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6 首都に来ました
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「うわー、凄い人だね、ポポ」
今まで稼いだお金をかき集めて、途中途中も薬草を摘んだり薬を売ったりして、二ヶ月かけてなんとか首都までやってきた。
もっと田舎のほうに行こうか悩んだけれど、おばあちゃんには首都に行けと言われていたし、首都のほうが雇用機会に恵まれるかと思ったのだ。
森では本物の狼と遭遇したり、田舎道では野犬と遭遇したりと結構危ない目にあったけれど、どちらも私を襲ってくることなく、なんとか事なきを得た。
首都で人材募集の紙を見ていると、街の人の会話が耳に入る。
「きいたか、ヒューバート様が無事に戻られたらしいぞ」
「第一王子が牢屋に入れられたって話だろ、本当に驚いたよな」
その噂を聞いて、私はホッとする。
ロロは無事に、いるべき場所へ帰ったらしい。
そして私は死ぬことなく、ここで生きている。
「この募集なんかいいかも」
薬師募集の張り紙を取ろうとした時、「お嬢さん」と声を掛けられた。
私のことかと思って振り向くと、フードを被ったひとりのおじいさんがニコニコしながら「もしかして、薬師の仕事をお探しかな?」と尋ねてくる。
田舎者を狙った何かの怪しい勧誘かと少し警戒しながら、一応失礼のない程度に「はい」と答えると、
おじいさんはほっほと笑って言った。
「君がマリーネの弟子のアイルであれば、もっと良い仕事を紹介するぞ」
私はその言葉に目を見開く。
三年間一緒に住んで、私にこの世界のことを全て教えてくれたおばあちゃんの名前が、マリーネだ。
「なぜ、私のことをご存知なんですか?」
「マリーネは君に自分のことを話さなかったようだがね、君のことは自分に何かあったら頼むと、手紙を貰っていたんだよ」
聞けば、おばあちゃんは昔、王城に務めるほどの腕利きの薬師だったとのこと。
おばあちゃんが亡くなった後、私が首都に来ずに田舎街で馴染んでいる様子だったので、あえてそのままにしていたことなんかを教えてくれた。
ポポも警戒していないことだし、と私はおじいさんに促されるまま、馬車に乗る。
「私はマリーネの昔の同僚なんじゃ。ずっと弟子をとらなかったマリーネが、手紙で君を弟子だと書いてきたから、そりゃもうびっくりしたものさ」
「でも、何故私が首都に来たことを知っているんですか?」
「皆が教えてくれるからな」
そう言いながら、おじいさんはフードを取る。ひょこりと現れたのはブチの犬耳だった。
「貴族の方だったんですね、知らずに失礼致しました」
私が恐縮して言えば、よいよい、と笑いながら人の良い笑みを浮かべる。
「ところで、皆が教えてくれるとは……」
「ははは、我々獣人は、同じ系統の動物の言葉がわかるのじゃよ。私たち人狼の国では、狼や犬の言葉じゃな」
「そうなんですね」
つまり、街にいる犬たちが、何かしらの情報の伝達のような機能を果たしているということか。
「ちなみにアイルさんはヒューバート様の加護を受けておるから、我々にしてみれば客人のようなものじゃな」
「えっ?」
いきなり第二王子の名前が出て、心臓が跳ねる。
「アイルさんが、一年間ヒューバート様を保護しておった異世界人じゃろ?」
さあついたぞ、とおじいさんが言ったので、窓の外を見た。
そこには、立派なお城がそびえ立っていた。
今まで稼いだお金をかき集めて、途中途中も薬草を摘んだり薬を売ったりして、二ヶ月かけてなんとか首都までやってきた。
もっと田舎のほうに行こうか悩んだけれど、おばあちゃんには首都に行けと言われていたし、首都のほうが雇用機会に恵まれるかと思ったのだ。
森では本物の狼と遭遇したり、田舎道では野犬と遭遇したりと結構危ない目にあったけれど、どちらも私を襲ってくることなく、なんとか事なきを得た。
首都で人材募集の紙を見ていると、街の人の会話が耳に入る。
「きいたか、ヒューバート様が無事に戻られたらしいぞ」
「第一王子が牢屋に入れられたって話だろ、本当に驚いたよな」
その噂を聞いて、私はホッとする。
ロロは無事に、いるべき場所へ帰ったらしい。
そして私は死ぬことなく、ここで生きている。
「この募集なんかいいかも」
薬師募集の張り紙を取ろうとした時、「お嬢さん」と声を掛けられた。
私のことかと思って振り向くと、フードを被ったひとりのおじいさんがニコニコしながら「もしかして、薬師の仕事をお探しかな?」と尋ねてくる。
田舎者を狙った何かの怪しい勧誘かと少し警戒しながら、一応失礼のない程度に「はい」と答えると、
おじいさんはほっほと笑って言った。
「君がマリーネの弟子のアイルであれば、もっと良い仕事を紹介するぞ」
私はその言葉に目を見開く。
三年間一緒に住んで、私にこの世界のことを全て教えてくれたおばあちゃんの名前が、マリーネだ。
「なぜ、私のことをご存知なんですか?」
「マリーネは君に自分のことを話さなかったようだがね、君のことは自分に何かあったら頼むと、手紙を貰っていたんだよ」
聞けば、おばあちゃんは昔、王城に務めるほどの腕利きの薬師だったとのこと。
おばあちゃんが亡くなった後、私が首都に来ずに田舎街で馴染んでいる様子だったので、あえてそのままにしていたことなんかを教えてくれた。
ポポも警戒していないことだし、と私はおじいさんに促されるまま、馬車に乗る。
「私はマリーネの昔の同僚なんじゃ。ずっと弟子をとらなかったマリーネが、手紙で君を弟子だと書いてきたから、そりゃもうびっくりしたものさ」
「でも、何故私が首都に来たことを知っているんですか?」
「皆が教えてくれるからな」
そう言いながら、おじいさんはフードを取る。ひょこりと現れたのはブチの犬耳だった。
「貴族の方だったんですね、知らずに失礼致しました」
私が恐縮して言えば、よいよい、と笑いながら人の良い笑みを浮かべる。
「ところで、皆が教えてくれるとは……」
「ははは、我々獣人は、同じ系統の動物の言葉がわかるのじゃよ。私たち人狼の国では、狼や犬の言葉じゃな」
「そうなんですね」
つまり、街にいる犬たちが、何かしらの情報の伝達のような機能を果たしているということか。
「ちなみにアイルさんはヒューバート様の加護を受けておるから、我々にしてみれば客人のようなものじゃな」
「えっ?」
いきなり第二王子の名前が出て、心臓が跳ねる。
「アイルさんが、一年間ヒューバート様を保護しておった異世界人じゃろ?」
さあついたぞ、とおじいさんが言ったので、窓の外を見た。
そこには、立派なお城がそびえ立っていた。
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