しながら、イルに託す。
 嫌そうに両手で受け取りながら、唇を一文字に結んでいた。
 フィリップ兄様は、恨みを込めた眼差しで絵に視線を注いでいた。今にも奪って床に叩きつけようとしているようだった。

「フィリップ」

 レオン兄様の声を聞いてじいっと見ていた視線が外れる。

「……分かりました。それはディアが持っていて構わない。ここには必要のないものだ」
「私がいただいてもよろしいのですか?」

 処分したいと目が語っているように見える。

「トデルフィのものを持っていると何かと障りがある。処分するのも、また同じく」

 書いてあることを読み上げるような、滔々とした響きがあった。

「ですが、私が持っていても障りがあるのでは」
「生前、仲良くしていただろう。譲ってもらったと言えばいい。サガルもそうやって譲られたはずだが?」

 生前と言われると違和感がある。
 そうか、フィリップ兄様も知らないのか。ザルゴ公爵が生きていることを。

「レオン兄上もそれでよろしいですよね?」
「私は構わない。その絵に執着もないしね」

 レオン兄様は、絵を一瞥もしなかった。
 本当にどうでもいいのだろう。

「分かりました。それでは、私がいただきます」

 フィリップ兄様はさっきとうって変わって安心したような顔をした。
 心が変わったように穏やかな顔をするのか理解が追いつかない。まるで、フィリップ兄様自体は壊したくなかったとでもいうようだ。
 だが、おかしい。壊したくないならば、壊そうとしないはずだ。やっていることと浮かべている表情が矛盾している。

「……カルディア、こちらにおいで。遅い昼食を取ろう」
「は、はい」
「フィリップも、どうせ食事を取っていないんだろう?」
「……腹が減ってはいないのですが」
「そう言わず」

 しぶしぶと言った様子で席についたフィリップ兄様の前に、料理が運ばれてくる。私も席についた。
 食欲は相変わらずないが、二人を待たせるわけにはいかない。
 ちらりと見えたイルが、絵をリュウに押し付けていた。


「それで変わりはありませんでしたか、レオン兄上」

 赤ワインを飲みながら、フィリップ兄様が問いかける。
 昼間から飲んでいていいのだろうかと思いつつ、羊の肝臓と酸味の強いクリームを合わせたさくさく生地のミルフィーユを切り分ける。
 これ、切り分けるのが難しい。綺麗な断面にならない。

「特にはないよ。カルディアが、あちこち探索をしていたぐらいで」
「申し訳ありません。初めて来たものですから、気になってしまって」
「初めて来た? 一度も、来たことがないのか」
「外観は何度か見たことがあったのですが、中に入ったことは一度も。……食べられますか?」

 こくりと頷くフィリップ兄様に切り分けたミルフィーユを差し出す。
 咀嚼を繰り返し、喉の奥に流し込んでフィリップ兄様はもう一度と乞うように口を開けた。

「フィリップ、行儀が悪いぞ」
「いいじゃありませんか、兄妹で集まっているんですよ」
「カルディア、あまり甘やかさないように。際限がなくなるから」

 と言われても、口を開けられると入れてしまう。そもそも、食べられないからゆっくりと切り分けていたのだ。助かったという気持ちの方が強い。

「それで、見回ってどうだった?」
「おかしな造りだな、と。そもそも、どうしてこのようなガラス張りの建物になったのでしょうか」
「陛下のご趣味だと聞いたけれど、どうなのだろうね。当時の流行だったのかもしれないし」

 苦笑しながら、レオン兄様がオレンジジュースに口をつける。
 搾りたての果肉が残っているもののようで、見ているだけで甘酸っぱいオレンジの味わいが口に広がる。

「ですが、熱が集まりやすくないですか、レオン兄上。わざわざ温度管理のために清族を常駐させるなんて不便すぎる」
「道楽のような使い方が出来ることを示すための場所かも知れない。それに、ここにいる清族も内心安堵しているかもしれないよ。温度管理だけしていれば、他に何をしていてもいいのだから。戦う必要もない」

 ああそうだ、とレオン兄様は何気なしに口を開く。

「清族といえば、トーマをどうやって従者の一人にしたんだい? あの子は気難しくて、ダン以外にはあまり懐かないだろう?」
「あの男が勝手に従者になったのです。欲しい本があったのだとか。……まあ、私もあいつのことが嫌いではありませんでしたから、いいかと」
「そうなのか? ならば、私が本を恵んでやると言ったら靡くかな?」

 フィリップ兄様に差し出したフォークが震えた。

「トーマは、口が悪いです。それに、レオン兄様の言う通り気難しい」
「だが、本の魔力には抗えないのだろう? 私は、トーマの清族としての有能さを買っている。皆、そうだ」
「で、ですが」
「カルディアも、不承不承だったのだろう? そういった関係はよくない。あとで亀裂を生む。別れるならば、早いうちがいいだろう」

 どうして突然そんなことを言い始めたのだろう。
 喉から手が出るほど、欲している?
 トーマは有能なのか?
 確かに、あの歳にしては誰も彼もあいつを知っているように思う。
 どう返事を返していいか分からない。けれど、心は決まっていた。あいつは私のものだ、レオン兄様にはあげられない。

「……トーマは、テウの料理が好きなんです」
「テウ?」
「テウ・バロック。貴族の子息の一人。料理が趣味で、とっても上手で。あいつの料理に心を奪われているんですよ」
「そうなのか。ならば、テウを訪ねれば会えるのか」

 首を振る。トーマは今、テウのところにもいない。まだ、絶対安静で会いにもいけない。
 テウのことを出したのは失敗だっただろうか。けれど、あいつが気に入っているのは本当のことだ。私を抜きにして、二人でたまに食事していた。

「レオン兄様、テウは私の従者です。そして、トーマも」
「……不承不承ではなかったのか?」
「最初は。勝手に従者を名乗られたので。でも、今は違います。私のものです。あいつが嫌だと言わない限り」

 フィリップ兄様の瞳は恐ろしいほど冷たかった。
 びっくりして唾を飲み込む。

「そうか。ならば、仕方がないな。心変わりに期待しよう」
「……も、申し訳ありません。生意気な口を……」
「いや、構わないよ。むしろ、感慨深い。あのカルディアが私に意見する日が来るだなんて」

 レオン兄様の顔を見れない。
 生意気な女だと思われているに決まっている。兄様の望む通りに振る舞うべきだったのに。
 でも、トーマをあげたくないと思ってしまった。あいつは私の従者なのだから、他の誰にもあげたくないのだと。

「……大丈夫だよ、カルディア。お前の従者――テウもトーマも無理やり奪ったりしない。確かにトーマの力を借りたいと思っていたのは事実だが、カルディアに言えば力を貸してくれるだろう?」
「は、はい」

 慌てて頷いた。あいつらが私の望み通りに動くかは別として、私自身はレオン兄様が望まれる限り、お役に立ちたい。

「ならば、よかった。今後も私の役に立って欲しい」
「おれはレオン兄上のお役に立っていますか?」
「フィリップは……。うーん、お前は基本的に奇天烈な事ばかりするからね。私に何も言わずに行うことも多いし、正直、迷惑していることの方が多い」
「お役に立てているならば幸いです」
「人の話を聞きなさい」

 あははとフィリップ兄様が朗らかに笑う。
 それにつられて笑うと、レオン兄様の顔が見えた。少し困ったように眉を下げながら苦笑している。

「フィリップはいつもそうだ。人の話を聞いているようで全く聞いていない」
「おれの本質の話をして下さるなんて、感激ですね。ただ、間違っていますよ。兄上の言葉は一言一句聞き漏らしたことがありません」

 ぽんと腕を叩かれる。残りのミルフィーユも欲しいということなのだろう。切り分けて、口の中に運ぶ。
 皿の上のものがなくなると、フィリップ兄様の分を差し出される。それをせっせと切り分ける。

「訂正しよう。お前は、私の言葉を受け入れる気がない、だ」
「受け入れるだなんて。それはレオン兄上の方では? おれは、譲歩しているつもりですよ」
「……譲歩という言葉がふわふわとした綿菓子より軽いのはどうなのだろう」
「綿菓子がお好きなのですか? 作らせましょうか」

 二人の会話が見事に噛み合っていない。
 フィリップ兄様のせいだろう。煙に巻くように、レオン兄様の言葉をいなしている。

「はあ……。まあ、もう仕方がないだろうね。お前に何を言っても。カルディア、フィリップに渡してばかりではいけないよ。お前も食べなさい」
「ディアはおれ専用の使用人になりました」
「朝食もきちんと取っていなかっただろう。この子のことは放っておいてもいい。自分一人で食べられる」
「ディア、お前はぼくに給仕していればいい」

 反する二人の言葉にどうしたらいいか分からなくなる。フィリップ兄様に従いたいが、レオン兄様の言葉も無碍に出来ない。こういう時、マイク兄様がいてくださったらよかったのに。

「……カルディア」

 叱りつけるような声だった。反射的に、頷いていた。

「は、はい」

 フィリップ兄様のために切り分けたミルフィーユを口の中にいれる。
 噛むと胃酸が迫り上がってきそうだった。噛む真似をして、喉の奥へと無理やりいれる。水で流し込もうとしてグラスを掴む。
 手が震えてこぼしてしまった。

「カルディア姫」

 イルが慌てて私に近付いて来る。
 大丈夫だと言おうとして、吐き気がこみ上げてきた。
 駄目だ、レオン兄様の前なのに。駄目だ。駄目だ。みっともない。恥知らずなことは出来ない。
 口元に手をあてる。胸が熱い。どうしよう。

「姫はご気分が優れないご様子です。退席させても構いませんでしょうか」

 リュウの声だ。

「……ああ。カルディア、ゆっくり休むといい」

 イルが、私を抱え上げた。
 こんなことでは駄目だ。
 申し訳ありません。小さく呟く。こんな小さな声では聞こえない。もっと大声で言わなくては。

「失礼します」

 私の謝罪の声がイルの声にかき消される。



「最悪の気分だわ」

 客間のソファーに横になりながら、顔を手で隠す。
 泣きたいぐらい気分が悪い。

「ああいうときは、嫌でも俺を呼んでくださいよ。貴女、何でも食べられるようになったわけじゃないんですよ」

 別に不敬だと言われて折檻されるのを怖がったりはしませんからと言われる。そう言われて、そうなの、よかったこれからお願いねと言える人間がどれほどいると思っているんだ。

「まだ、気分悪いですか? 吐いた方が気が楽になりますよ」
「いい……。それより水が飲みたい」

 一度口をつけたグラスをイルが差し出してくる。水を流し込んだ。毒見がないと飲み食い出来ない。なんて、馬鹿げた体になってしまったんだろう。

「前はこんなことにはならなかったもの、レオン兄様は驚かれたはずだわ……」
「はいはい、思い悩むのはここらへんで。毛布を持ってきますから、素早く寝てください」

 イルが廊下に出て侍女に声をかけている。
 部屋に入って一言も口を開かなかったリュウが、そろそろと寄ってきて私の顔を覗き込んできた。

「お姫様さあ、どうして食べたの」
「……どうしたの?」

 何を訊いているのか分からず首を傾げる。

「食べたら吐くって分かってたでしょ? でも何で……」
「リュウ?」
「…………もしかしてさ、あの場で起こっていたことってさあ。駆け引きだったのお? そっか、だから、食べさせたかったのか。それで、食べさせないようにしてた」

 ぶつぶつと何を言っているんだろう。小声で、早口気味に言うものだから、聞き取れない。

「リュウ、お前、顔が強張っているわよ」
「サガル様はお姫様以外の人間を家族して認めていないんだよねぇ。その意味が、少し分かった気がする」
「サガル兄様が、家族として認めていない?」

 どうしてだろう。サガル兄様が私と一緒に隔離されて生きてきたからだろうか。
 でも、血は繋がっている。サガルは正しく、レオン兄様やフィリップ兄様の弟だ。変な噂があるが、すくなくとも母親は同じだ。

「ほら、毛布持ってきましたよ! ……リュウ、顔近い」

 毛布を持ってきたイルがリュウを押しのける。リュウに詳しく聞く暇もなかった。

「カルディア姫、ぐっすり休んで下さいね」
「ちょ、ちょっと。……分かった、分かったから!」

 顔にまでかけてこようとするイルを止めて目を閉じる。
 目を閉じると、暗闇の中にパチパチと白い光のようなものが見える。目が重くなって、眉の方に筋肉が伸ばされ、ちりちりと痺れるような痛みが走った。体が重くなって、意識がふわりと浮く。
 眠気はすぐにやってきた。

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